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天魔の子(仮)  作者: タロさ
122/236

ゴンドリア帝国再び 壊滅2⃣

アンデットオオカミたちのしぐさに、苛立つボーグル。

2頭に視線を向けていると、両足の太腿に、『光の矢』が突き刺さる。


「ぐはぁ!」


足に力が入らなくなり、膝から崩れ落ち、四つん這いの姿勢をとらされるボーグルに

エンデが声をかけた。


「よそ見していたら、ダメでしょ」


先程とは、まったく逆の立場になり、エンデを睨む。


「この・・・・・」


どんなに睨もうが、エンデの態度は変わらない。


「そろそろ、死んでもらうよ」


エンデの言葉に、覚悟を決めたボーグルは叫ぶ。


「この私が敗れても、ヌードルフ様が、きっと貴様を始末してくれるわ。

 先に地獄で待っているぞ!」


この言葉を最後に、ボーグルの命が尽きようとした時、

洞窟の中から2人の男が姿を見せる。


「ボーグル、何を遊んでいるのですか?」


「ギャレット殿!」


ギャレットは、エンデに視線を向ける。


「殺すなら、さっさと殺しなさい。

 但し、この(かたき)は、貴方たちの命で償っていただきますよ」


ギャレットの視線は、エンデからエブリンたちへと変わる。

その事に気が付いたエンデの表情が変わった。


「どうするつもり?

 それ、本気で言ってる?」


エンデの纏っている空気が変わる。


ギャレットは、怒らせてはいけない者の逆鱗に触れた。

普段、表情に変化の無いギャレットだが、額から一筋の汗が流れる。


━━━この異様な空気・・・・・


周囲の温度が下がる。


それを肌で感じた瞬間、ボーグルの首が落ちる。

一瞬の出来事だった。


エンデの左手の近くに禍々しい黒い渦が起きると、

そこから剣を取り出すと、瞬時にボーグルに接近し、

一太刀のもとに、首を切り落としたのだ。


ボーグルの首は『ゴロゴロ』と転がり、ギャレットとヌードルフの前で止まった。

『クッ!』と顔を歪めるギャレットとは対照的に、ヌードルフは笑みを浮かべる。


「下がれ」


ヌードルフは、ギャレットにそう伝えると、エンデの前に立つ。


「この俺が本気で相手をしてやる。

 悪魔のガキ、とっととかかってこい」


ヌードルフが剣を抜く。

その剣には、綺麗な魔力紋章が刻まれていた。


「ほら、どうした?

 いつでもいいぞ」


エンデを挑発するように、言葉を投げかける。


「じゃぁ、行くよ」


エンデの手にも、ボーグルの首を落とした剣が、握られている。

先程と同じ様に、瞬時に距離を詰め、ヌードルフの首を狙うエンデ。

だが、ヌードルフは、その速さに対応し、軽やかに攻撃を躱した。


そして、エンデに向けて剣を振り下ろす。

エンデも、その剣筋が見えていたので、届かない距離までバックステップを踏んだ。


お互いの間隔が空き、動きが止まる。

その瞬間、エンデの体から血が噴き出した。


『えっ!?』と驚きながら、片膝をつくエンデ。


出血は酷いが、傷は浅い。

しかし、遠くから見ているエブリンたちには、大怪我を負ったように見える。


「エンデェェェェェ!」


思わず声を上げるエブリン。

そのエブリンたちの前に、ギャレットが立つ。


「見ているだけでは、お暇でしょう。

 貴方たちは、私がお相手致します」


剣を抜き、構えるギャレット。


「そういう事なら、ここは俺が相手をするぜ」


ダバンが、皆の前に立つ。


「褐色の肌・・・・・・蛮族、いや、魔人ですか?」


冷静に観察するギャレットに、ダバンが先制攻撃を仕掛けた。


体制を低くし、ギャレットの足元から、顎に向けて蹴りを放つ。

咄嗟に躱すが、無傷とは、いかなかった。


少し擦った顎に血が滲む。

顎を手で拭い、血が流れていることを確認すると、表情が変わる。


「貴様・・・・・・」


今までの細目の穏やかな狐のような表情から一転し、

目が見開き、怒り狂う妖狐のような表情を見せた。


「この私の顔に傷をつけるなど・・・・・・」


ギャレットは、何か言おうとしたが、

最後まで言葉を発する事が出来なかった。


『グラッ』と脳が揺れ、平衡感覚を失い『フラフラ』と千鳥足になり

喋りも足元が覚束ない。


「き・・・さ・・・ま・・・・なに・・・を・・・」


そんなギャレットにダバンが告げる。


「お前は、終わりだよ」


ダバンが言い終えると、

待機していたアンデットオオカミのメルクとシェイクが襲い掛かった。


言葉も上手く発せないギャレットに、2頭は牙をむく。

両腕をもぎ取り、地面に薙ぎ倒すと、

今度は、腹に食いついた。


メルクもシェイクも怒っていた。

主に殺意を向けるなど、決して許せる行為ではない。

だからこそ簡単には殺さず、弄ぶように甚振る。


ギャレットに成す術はない。

生きたまま腹を食い破られ、悲鳴にもならない声を上げるが、

2頭の攻撃は止まない。


『ウグッ』『ゴホッ』と血を吹き出すギャレットに、

止めとばかりにメルクの牙が喉を食い破る。

同時に、シェイクは肋を砕き、心臓に噛みついた。


何もできないまま、ギャレットは動かなくなった。





ダバンたちがギャレットとの戦いを終えても、

エンデとヌードルフの戦闘は続いていた。


初撃で傷を負わされたエンデだったが、時が経ち、その傷は回復した。

だが、その後も、エンデは、防戦を強いられ、

小さな傷を負わされていた。


からくりは、もう見抜いている。

全ては、あの『魔力紋章』。

その力で、ヌードルフの一撃は、その剣の直線上にあるものを切り裂く。

その事が解っていなかった為、バックステップを踏んだエンデは、傷を負わされたのだ。


その事が理解できても、剣を振り回すヌードルフの攻撃を躱すのは至難の業。

エンデは、今尚、致命傷を避け、なんとか躱している状態だった。


「どうした?

 避けてばかりでは、この俺には勝てないぞ」


挑発するように、エンデに言葉を投げかけるヌードルフ。


「・・・・・」


「フ・・・・・

 返事をする余裕もないか!」


エンデの防戦に、余裕を見せたヌードルフ。

その隙を見逃さず、空へと逃げるエンデ。


「馬鹿め、何処に逃げても変わらないぞ!」


ヌードルフは、上空に向けて狙いを定める。


だが、太陽が邪魔をする。


「ク・・・・・」


眩しさのあまり、手で影を作る。

すると、ヌードルフの視界に、光るものが映った。

回避が遅れる。


光るものの正体。

それは、『光の矢』。


エンデは、太陽を背にして、光の矢を放った。

眩しさ故、ヌードルフの回避が遅れ、右肩に矢が突き刺さる。


『グッ』と声を漏らし、矢の勢いに負け、片膝をつく。


「悪魔が、光の矢だと・・・・・」


思いもよらぬ攻撃だった。

エンデを勝手に悪魔だと決めつけていた為に、『光の矢』など考えが及ばない。

その為、回避が遅れたのだ。


エンデの攻撃は続く。

雨が降るように、光の矢が降り注ぐ。

周囲を埋め尽くすほどの光の矢の雨に、逃げ場など無い。


生き残っていた教会騎士たちも、巻き添えを食う形で命を失う。

ヌードルフは、必死に剣を振り、致命傷を避けようとしている。


しかし、時間と共に傷が増えてゆく。

剣に注ぐ魔力も底を尽く。


すると、光の矢は、ヌードルフに降り注いだ。


エンデが攻撃を止めた。

無数の光の矢に貫かれているが、ヌードルフはまだ生きている。


剣を杖のように使い、立ち上がろうとするヌードルフ。


「俺は、まだ負けてねぇ・・・・・」


やっとの思いで立ち上がったヌードルフの耳に、『ギィィィィィ』と

古びた扉が開くような音が聞こえてくる。


音の聞こえて来た後ろを振り返ったヌードルフの目には、

扉が開いてゆく禍々しい門が見えた。


エンデの攻撃は終わっていない。

転生すら許さないエンデは、召喚の門を開いたのだ。


そこから出てくるのは、アンデットオオトカゲ。

『ドスンドスン』と地を鳴らし、ヌードルフに近づくと、頭から丸飲みにした。


ヌードルフは、断末魔の叫び声を残し、この世から消えた。



評価、ブックマーク登録、誠に有難うございます。

ゆっくり、不定期投稿ですが、今後とも、宜しくお願い致します。

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