プロローグ:山の勇者があらわれました
「なぁ、ツーちゃん」
「なに?オオキくん」
「俺、勇者になったかもしれん」
いつからなのか、日の本と呼ばれる国、ひいてはこの世界に深刻な変化が訪れました。それは、魔王という存在。魔王は圧倒的な力を振るい、世界に甚大な被害をもたらすと、有識者は言いました。そして魔王に対抗しうる唯一な手段こそが、勇者。
「勇者になったら何ができるの?」
「いや、特になにも」
どうやら勇者はなにもできないらしい。
「じゃあなぜ勇者になったとわかったの?」
「それは・・・山が・・・呼んでる気が・・・!」
「先週も先月も、ね」
「そうか!俺は生まれて勇者になる運命だったんだ!」
「山登りを始めたのは?」
「ついこの間!」
「そう、頑張ってね」
魔王は山にいますと、有識者は言いました。そう、山に惹かれることこそが、山の勇者であることの何よりもの証拠。新米勇者の誕生の瞬間でした。
「ああ、世界のために、俺は戦うぞ」
「死んちゃうかもしれないよ?」
「それでも、やらなければならない」
「どうして?」
「魔王を倒さないと入山規制が発生するらしい」
山の勇者にとっては死活問題でした。
「でも、山に入らないと魔王を倒せないでしょう?」
「バカな?!」
こうして、一人の山の勇者と仲間たちの魔王退治の旅が始まりました。