第2章 美奈子のピンチ
大空龍一が美奈子のとこに来て、1ヶ月が経とうとしていた……
喫茶ヴィーナス……
大声で美奈子が龍一に怒鳴っていた。
「龍一君!さっき、私がお風呂に入っている時に覗いたでしょ!」
「ま、まさか……」
「正直に言いなさい!」
「え〜と……あ、あれは、僕じゃなくて、正が……」
言い訳しようとする龍一に、美奈子の冷たい視線を送った。
「あっ、その、ホントは僕が覗きました。いけないと思っていたんですが、僕もそういう年頃で……それに、ねーさんがあまりにも綺麗だから……」
「まったく!今回は許してあげるけど、今度覗いたら、外で寝てもらうからね!」
「は、はい!」
龍一はおとなしく部屋に戻った。
「龍一君、いい加減、人に迷惑かけるのはやめなよ」
「正君、君だってホントは覗きたいくせに……寝言でいつも、美奈子さん好きですって言ってるもんなあ〜」
「そ、そんな事言ってないよ」
「言ってるのはホントだ!でも、誰だって、あんな優しくて綺麗な人ならそう思うよ。何故彼氏がいないのかが不思議だ」
「前はいたらしいよ。しかも科学者!」
「えっ?マジ!」
「うん、でも研究の邪魔をしないために別れたらしい」
「ふ〜ん」
「そういえば、明日は龍一君の誕生日だったよね」
5月20日、その日が龍一の誕生日なのだが、捨て子だった彼は本当の誕生日を知らない。
拾われた日が5月20日なため、その日が彼の誕生日となったのだ。
だが、5月20日は龍一にとって、悲しい日でもあった。
「明日は、お祝いしなくちゃね」
「悪いが、明日は俺用事があるんだ」
普段はおちゃらけている彼だが、その時は悲しそうな顔をしていた。
次の日……
龍一は、昼食を終えたあと、美奈子たちに今日は遅くなると伝え、出かけた。
「今日の龍一君、なんか元気がないわね」
「うん、それに用事ってなんだろう」
数時間後、とある場所……
人の顔くらいの石の前に龍一は座っていた。
「師匠……あの日から……俺が、師匠を殺した日から今日で1年ですね」
どうやら石は、龍一を育てた人の墓のようだ。
「師匠……俺、今すごく幸せです。師匠のように俺の事を思ってくれる大切な仲間が二人も出来た。だから、安心して、休んでください……」
しばらくしたら龍一は立ち上がり、
「また来ます」
といって立ち去った。
18時15分……
美奈子たちは店の片付けをしていた。
その時!
ブレスが光った。
「(近くで事件だわ)正君、悪いけど、私も用事が出来たから、あとお願いね」
「えっ?は、はい」
某公園……
5人のチンピラが女性を一人拉致して、ある人物を待っていた。
「ホントに来るのか?」
「お、お願い……助けて……」
「来るさ!この女を助けになあ」
彼らが待っている人物とは、どうやらアルテミスのようだ。
時計の針が18時35分を刻みかけた……
その時!
「天に導かれ、あなたたちを退治しに来た」
ついにアルテミスが現れた。
「よく来たなあ!アルテミス!」
「おとなしく人質を放しなさい!」
「まあ、待て、これからお前に面白いものを見せてやる」
「面白いもの?」
チンピラの一人がポケットから何かを出した。
「あ、あれは……」
やつらが出したもの……
それは、人を化け物に変えるカプセルだった。
「ここ数日で、俺たちの仲間が、お前にやられた……俺たちはお前に復讐しようと、ある女から、このカプセルを買ったのだ」
「(女……?カプセルを売っているのは秀二じゃないの?……)」
「女の話では、これを飲むだけで、強力な強さを手にすることが出来るらしい……だが、そのために、永遠に化け物になってしまうらしい……俺たちはお前に復讐したいが、化け物になるのはイヤだ」
「化け物になるのがイヤなら、おとなしく自首しなさい!」
「残念だが、それもイヤでね〜、そこで考えたのは、このカプセルをこの女に飲ませる事にした」
「なっ……やめなさい!」
「くくっ、お前が、俺たちの言う事を聞けばやめてもいい」
「何ですって」
「イヤならこの女にカプセルを飲ませる」
その時、店に帰る途中だった龍一が公園の近くに来ていた。
「何の騒ぎだ?」
龍一は木に隠れながら、様子を窺った。
「も、もしかしたらあれが、アルテミスか……」
「さあ、どうする!アルテミス!」
「わ、分かったわ」
「くくっ、そう、それでいいんだ」
「それで、私に何をしろと?」
「まずはお前の素顔を見せろ!」
「……分かったわ」
そういって、美奈子の姿に戻った。
それを見た龍一はさすがに驚いた。
「ま、まさか、美奈子ねーさんがアルテミスだったなんて……」
「くくっ、コイツは驚いた。どんなヤツかと思えば、まさかお前のような美人がアルテミスとはなあ……さて、どうやって復讐してやろうか」
絶体絶命となった美奈子……
果たして、このピンチをどう切り抜けるのか……