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五人少女シリーズ

奇跡的に登場した彼女たちの第一話【五人少女シリーズ】

作者: KP-おおふじさん

ほのぼのする日常系な一話読み切りシリーズ【五人少女シリーズ】です。


いつもここで簡単なキャラ紹介をしていたのですが、しないで済むお話を考えようと第一話というノリでしっかりやろうと思って書きました。書いてたはずだったんです。

 その家は住宅街の少し外れた場所にある大きくて小綺麗な二階建ての家である。庭は緑で、飼ってはいないが犬が走れるほどのスペースがあり、赤い可愛いポストから続く石畳を歩いて、おしゃれな玄関口に続いている。


 そんな家にはかしましい五人の少女達が住んでいる。みんな個性的な美少女で、いつから、どうしてここに揃ったのかはわからないが、ただ自然とその家に居着いていた。


「今日みんなに集まってもらったのは他でもないの。私達の在り方に、とても大きな問題が発覚したのよ」


 五人はそれぞれ、その家に部屋を持っていた。例えば今喋った衣玖はこの家の二階に、本とゲーム、アニメや音楽のディスク、それからパソコンを詰め込んでいる。彼女は世間が見つけたら放っておかない頭脳の持ち主でIQは日によって上下するが平均的には三億以上を誇る天才だった。だがこの家で密やかに暮らすことでアニゲーオタライフ謳歌しつつ、そしてパンクロックやメタル音楽の大ファンである事から、ライブに行ってはヘッドバンギングで頭をおかしくして帰って来られる平和な日常を過ごしている。


 そんな彼女が、他の四人を集めて静かな声で「とても大きな問題が」と、そう言った。その小さな体に似合わず、口調はとても大人びている。


「問題ですかぁ?在り方?うーん、どういう意味でしょう……」


 衣玖の発言に首を傾げ、立てた人差し指に頬をちょこんと乗せてそう言った美少女は、名前を真凛と言う。


 彼女は実際のところ、この家で保護されてると言っていい。その感性や力は明らかに地球上のモノではなく、本人曰く「宇宙の遠くから遊びに来てるんです☆」という。


 朗らかに敬語で話し、きゃぴきゃぴと楽しそうな真凛はこの家の家事を担当していた。掃除も食事も洗濯も、遊ぶのと同じくらい楽しいのだと笑って話すのはきっと、外宇宙の独特の感性があるからなのかもしれない。だが。


「もし衣玖さんでも手に負えない問題があったらわたし、片付けちゃいますけど……」


 真凛は微笑んでそう言った。そう、彼女に地球の法は通用しないのだ。彼女には異能とも言える力を持っており、全ての破壊と再生を司っているのである。地球など一息で壊しつくし、次の瞬間にはいわゆる”世界五分前仮説”のように、何事もなかったかの如く世界を再生することが出来るのだ。


 それに対し、衣玖は冷静に「そのレベルではないの」と諌めると、次に声をあげたのは西香という美少女だった。


「じゃあ一体何だって言うんですの?わたくし、一時間前から西香ファンクラブの集まりに出る予定なのですけど」


 やや作られたようなお嬢様喋りをするその美少女は長く真っ直ぐに伸びた黒い髪を宙空に泳がせながら時計を見やる。このミーティングが始まったのはほんの五分前であり、単純計算で五十五分、西香はその集まりに遅刻しているのは言うまでもない。


 言ってしまえば、彼女の性格はあまり褒められたものではなかった。その美貌からファンを作り、定期的に金品を提供されているにも関わらず、ファンクラブ会場では日常の愚痴をこぼして帰るのみである。それも一時間や二時間の遅刻は当たり前で、酷いときは半日後にキャンセルの知らせを届けることもある。だがそれでも男性ファンを掴んで離さないほどの美貌が彼女にはあったのだ。吐息は歌に、愚痴はオペラのように聞こえる、とは一部熱烈なファンの言葉である。


「その割にのんびりしてますねぇ」


 真凛がのほほんと指摘すると、西香は触っているスマホの画面を見せつけて言った。


「今チャットサービスを試しているところなんですの。わたくしのお友達探しに」


 表示された画面には西香のあざといまでのアイコンと対面するように、ごく普通に可愛い女の子の画像が表示されている。どうやら今現在女性ユーザーとチャットをしているようだった。


 だが西香は年齢イコール友達いない歴と言ってもいい。彼女は男性から見た目で好かれるが、西香自身が渇望する同性の友達というのは出来たことがない。それもそうだろう、チャット欄で続いているやり取りを見れば一目瞭然である。


『わたくしのお友達になりませんか?』『いいですよ!』『それは良かった!あなたのようなちょうどいいブスを探していたのです!』『は?』『一緒に並んだ時にわたくしが引き立つような!』『』『それと、わたくしと一緒にいることで男どもが寄ってきます。たまに金持った当たりがいるので、あなたが適当にあしらって、そこで得たお金の八割はわたくしに還元していただきます。男どもはわたくし目当てなので、還元の義務は当然発生するとわかっているとは思いますが……』『~~~さんはログアウトしました』


 そんなやり取りを繰り返しながら西香は難題に直面したかのように眉を寄せて「おかしいですわねぇ」と呟くのだった。


「っとにバカ言ってんなぁ。で、衣玖。問題ってなんなのさ?」


 スパッと西香の悩みを切り捨て、ハキハキとした声でそう言った美少女の名は留音。腕を頭の後ろで組みながら、その長い脚で床を押して椅子を後ろ足だけで立つように支えている。組んだ太ももは健康的に大きく、バランスの良い筋肉の付け方をしている事が見て取れる。彼女が毎日の運動を欠かさないからだろう。


 また足の長さから分かる通り、モデル体型で背が高く、その美しい金髪は流れた汗を光に変える。腕の組み方から強調されている胸もこの集まりの中で一番大きいものだった。だが本人はさほど意識しておらず、子供の頃から徹底的に、もはや銀河最強と言うまでに格闘技を叩き込まれ、男の子のように育てられた事もあってロボットやプラモデルに目がなく、口調もまたそのように男勝りであった。


「それがねルー。私達には……」


 衣玖はこの中で唯一の幼馴染である留音を愛称で呼んでいた。留音は少し懸念そうな顔を浮かべながら「あたしらには?」と反復している。


「私達には……」


 衣玖がその場の全員をじっくり見回した。真凛、西香、留音、そしてあの子。


 あの子。彼女もゴクリと息を呑んで衣玖を見つめる。きゅっと握りこぶしを作って緊張するあの子の可愛らしさに衣玖の時間が止まる。だがそれは無理も無いだろう、この子は天上天下、全ての存在に越えられない壁を重ねて作られた壁の更に向こうにいるべき至高の存在なのだ。普通であれば見ることも、また喋りかけることも許されないはずの存在にも匹敵するであろうこの子はどういうわけか他の四人と同居していた。


 普通なら真凛が崩壊させて終わらせるだけだったかもしれないこの地球が存続しているのはこの子のおかげなのかもしれない、という説も衣玖や留音、西香の間でにわかに語られている話である。それほどの影響力と存在感、そして見たものを癒やし、何もかも浄化してしまいそうな美少女であったが、その子は自分にそんな力があると思ってはおらず、至って謙虚で誰に対しても優しい、世間を知らない田舎娘のような面がある。自殺を考えていた青年がこの子とすれ違っただけで一瞬にして生きる希望を限界突破気味に取り戻すのは当たり前で、紛争地域を歩けば全ての戦争に平和的解決がもたらされるほどにまるで女神と言う存在だった。


 だがだからこそ、その子は写真に写せば光で見えなくなるし、名前を書き記すことすら恐れ多くて誰からもされることはなかった。


 そんな子が衣玖の雰囲気に飲まれ、緊張している顔をやっと衣玖が認識し、このまま緊張させてはいけないと気づかせた。そして口を開く。


「私達には……第一話がない!!」


「えっ……?な、なんですって?第一話?」


 西香が聞き返すと、衣玖がしたたかに頷いて答えた。


「そう、第一話……シリーズものとしてやってきたけど、ご意見、ご感想の中にあったのよ、『キャラの性格や会話が掴みづらい』というのがね。確かにその通りよ。ドラ猫やクレパスしんくん、海さんファミリーのような日常系の路線で行きたいとは思っているけど、あれは大衆向けに成功した作品だからこそもはや第一話がいらないほどの知名度を獲得している。でもそうじゃない私達には、やはりそれぞれのキャラをしっかりと把握出来る第一話という存在は、どうしても必要になるんじゃないか……私はそう思ったのよ」


 衣玖はその明晰な頭脳から紡がれる言葉を一言ずつ噛みしめるように眼前のみんなに伝えた。


「お、お前……これまで避けてきたメタな話を第一話と銘打った話で持ってくるとは……そういうの苦手な人もいるんじゃないのか……?」


 留音は椅子の姿勢を戻し、腕を組むのもやめて真面目にそう言うと、衣玖は首を横に振った。


「話がわからないと途中退室されてシリーズ全部捨てられるより遥かにマシよ。知ってもらえたなら、もしかしたら他の話も読んでもらえるかもしれないのだから。そのために今日は地の文を語ってる人にもそういうテンションでお願いしますと伝えてあるわ」


 あ、どうもよろしくおねがいします。それとご意見ご感想をくださった方、本当に心から感謝しております。こんな場ではありますが、本当に嬉しかったとお伝えしておきます。


「うわ……気づかないふりしてたけどやたら説明多かったのはそれか……」


「うー!むず痒いですわー!キャラ会話型のブログ見てるみたいでなんだかワキワキしてむず痒いですわーー!!」


「これだからあんまりメタな話はやりたくないんですよぅ……絶対読んでくれた方にもこんな話続くんだったら読まないって思う人いますってぇ……」


 真凛はメタ話があまり好きではないらしい。残念。しゅん。ちゃんと地の文に戻ります。


「でもみんな、私達のクレバーな活躍を見てもらう入り口としてはそこそこに悪くないとは思わない?なんか素っ頓狂な話で美少女たちが日常系っぽいノリでバカな事言うお話なんだろうなーって、ならない?この空気感が伝わればっ!どう?」


 衣玖が机をバンバンと叩いて主張した。だが留音も西香も渋めの表情でいる。


「いやぁ……どうだろ。もっとワイワイやって一人ずつ登場、みたいな方が一話っぽいんじゃないのか?」


 留音の発言は最もだった。大体の話の中で第一話というのは一人ずつメインキャラが登場し、見せ場が作られていくというのが当たり前なのだ。


「ちょっとルー、ドラ猫の一話知らないの?メインキャラの紹介、一切なしなのよ?!突然猫型ロボットがポケットから未来道具を出すシーンだって全く何一つ説明無しでその後受け入れられているのよ?!それに比べたら私の配慮は完璧に第一話的でッ」


「それは全然別の話だろ、もうあたしら三十話近くシリーズ落としてんのに……ってかドラ猫様に張り合おうとするなよ……」


「そうですわよ。それにどっかの萌え絵書ける方がわたくしをセンシティブかつ可愛く表現してくだされば人気なんて一発でむぐぐぐ」


 留音が西香の口を抑えた。それはそうだ、それ以上言ってはいけない。そんなやり取りを真凛とあの子はニコニコ見ていて、そこに真凛が口を挟んだ。


「要は、最終的にこの作品のらしさが伝わればいいってことですよね?」


「まぁそういうことなんだろうなぁ。第一話とかパイロット版みたいなのにしたいって事なんだろうし」


 留音が腕を組んで唸る。


「そうね。日常っぽさ、どことなくクレバーでロックな雰囲気、そこにちょっとでも別の話も面白そうだって思ってもらえたら最高なんだけど……なかなか難しいわね」


 そう俯いた衣玖の言葉に、真凛がニコニコしながら立ち上がった。


「だったら簡単ですっ☆バ ク ハ ツ 落 ち っ♪」


「わたくし、なんだかそうなる予感がしてましたわ」


 というわけで。


「皆さぁん!今後とも今シリーズ!よ ろ し く お 願 い し ま ぁ あ あ あ あ あ す!!!(地球破壊の孔ポチ)」


 地球は崩壊した。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。


これで入門はバッチリです。あとは評価や感想などはいただけたら嬉しいですが、シリーズから戦略的歩きスマホ学校の話、タコとの戦いや、掃除機を掃除する話などを読んでいただけたらとても嬉しく思います。



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― 新着の感想 ―
[良い点] いやいやいやいや…… ここまでぶっとんだ連中だったなんて、聞いていませんよ(笑) とくに西香は想像していたより、ずっと重症。 これでシリーズを、もっと楽しく読めます♪
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