幼い約束
久しぶりの投稿〜
「ユーフィア!」
バレないように行動していたことなど忘れ、レオンは大きな声を出して彼女を呼んだ。久しぶりに会えたという喜びを隠せるほどレオンは器用でなかった。
そして、それはユーフィアも同じである。
「レオン!久しぶりね、わざわざ来てくれて嬉しいわ。」
ユーフィアはレオンのもとに駆け寄ると彼を抱きしめた。数少ない友人に会えた喜びを全身で体感したかったのだろう。
一方、ユーフィアに恋心を抱いているレオンの口元は緩んでいる。レオンも、ユーフィアも自分の心に素直なのだ。
ユーフィアはレオンから離れると次は手を握り、ソファーに座らせた。
「ねえ、今日はどんなお話をしてくれるの?」
「そうだなあ、じゃあ、俺がでっかい猪を狩った話をするか!」
「熊の次は猪を狩ったの?レオンは強いのね。」
「まあな、それでその猪なんだけどな……。」
ユーフィアのもとに行くとレオンは決まって自分の冒険譚を話す。どんな獲物を狩っただとか、とても綺麗な景色を見ただとか、特に記憶に残ったことを伝える。
すると、ユーフィアは目を輝かせ、興味を持ってくれた。自分の話を聞いてくれることよりもなによりもユーフィアが笑顔になってくれることがレオンは嬉しかったのだ。しかし…。
「いいなあ、レオンは。私もそんな冒険がしてみたいなあ。」
話が終わると彼女は決まってこの台詞を言った。巫女は村にとって大切な存在であり、わざわざ村の外に出して危険な目に合わせるわけにはいかない。だから、ユーフィアは生まれて一度も外の世界を見たことがないのだ。
レオンはそのことを知っていた。複雑な気持ちであった。最初は外に出れない彼女のため、レオン自身が冒険をし、その話をして喜んでもらおうと考えた。喜んでくれるユーフィアを見て、上手くいったと思ったが、今は彼女を傷つけているのではないかと思う。
レオンは決心した、いつの日か必ずユーフィアに外の世界を見させると。そのためにも彼女を守る戦士になると。
「安心しろ、いつか俺が戦士になってユーフィアを外の世界に連れて行ってやる。だから…な?」
レオンは目をそらし、恥ずかしそうに言った。叶うかも分からないそんな約束。けれど、レオンが自分のために約束をしてくれた。ユーフィアにはそれで充分だった。
(やっぱり、レオンは優しい…。)
ユーフィアは良い友達を持てたと心の底で思う。
「ふふ、じゃあ、期待してるわね。」
「……ああ、任せろ。」
この日からレオンがより一層、修行にのめり込むようになることは言うまでもない。