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104.機巧技師と最強の好敵手

 準決勝第2試合。

 終わってみれば、やはりレイドブライガの圧勝という形になっていた。

 イズナ零式は、機巧人形としては、最新技術の粋を集めた機体だった。

 圧倒的な運動性能と特殊能力、そして、超振動刀。

 どれをとっても、大会に出場している機巧人形の中でも、最高クラスの性能だ。

 僕らも、直接戦って、勝つ自信があるとはとても言えない。

 でも、そんな強力な機巧人形ですら、レイドブライガを追い詰めることは叶わなかった。


「やはり、別格ということか」

「そう言わざるを得ない……でも」


 僕はグッと拳を握りしめた。


「僕らのカリブンクルスだって、負けはしない」

「ふーん、自信あるんだぁ」


 突然、声を掛けられ、振り向く。


「プライヤ……」

「久しぶりだね。ビス」


 そこに立っていたのは、件のティグリスの3人だった。

 機巧技師のプライヤ。

 搭乗者のブラス。

 そして、魔導士のマリーベル。

 彼らは、仮面を外した姿で、並び立っていた。


「なんで、いきなり……」

「一応、宣戦布告をしておこうと思ってね」


 プライヤは、その長いツインテールを揺らしながら、腕を組んだ。


「まずは、褒めてあげる。君達は凄い。私達と戦うところまで上がって来たんだから」

「それは……どうも」

「感謝するね。これで、私は、君達を下すことで"証明"ができるから」


 プライヤが僕の鼻先まで顔を近づける。


「あの時、言ったように、ネイジィの唯一の弟子は、この私。私は、君よりも優秀な機巧技師だということを決勝で証明する。それが私の望み」


 彼女の敵愾心に触れ、それでも僕は、彼女を真っすぐに見据えた。

 僕と同様に、サクラ君とエルも、後ろに控えるティグリスの2人と視線を交わしていた。

 ほんの数秒ほどそうしていただろうか。

 プライヤはフッと鼻で笑うと、表情を緩めた。


「5日後、楽しみにしてるよ。ビス」


 それだけ言って踵を返すプライヤ。

 試合終わりのまばらな観客達が遠巻きに見つめる中、ティグリスの面々は悠々とその場を去っていった。


「やはりあの男だ」

「あの男って?」


 ティグリスとの面合わせを終えたサクラ君は独り言ちた。


「先日戦った黄虎拳の男だ」

「えっ? あの修行の時に現れたっていう……」

「わ、私も……」

「も、もしかして、あのマリーベルっていう魔導士も?」


 エルもコクリと首を縦に振る。

 アルヴァリオンとの戦いに向けた3日間の活動の中で、サクラ君とエルは、それぞれが何者かに襲われたと言っていた。

 その襲った相手が、ティグリスの冒険者と魔導士だったとは……。


「俺達の実力を測る目的で来たのだろう」

「わ、私も、そう思う。何かを確かめてるような感じだった……から」


 真意はわからないが、どうやら2人も、それぞれの相手に何やら因縁めいたものを感じているようだ。


「と、とりあえず……」


 一緒にいて、状況を見守っていたレンチ先輩が、コホンと咳ばらいをした。


「まずは、カリブンクルスをしっかりと直さなきゃ」

「ええ、そうでしたね……」


 決勝戦まで残り5日間。

 僕らには一つ、非常に困ったことがあったのだった。




「ふぅ……やっぱり厳しいなぁ」


 カリブンクルスのコクピットを開放状態にしながら、僕は、中にある魔素転換炉を点検していた。

 アルヴァリオンとの戦いで、僕らは、カリブンクルスの2つの力を解放した。

 一つは、ドラゴンモード。

 こちらは、予選から時間をかけただけあって、機体にかかる負荷は最小限に止めることができており、運用上の問題は全くないと言ってよい。

 ラチェットに融通してもらったミスリルによる関節の補強も上手くいったようだ。

 問題は、もう一つの火焔光背(かえんこうはい)モード。

 ミノタウロスの魔核が元々持ち合わせていた能力を機巧人形で再現したこの形態だったのだが、思った以上に魔素転換炉への負荷が高く、試合後、なかなか出力が上がらないという深刻な状態になっていた。


「エルもどう?」


 工房内の魔導陣から、カリブンクルスへと魔素を送るエルに問う。


「魔素をあまり吸収してくれない。パスも繋がりにくくなってる」

「やっぱりそうか……」


 魔素転換炉は、機巧人形の心臓にあたる部分だ。

 その心臓がこんな状態では、とても、試合に臨めたものじゃない。


「どうするんだい。ビス君?」

「今から魔素転換炉を交換するしかないですね」

「でも、あてはあるのかい?」


 正直無い。

 ミノタウロスの魔核は、ダンジョンで手に入る中でも、最高ランクに近いものだ。

 それと同格の魔核を今から調達するのは、かなり難しいといって良いだろう。


「ダメもとで、とりあえずはメイキンさんに相談してみるしかないですね」

「そうだね。時間もないし、とりあえず、一度港の方へ……」


 そんな話をしている時だった。


「失礼する」


 一礼と共に、開放された工房の扉から入ってきた人物がいた。

 その人物を見て、サクラ君が、思わず立ち上がる。


「……ルスト」


 そう。それは、準決勝の相手。アルゼンタムの勇者ルストだった。

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