ゴンドリア帝国再び 村
ゴンドリア帝国に続く道は、3本。
1つ目の道を塞いでいた盗賊(教会騎士)は倒した。
あと2つ。
エンデたちは、王都に向かわず、次の道を目指す。
分岐点まで来ると、2手に分かれる。
「俺たちはこっちに行くぜ」
「うん、頑張って!」
「ああ、任せとけ」
ガリウスは、陽気に手を振ってエンデたちと分かれた。
ガリウスの方には、マリウルとダバン、それと兵士たち。
エンデには、エブリン、シャーロット、それからホルスト。
御者には兵士を1人借りた。
エンデたちと別れた後、
マリウルたちは予定の道を進むが、王都方面から来た為か、盗賊の姿はない。
「一旦、先の町の方まで進んでみるか」
ガリウスの判断に従い、軍は進む。
そして、峠を越えたところの村で、一泊することにした。
村は、このような情勢なのに、食べるものに困っている様子もなく、
村人たちの顔色も良い。
マリウルは、疑問を持つ。
━━━ここには食料があるのか・・・・・
空いた時間を使って村を見て回る。
畑には作物が実り、村人たちも一生懸命働いていた。
だが、働いている者たちがおかしい。
老人と女性しかいない。
子供の姿も無い。
村に入ったとき、マリウルたちの前に現れたのは、身なりの整った
まだ若い部類に入る男。
他にも数人の男性の姿はあった。
その事を踏まえても、男手が無いわけではないと思える。
それなのに、田畑を耕している中に、男たちの姿は無い。
━━━これは、一体どういうことだ・・・・・
疑問が膨らむマリウル。
田畑の力仕事など、どの村でも男性が行っている。
だが、ここは違う。
━━━男たちは、何処に行っているのだ?・・・・・
そんな疑問を抱いていると、
畑を耕していた女性が、目の前を横切る。
思わず、声をかけると、女性には怯えたような動揺が見えた。
「な、なんでしょうか?」
━━━何か隠しているな・・・・・
「この村を見て回っているのだが、どうして、男は働かないのだ?」
「それは・・・・・」
視線を逸らす。
そして、慌てて駆け出した。
「おい!」
マリウルの静止の声も聞かず、家屋の中に入ってしまった。
「・・・・・」
マリウルは、他の農夫たちにも話を聞くために声をかけるが、
その都度、家屋へと逃げ込まれ、二度と姿を現さなかった。
「いったいどうなっているんだ・・・・・」
疑問が解決されぬまま、1人残されたマリウル。
仕方なく、家を訪ねてみたが、返事すらない。
ここは、ゴンドリア帝国領内、強制的に話を聞くことは難しい。
それに、村人たちの反感を買えば、盗賊の捜査も危うくなる。
マリウルは、話を聞くことを諦め、皆の元へと戻った。
仮宿として提供された家屋に戻ると、真っ先に目についたのは
休んでいるガリウスの姿だった。
「お帰り。
兄貴、なにかあったのか?」
兄、マリウルの表情から、何かあったのかと思い声をかけてきたガリウス。
━━━感のいい奴め・・・・・
見透かされているようで、悪態をつきたくなるマリウルだったが、
『グッ』と堪えた。
悪態をつけば、それは、何かあったと認めることになる。
だが、確固たる証拠が無ければ、話すわけにもいかない。
その為、平静を装って言葉を返す。
「いや、何でもない」
「そうか・・・・・」
軽く返事を返したガリウルは、壁にもたれて目を閉じた。
暫くすると、案内をしてくれた男性が、『食事の準備が出来た』と
マリウルたちを呼びに来た。
「何も無い所ですので、ご容赦下さい」
「構わない。
食事を用意してくれただけでも有難い」
言葉を返した後、男性に従い、食事が準備してある家屋へと向かった。
家屋には、皆の食事が2列で並んでいた。
食事を始めるマリウルたちだったが、そこにダバンの姿が無い事に気が付いた。
「エンデの従者殿は、どこに行ったのだ?」
ガリウスに尋ねながらも、辺りを見渡すマリウル。
「わからん。
そのうち来るだろう」
ガルバンは、マリウルに伝えると、食事を続ける。
食事の最中、兵士たちに酒が振舞われた。
この村の女性たちが酌をして回り、兵士たちは良い気分になる。
勿論、ガルバンやマリウルにも酒は振舞われ、一口、二口と飲む。
すると、酒の酔いなのか、段々と眠気が襲う。
「これ・・・・・」
マリウルの視界が歪む。
━━━もしかして・・・・・・
睡眠薬・・・・・
この村こそ、教会騎士たちの隠れ家。
元々あった村を、教会騎士が占領し、村人たちに指示を出していたのだ。
占領した当初、勿論、村人たちの中にも、逆らう者はいた。
だが、全員の目の前で、男連中を惨殺し、逆らう気力を奪い。
反抗の火種も消したのだ。
そんな村とは、露ほどにも思わず、注がれた酒を飲み、
次々と、床に倒れ込んだ。
その者たちを見下ろし、笑みを浮かべる教会騎士の一人【プルゴ】。
「こいつら、アンドリウス王国の者たちだな・・・・・
いろいろと聞きたいことがあるから、まだ殺すなよ」
「はい」
『ゾロゾロ』と姿を見せた教会騎士たちは、手際よくマリウスたちを縛り上げる。
「起きるまで、放っておけ」
翌朝、マリウルたちが目を覚ますと、
両手両足を縛られ、身動きが取れなくなっていることに気づく。
「くっ・・・・」
周りには、既に目を覚ました兵士たちもいたが、皆が同じように拘束されている。
「これは、どういうことだ」
必死に藻掻いていると、そこにプルゴが近づいてきた。
「お気づきのようですね」
プルゴが教会騎士の鎧を着ていた為、マリウルたちも、その正体に気づくが、
成す術が無い。
━━━くそっ!
このままでは・・・・・
プルゴは、『ジタバタ』するマリウルの様子を見ながら告げる。
「いろいろ聞きたいことがあるので、直ぐに殺しはしません。
ですが、素直に話さなければ、どのみち、死ぬことになりますが」
そう告げた後、アンドリウス王国の兵士を、1人だけ立ち上がらせた。
「連れて行け」
プルゴの指示により、運び出されるアンドリウス王国の兵士。
「待て、どこに連れて行く気だ!
話を聞くのなら、私を尋問すれば済むことだろ!」
マリウルは必死に訴えた。
だが、その願いは叶わない。
「確かに、貴方を尋問して、素直に話して頂けるのであれば、何も問題はありません。
ですが、その話した内容が、真実かどうか見極める必要がありますよね。
なので、最初に行うのは、聞き取り調査です。
貴方の部下が、素直に吐いてくれることを、期待しますよ」
プルゴは、そう言い残し、家屋から出て行った。
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