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色のない僕と鮮やかな君  作者: 廿楽 月
4月 出会い、すべての始まり
5/31

4.君と完璧に見える世界

――4月7日(2)


 黙ってしまった湊を花梨はじーっと見つめる。湊を観察しているとでもいうのだろうか。

 湊はさらに気まずくなり、黙りこくってしまう。

「……」

 沈黙が続くこと約30秒間、話を切り出したのは花梨の方だった。

「湊、私が初めて会ったときに言っていたことを覚えている?面白い話を聞かせてあげるって」

 それまで黙っていた湊だったが、問いかけられたので渋々それに返答をする。

「覚えているけど……」

 湊が答えてくれたことが嬉しかったのか、花梨は満面の笑みをたたえている。

「今日はその面白い話の1つ目を聞かせてあげる。湊、この世界はどうしてこうも完璧なのか知ってる?」

 そう問われた湊であったが、湊はそんなことを考えたことなどなかった。なぜなら世間一般にとってはこの世界は完璧かもしれないが、自分はそこから外れた存在だと思っているからだ。湊は、自分がただ無意味に時間を浪費して生きていることは自覚していた。ここが完璧な世界ならば、もっと有意義な時間を過ごす日々が当たり前なのではないかと、自分の人生を悲観することもあった。それでも、自ら動くことはなかった。

 そんな嫌な思考が渦巻く湊は、花梨の問いに消え入りそうな声で答えた。

「僕がそんなこと知るとでも……?」

 花梨は湊のか細い声が心配になったのか、こう続ける。

「別に、知らないことは悪いことじゃないわ。なんてったってこの私がいくらでも教えてあげるんだから。これから知っていけばいいの。」

 またもや自信満々な花梨であるが、湊にとっては迷惑なことでしかない。

「でも僕にそんなつもりは……」

「いいからいいから。私の話を聞いていたら、そのうちもっと知りたいって思えてくるから」

 しかし、花梨は諦めない。

「まず、この世界が完璧であるために重要なのがエネルギー源よ。この世界はエネルギーが満ち足りているからこそ誰もが何不自由なく幸せに暮らせるの。そのエネルギー源となるのがローゼルと呼ばれる地下資源で、毎朝エネルギー貯水槽にエネルギーが貯まるっていうのが表の話」

「表の話……?」

 それまで黙って聞いていた湊だったが、気になるワードについ反応をしてしまった。それに気を良くしたのか、花梨は嬉しそうに声のトーンを上げる。

「そう!!これは表の話よ!!なぜならね、誰一人としてローゼルと呼ばれるものを目にしたことがないの。本当にローゼルが存在するかはわからない。けれど、エネルギーは毎朝補充される。じゃあそのエネルギーはどこから来るのかと言うと……」

 気づけば湊は花梨の話を夢中になって聞いていた。湊は今まで、自分の知らなかったことを教えてもらうことがこんなに面白いと思ったことなどなかった。湊の中で大きな変化が起き始めていた――。

――あとがき――

 廿楽 月でございます。

 ついに、あらすじにもある“完璧に見える世界”の話が出てきました。花梨ちゃんの言うところによると、このお話の世界は“ローゼル”という資源があるからこそ人々は幸せに暮らしています。しかし、“ローゼル”を誰も見たことがない。果たして“ローゼル”は本当に存在するのか。それとも作り話なのか。そういったところも楽しみにしていただければと思います。

 このお話のジャンルは一応ローファンタジーですので、花梨ちゃんがこのファンタジーな世界観を明らかにしていってくれます。花梨ちゃんはヒロインであり、物語の案内役でもあります。

 次回で4月7日のお話は終わりです。花梨ちゃんのセリフの続きが気になりますね!!ではでは、また次話でお会いしましょう!!

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