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109.機巧技師、決勝に臨む

「さあ、ついにやってきてしまったぁ。第60回機巧決闘本選大会決勝戦。両雄の入場だぁ。まずは、東司令塔。予選から圧倒的な強さで、決勝まで勝ち進んできた黄金の虎、トライメイツ"ティグリス"、機巧人形"レイドブライガ"!!」


 司会からの紹介を受け、片膝をついていたレイドブライガ、立ち上がる。

 すると、魔導障壁すら割れんばかりの歓声が、決闘場に響き渡った。


「威風堂々とはまさにこのこと。黄金色に輝く装甲には、威厳すら感じてしまう。そんな機巧人形を製作した機巧技師はプライヤ=D=カッシーナ。人造オリハルコンを作成してしまった彼女の技術には、驚くばかり!」


 今日は最初から仮面を取っているプライヤは、その二つ結びにした髪を風になびかせながら、歓声に応える。


「搭乗者はエイシュウ出身。黄虎拳の遣い手ブライ=シュンクーロン。大陸では、A級冒険者として名を馳せた英傑だ! 静かに得物を狙う様はまさに猛虎。そして、魔導士マリーベル。金色に輝く魔力を持った彼女、準決勝ではテクニカルな戦いも見せてくれたのは記憶に新しい!」


 モニターに映るブライとマリーベルの姿に、またも歓声が上がる。


「対する西司令塔は、予選から何度も熱い機巧決闘を見せてくれた、トライメイツ"モンジュノチエ"、機巧人形"カリブンクルス"!!」


 紹介と共に、今度はカリブンクルスが立ち上がる。


「辛勝に、辛勝を重ねてきた機巧人形だけに、粘り強さは今大会ナンバー1。その猛る炎は我々を大いに魅了してくれた! 機巧技師はビス=J=コールマン。予選から短期間でここまでの機巧人形を作り上げた天才少年だ! 搭乗者は、なんとこちらもエイシュウ出身。赤竜拳の遣い手サクラ=オノミチ。その苛烈な戦い方は、まさにドラゴンそのもの。そして、魔導士エルヴィーラ=フォン=ルーペリオン。彼女の魔導演算能力も今大会屈指の実力。珍しい炎属性の魔法は、圧倒的なパワーを秘めている!!」


 決勝戦ということで、これまでよりも丁寧な紹介が終わったところで、司会が大きく息を吸った。


「じゃあ、いよいよ始めるとしようか!! 双方準備はいいな!!」


 僕とプライヤは視線を交わす。

 彼女の顔には、まるで挑戦者を受け入れる王者のような威圧感が溢れていた。

 どうやら、微塵も僕らに負けるとは思っていないらしい。

 ふふっ、ルタがあんな風に言うのもわかるな。

 こんな時でも、そんなことを考えている自分に、少しだけ驚きつつも、僕はプライヤを睨みつけた。

 姉さんの唯一の弟子、プライヤ=D=カッシーナ。

 僕は、きっと彼女に勝って見せる。


「じゃあ、行くぜ!! 機巧決闘(ガランデュエル)!!」

「レディ──」

『ゴー!!』


 開始と共に、双方が動いた。


「カ、カリブンクルス!! レイドブライガ共に、相手へとダッシュしたぁ!!!」


 司会の驚きの声は、主にレイドブライガに向けたものだ。

 彼らは、この決勝に至るまで、試合開始と共に積極的に攻めていくようなことはしなかった。

 相手に先手を取らせ、それを完膚なきまでに跳ね除ける。

 それが、これまでの彼らの戦い方だったはずだ。

 しかし、今、レイドブライガは、その鋭いメインカメラの眼光を光らせながら、こちらへと猛然と迫って来ていた。

 スピードはおよそ互角。

 そして、カリブンクルスとレイドブライガの拳がぶつかり合った。

 ぶつかった瞬間、空気の圧が風となって、会場を薙ぐ。

 パワーもおよそ互角。

 一瞬鍔ぜり合った後、そのまま、カリブンクルスとレイドブライガは乱打戦へと突入した。

 格闘技の試合のように、お互いが拳を、蹴りを繰り出し合い、いなす。


「す、凄い!! なんという激しい攻防!! レイドブライガ、これまでに見せてこなかった戦闘スタイルを見せている!!」

「か、格闘性能もここまで高いなんて……」

「あらら、ブライのやつ、ちょっと熱くなってるみたい」


 やれやれ、と言ったように、プライヤが両手を掲げた。


「けど、ブライと互角なんて、あの冒険者大したもんじゃん」

『互角ではない』


 プライヤの言葉に反論するように、ブライが初めて、口を開いた。


『俺の方が強い』


 そう言ったのとほとんど同時に、初めてレイドブライガの掌底が、カリブンクルスのみぞおちを穿った。


『うぅっ!?』


 勢いよく吹き飛ばされるカリブンクルス。

 地面を滑るようにして、決闘場の端の魔導障壁まで叩きつけられる。


『サクラ君!!』

『大丈夫だ。致命傷は避けている』


 どうやら、わずかに後ろに跳んで、ダメージを最小限に食い止めたらしい。

 ホッと息を吐くとともに、改めてあのブライという冒険者の実力に驚く。

 これまで、こと格闘戦において、サクラ君の上を行く搭乗者など、いないものと思っていた。

 だが、あのブライという拳士の技量は、サクラ君とほぼ互角……いや、むしろわずかに上をいっているかもしれない。

 魔素転換炉(マナリアクター)の交換により、単純なパワーやスピードでは、ほぼレイドブライガに追従できるほどの性能を得たカリブンクルスだが、ここに来て、操縦者の技量で差を見せつけられることになるとは思わなかった。


『ふぅ、やはり、あいつは大した拳士だ』

「サクラ君……」

『だが、俺一人では勝てなくとも!!』


 カリブンクルスの全身のファイヤーパターンに沿って、炎が上がる。

 それはエルの力。

 サクラ君の格闘能力とエルの魔導演算能力。

 2つの力を組み合わせることこそ、カリブンクルスの本領だ。


『俺"達"なら、あいつに勝てる!! 行くぞ!!』


 フィンガーフレアバーストを発動したカリブンクルスは、不死鳥のように炎をまき散らしながら、レイドブライガへと飛び掛かっていった。

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