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110/123

110.機巧技師と二人の拳士

「炎の魔法か……」


 全身から炎をまき散らしながら、こちらへと迫って来る機巧人形。

 サクラ=オノミチが操るカリブンクルスは、これまで出会った中でも、最高クラスの性能を持った機巧人形だった。

 さすがに決勝まで駒を進めて来ただけの事はある。

 スピードもパワーもこのレイドブライガとほぼ互角。

 だが、だからこそ、勝負の決め手となるのは、搭乗者の技量、そして、魔導士の魔導演算能力だ。


「マリー。頼む」

『はい、ブライさん!!』


 ティグリスの魔導士であるマリーベルが、魔素をレイドブライガへと送る。

 にわかに湧き上がってくるパワー。

 そして、それは、金のオーラとして、レイドブライガの身体に纏わりついた。


「行くぞ!!」


 燃える獄炎の拳を、クローを装着した自らの正拳突きで迎え撃つ。

 これまでの戦いで見せた圧倒的な火炎のパワー。

 しかし、それは、このレイドブライガには効きはしない。


『くっ!? なんて硬さだ!!』

「ふん、当然だ」


 思わず、鼻を鳴らす。


「レイドブライガは拳も人造オリハルコン。そして、マリーベルの魔力は、最も魔素のエネルギーロスを避けられる"無"属性。彼女のサポートがあれば、このレイドブライガは、どこまでも強くなる!!」

『む、無属性だと……!?』


 そう、マリーは稀有な無属性の魔力を持つ魔導士。

 そして、その魔導演算能力は、学園でもトップクラス。

 属性や特殊能力など必要ない。

 彼女の純粋な魔力と俺の純粋な力と技量、そして、プライヤの作ったこの人造オリハルコン。

 この3つが揃えば、どんな敵でも、恐るるに足りない。


「砕け散れぇ!!」


 カリブンクルスの拳を強引に指で弾く、体勢を崩したその肩口に、身を捻って裏拳を叩き込む。

 確かな手ごたえと共に、再び、カリブンクルスが、壁際まで吹き飛んでいった。


「ふぅ……やはり、こんなものか」


 カリブンクルスが吹っ飛ばされたことで、もうもうと上がる土煙を見ながら、ふと、俺は冷静になった。

 サクラ=オノミチ……この島で、あの赤竜拳最強と呼ばれる拳士に出会えるとは思っても見なかった。

 俺が修めた拳法"黄虎拳"と奴の"赤竜拳"は、故郷であるエイシュウ地方でライバル関係にある流派だった。

 だが、それも昔の話だ。

 俺がガキの頃、2つの流派の対立の激化のはけ口として行われた武闘会。

 そこで、黄虎拳は、大敗を喫した。

 結果、その日を境に、黄虎拳は衰退の一途をたどり、今では、その門徒は十数名程度しか残っていない。

 門徒の中には、赤竜拳を恨んでいる者も少なくないが、俺は違う。

 黄虎拳が衰退したのは、単純に弱かったからだ。相手に理由を求めるのは違う。

 それでも……。

 グッと拳を握りしめる。

 俺は俺を育ててくれたこの黄虎拳が好きだ。

 自然と共に生き、自然と共に育まれてきたこの拳は、他に変えられるものなどない。

 だから、ただ、証明したいだけなのだ。

 黄虎拳は、決して赤竜拳に劣るものではない、ということを。


「これでは拍子抜けだぞ。サクラ=オノミチ」

『勝手に、見損なうな!!』


 土埃を払うようにして、カリブンクルスが現れる。

 だが、その姿は、大きく様変わりしていた。

 太い四肢、炎の翼、頭に生えた鋭利な一角。

 火の粉を散らしながら、その竜王は空へと飛び立つ。


「飛竜へと変わったか。面白い。ならば」

『はいはい、わかったよ』


 プライヤの声と共に、レイドブライガの姿もまた変わる。

 そう、金色の獅子の姿へと。


「竜虎対決と行こうか! サクラ=オノミチ!!」

『うぉおおおおおおおおっ!!!』


 熱気を増す決闘場の空で、鋼の竜と虎が、お互いの襟首を掻き切ろうと牙を剥いた。

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