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色のない僕と鮮やかな君  作者: 廿楽 月
4月 出会い、すべての始まり
8/31

7.君の価値観とは

――4月8日(2)


 湊が突っ立ったまま動かないことが気になったのか、花梨は話し始めた。

「混乱しているのかしら?まず、私とくまさんは幼馴染みたいなものよ。それでくまさんは見たとおり湊と同じ学校に通う生徒」

 確かに日熊は自分と同じ制服を着ているため、それくらいは湊にもわかった。

 しかし、湊は疑問に思った。なぜ花梨が自分が通う学校を知っているのか。そこで湊は勇気を出して聞いてみた。

「花梨さんはどうして僕が通う学校を知っているんですか……?」

 ところが、花梨から返ってきたのはその質問の答えではなかった。

「湊、私のことを初めて名前で呼んでくれたわね!!私、嬉しいわ!!」

「え、ええ……?」

 昨日に引き続き、またもや花梨は満面の笑みだ。花梨はいつも笑顔だが、嬉しいとさらに笑顔になってわかりやすいななどと湊はのんきなことを考えていた。昨日のこともあり、疲れているのだろうか。

「あ、でも、“さん”はいらないわ。花梨でいいわよ」

「いや、でも……」

「まあ、すぐにではなくても、そのうち花梨って呼んでくれると嬉しいな」

 珍しく、花梨はここで引き下がった。いつか必ず湊が呼び捨てで名前を呼んでくれるという自信でもあるのだろうか。

「花梨さん、今日の目的を忘れてる」

 ここで、ずっと黙って湊と花梨のやり取りを見ていた日熊が口を開いた。

 ふと、湊は、花梨は自分には呼び捨てで呼んで欲しいと言ったのに、幼馴染の日熊がさん付けで呼ぶことは気にしないのかと不思議に思った。

 しかし、湊が不思議に思ったことは、花梨は気にしていないらしい。

「そうね。じゃあ今日話す面白い話は……あれにするわ。湊、私たち人間の寿命ってどのくらいか知っている?」

 いくら無知な湊でも、それくらいは知っていたのでこう答える。

「約50年……です」

「そうよ、約50年。でもさ、もうちょっと長生きしてもいいと思わない?もし、私たちがいる世界以外の世界があるとしたら、きっと人の寿命はもっと長いはずよ」

 花梨の言うことを湊は理解できなかった。自分の寿命などそんなものだと湊は思っているからだ。ただ現実を受け入れ、何も行動しようとしない湊らしい思考だった。なぜ、花梨はそのように言い切るのか、湊は疑問に思った。

「何でそう思うんですか……?」

「何でって……50年って、何かを成し遂げるには短すぎるし、それにつまらないじゃない」

「つまらない……?」

 やはりこれも湊には理解できない。50年の人生の何がつまらないというのか。自分には将来の夢もなく、やりたいことなどないのだから、自分の人生がたとえ50年であっても何の不満もなかった。

 湊は、花梨は自分とは全く違う価値観を持っているのだと気がついた。自分がつまらない価値観を持っているから、違う考えもあるのだと教えてあげたいとでも言うのだろうか。それは余計なお世話だし、花梨は自分のことを知りすぎているのではないかと湊は思った。家にしても学校にしても湊の思考にしてもだ。未だ得体の知れない花梨に、湊は一種の恐怖を覚えたのだった。

――あとがき――

 廿楽 月でございます。

 湊くん、花梨ちゃんの名前を初めて呼ぶの巻。湊くんっていつも敬語よね。いつ敬語じゃなくなるんでしょうね。そんな湊くんの成長もあるんでしょうかね。どうか見守ってやってください。

 そして、この世界の人間の寿命は約50年!!またこの世界観のキーワードが出てきましたね。この調子で花梨ちゃんがどんどんみなさまにもこの世界を教えてくれます。

 そんでもって、まだ続きます。次回は4月8日(3)でございます。ではでは、また次話でお会いしましょう!!

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