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天魔の子(仮)  作者: タロさ
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忍び寄る影とエンデの秘密

王都から、仲裁委員が来ることを、領主である【ファーガス ゲイルド】から告げられた。


「仲裁ですか・・・・・それは、どういう事ですかな?」


マリオンの表情が、険しくなる。


「儂にも、わからん。

 この度の事は、貴殿の息子が、あ奴に殺されたことが原因だ。

 なのに、手紙によれば、やって来るのは、執行官ではなく、仲裁委員。

 どういう事か、儂の方が聞きたいわ」


ファーガスは、送られてきた手紙を、テーブルの上に投げた。


ファーガスは、あの事件の時、マリオンに力を貸してくれた人物の一人だ。

その為、今回の犯人逮捕を喜んでくれた反面、カーターが犯人だと知り、

頭を悩ませていた。



5日後の陽が傾きかけていた頃、

ゲイルドの街に、仲裁委員である【ビートル ガンマ】が到着した。


ビートルは、ガンマ子爵家の次男で、王都では役所で働いている。

家柄が、子爵という事もあり、役所内では幅を利かせ、

好き勝手気に、振舞っている男だ。


そんな男が、自ら志願して、この街にやって来たのだ。



対面を果たしたファーガスは、ビートルと握手を交わす。


「王都から、ようこそいらっしゃいました。

 話をする前に、一度お休みになられますか?

 それとも、カーター レイトンに、会われますか?」


「まずは、カーター殿に、会わせて頂きましょう」


「では、そのように手配致しましょう」


ファーガスは兵を呼び、ビートルをカーターの所に、案内する様に命じた。


「ご案内いたします」


ビートルは、兵士の案内に従い進む。

カーターの捕らえられている地下牢まで来ると、ビートルは足を止めた。


「この先なのだな」


「はい」


兵士が、牢獄の並ぶ地下通路のカギを開けた。


「後は、一人で行くとしよう。

 貴様はここで間待て、案内ご苦労」


ビートルは、地下通路を一人で進み、ある牢の前に辿り着き、足を止めた。


「叔父上、カーター叔父上!」


牢獄の奥で、体操座りをしていたカーター。

その声に気付き、顔を上げ、地下通路に近づく。


ボロボロの貫頭着に、身を包んでいるが、

間違いなく、カーター レイトンだとわかった。


「叔父上、大丈夫ですか?」


「おお、ビートルか!」


「叔父上、もう少しだけお待ちください。

 必ず、ここから出して差し上げますから」


「出来るのか?」


「ご心配なく」


ビートルは、そう言い残し、来た道を引き返した。

地下通路から戻って来たビートルは、兵に従い、本日泊まる部屋に通された。


部屋に入ると、テーブルの上には、

今回の事件の概要を綴った紙が、置いてあった。


「これが、今回の事件についての報告書ですか・・・・・」


1枚の紙を手に取り、目を通す。

ビートルは、手に持っていた用紙を、テーブルの上に、放り投げると、

『ドカッ』っと腰を下ろした。






「さて・・・・・」


ファーガスは、部屋のベランダに出ると、懐から魔道具を取り出し、

暗闇の外に向かって振る。


光の魔道具。

赤い光の点滅で、お互い意思を伝える魔道具だ。


魔道具の光に誘われ、暗闇の中から、1人の男が姿を見せた。


「ビートル様、こちらに・・・・・・」


「ヴァイス家を詳しく調べろ、

 なんでもいい、弱みを探せ」


「はっ!」


暗闇から現れた男が消える。

同時に、部屋の扉が叩かれた。


入って来たのは、領主の屋敷のメイド。


「ビートル様、お食事の準備が整っております」


「そうか、直ぐに向かおう」


ビートルは、メイドと共に、部屋を出た。





その後、ビートルの指示を受け、暗闇に消えた男【ヘルガ】は、

マリオンのいるヴァイス家を目指していた。


ヘルガは、ビートルよりも先に街に到着し、

下調べを行っていたので、道に迷う事は無い。


ヘルガは、マリオンの屋敷に到着すると、外から、中の様子を窺う。


「旦那も、面倒臭いことを・・・・・・・

 殺してしまえば、問題など簡単に片付くのに・・・・・・」


ヘルガは、この度の事を聞き、舐めてかかっていた。

弱体化した貴族。

それに、子供。


本来なら、ヘルガにとって余裕のある仕事だ。


『もし、見つかっても、相手を殺せばいい。

 その方が、余計な仕事が、減る』とさえ、思っていた。


その程度の認識なので、ヘルガは、欲を出してしまう。

見るだけではなく、話しも聞くために、屋敷の屋根裏に侵入することを決意した。


周囲を警戒しながら、塀を乗り越えた。

簡単に屋敷の庭に侵入を果たす。


━━ザルな警備だ、だが、、俺的には、有難い・・・・・・


ヘルガは、真っ直ぐに、屋敷を目指した。



その時、屋敷内で、マリオン、ルーシア、エヴリンと、お茶を楽しんでいたエンデだったが、

屋敷に侵入した存在に気が付く。


「この家に、誰か来た・・・・・」


「えっ!?

 誰も来ていないわよ」


エヴリンは、メイド達の顔を見たが、皆が頷き、肯定する。

しかし、エンデは続けた。


「違う、お客じゃない、勝手に入って来たよ。

 塀を、乗り越えたみたいだね」


その言葉に、マリオンは驚き、エンデに尋ねる。


「間違いは、無いのだね」


「うん、間違えていない」


マリオンは、兵達に指示をだした。


「侵入者だ、見つけ次第捕らえよ!」


指示を出した後、マリオンは、ソファーに座りなおす。

だが、落ち着いている感じでには、見えない。

何かに、怯えている。


マリオンは、また、家族が狙われていると知り、

マッシュを、失った時の事を思い出してしまったのだ。


それは、マリオンだけでなく、ルーシアも同じ。


「貴方・・・・・・」


「大丈夫だ、今度こそ、皆を守る」


2人は、心を落ち着かせようと、お互いの手を握る。

エヴリンは、ソファーに座ったまま、下を向き、一点を見つめていた。


不安そうな3人。

エンデは、恩がある。

自然と出た言葉。


「僕が、捕まえて来るよ」


「「「えっ!?」」」


驚く3人をよそに、エンデは、ベランダへと続く、扉を開けた。


「捕まえれば、良いんだよね」



マッシュに、似た少年。

この子を危険に晒させる訳には、いかない。


マリオンは立ち上がり、慌てて止める。


「待ちなさい!

 エンデ君は、ここに居なさい。

 私が、何とかするから!」


その声を聞き、エンデは、『二コリ』と微笑んだ。


「直ぐに戻るよ」


ベランダに立つエンデ。

その背中から、服を突き破り、6枚の翼が現れた。


「はっ!」


「えっ!?」


「エンデちゃん・・・・・・」


悪魔が纏うような4枚の翼。

しかし、一番下には、天使が纏うような2枚の翼。


一目で、この世に存在しない者だとわかる程の、体を覆う具現化された魔力。


「嘘・・・・・エンデ、あなた・・・・・何者?」


エヴリンの言葉に、返事をせず、エンデは飛び立とうとした。

しかし、ルーシアが、叫ぶように言い放つ。


「戻って来るのよ!

 わかっている?

 返事をしなさい!」


ルーシアは、エンデの姿を見ても、怯まなかった。

驚きはしたが、ただそれだけ・・・・・


それ以上に、マッシュが、人ならざる者へと変わり、

帰って来たのだと思ってしまった。

だから、叫ぶように問いかけたのだ。


振り返るエンデ。


「いいの?」


「当たり前です。

 勝手に他のところに行くことは、許しませんよ」


いつの間にか、エンデに近づいていたルーシアは、エンデを抱きしめる。


「何があっても、守ります。

 貴方は、私の子なのですから・・・・・」


その横には、エヴリン、マリオンもいて、頷く。


3人の顔を見た後、改めて告げる。


「行って来ます」


エンデは、暗い夜空に飛び立った。



不定期投稿ですが、宜しくお願い致します。

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