第1章 二人の少年
アルテミスが誕生してから一ヵ月後……
喫茶ヴィーナス……
ここが美奈子の経営しているお店だ。
「買い物行って来ました」
と一人の少年が店に入ってきた。
名は、河村正(15)この店でアルバイトをしている従業員だ。
彼も、4年前に両親を事故で失っている。
その後、両親がよく通っていた美奈子の店に住み込みでアルバイトをするようになった。
この時代では、孤児は珍しくない。
そのため、学校に行かない子供も珍しくなかった。
「ありがとう正君」
しばらくすると、髪は金髪に染めているが、服などはボロボロのを着ている少年が店に入ってきた。
「いらっしゃいませ」
少年は、コーラと焼きそば、さらにオムライスを頼んだ。
少年は静かに店に置いてあった漫画を読み始めた。
「お待たせしました」
正が注文の焼きそばとオムライスとコーラを運んできた。
「では、いただきます」
と言い少年は食べ始めた。
その食べ方は、まるで、何日も食べてないような……久々にご飯を食べるような感じだった。
わずか5分で焼きそばとオムライスを食べ、最後にコーラを読み、そして、立ち上がると、お金を払わず、食い逃げをした。
だが、相手が悪い。
すぐに美奈子が捕まえに行った。
美奈子は少年を捕まえ、店に戻った。
「何でこんな事をしたの?」
「……」
少年は美奈子の質問に答えようとしなかった。
「美奈子さん、警察を呼びますか?」
「ちょっと、待って、あなた、親は?」
「……そんなの、いね〜よ」
無言だった少年がついに答え始めた。
「お、俺、赤ん坊の頃、捨てられたんだ。まあ、こんな時代には珍しくない事だが……だけど、そんな俺を拾って育ててくれた人がいた。でも、去年死んじゃったが……しばらくは、その人が残してくれたお金で生活できたが、四日前にはとうとう1マネン(100円の事)しかなくて、それで、悪いと思いながら、食い逃げしようと……」
「そう……あなたも苦労してきたのね」
「た、頼む、いや頼みます。食べた勘定は必ず払います。だから警察には……」
「しょうがない。たいした給料は払えないが、ここで住み込みのバイトさせてあげよう」
「いいの?」
「でも、飲食店だから、清潔な格好で仕事してよ」
「ありがとう!」
「私は、如月美奈子、この子は、アルバイトの河村正君。あなたのお名前は?」
「俺は大空龍一」
その夜……
「龍一君は正君と同じ部屋ね」
「は〜い」
「じゃ、二人ともお休み」
龍一と正が同時に、
「お休みなさい」
といい、龍一は冗談半分で美奈子に投げキッスをした。
美奈子は笑みを浮かべ、ドアを閉めた。
「正君、あの美奈子ねーちゃん綺麗で優しいなあ。こんな時代なのに、食い逃げした俺にこんな事までしてくれるなんて……」
「僕も4年前に親が死んで、それから美奈子さんにお世話になったんだ」
「そうか……あっ、そういえば、アルテミスって知ってるか?」
「知ってるよ。1ヶ月前くらいから、この街の悪人と戦っている戦士だ。」
正は美奈子がアルテミスだと知らない。
敵はもちろん美奈子がアルテミスだと知り合いに知られたら、危険に巻き込んでしまうかもしれないため、彼女は正体を誰にも話さず、一人で悪人たちと戦っているのだ。
午前2時……
美奈子の店の近くで、一人の女性が帰宅途中に、3人の男性に襲われていた。
美奈子のブレスは、身近で事件が起こると、赤く光る。
これにより、美奈子は事件が起きれば、すぐに出動できるのだ。
「バトルチェンジ!」
この掛け声で、愛の戦士、アルテミスに変身。
赤いバトルスーツに、正体がばれないように、赤いマスクに黒のゴーグルこれがアルテミスとなった時の姿だ。
「お、お願い助けて……」
「うるせ〜!俺たちは金と、アンタの体が、ほしんだ!」
「や、やめて〜」
「今宵の月は我を狂わせる」
「だ、誰だ?」
「悪を許さぬ愛の戦士、アルテミス!あんたたち、覚悟しな」
「クソ!コイツが今話題の……」
「じょ、上等だぜ!おい、やっちまおうぜ!」
だが、勝負は見えていた。
チンピラ3人が勝てるはずもない。
アルテミスは、一人は裏拳を、もう一人は上段蹴りを決めた。
「や、やるな〜、だがそこまでだ!」
もう一人の男がカプセルのようなものを飲んだ。
すると、この世とは思えぬ化け物に変身した。
「あなた、今飲んだものを何処で手に入れたの?」
「さあな……お前に教える必要などない!」
「そう……かわいそうな人……あなたはもう人間じゃないわ!」
「うるせ〜!」
「人間じゃない化け物なら、遠慮なく征伐する……バトルソード」
アルテミスの手が一瞬、緑に光ると、そこからバトルソードが出てきた。
「今度生まれ変わったら、まともな人間になりなさい!」
そういって、化け物を一刀両断……
「や、やばい、今度は俺たちが殺される……」
「あんたたち、あいつが飲んだものを、何処で手に入れたか教えなさい」
「お、俺たちは、知らない……あいつがあの薬を持っていたのは知っていたが、何処で手に入れたかは、聞いてないし、まさか化け物になるなんて……」
「……そう……いい、おとなしく自首しなさい。じゃないと、お前たちも殺す!」
「は、はい……」
「大丈夫?」
「あ、ありがとうございます」
アルテミスは彼女を自宅まで送っていった。
ふと、空を見ると、太陽が昇ろうとしていた。
元の姿に戻り、店に戻る美奈子……
彼女の戦いは始まったばかりだ。