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うちのお嬢様が破滅エンドしかない悪役令嬢のようなので俺が救済したいと思います。【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
アミューリア学園二年生編

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バスケやろうよ!【前編】



「お嬢様、お菓子を作りました」

「朝からどうしたの?」

「わあ、美味しそうな……、……え、ケーキですか? ガトーショコラ、チーズケーキ、こちらはタルトに…プディング…ず、随分たくさん作りましたね…?」


朝、登校してすぐにお嬢様にバスケットを差し出す。

いやあ、昨日ライナス様に使用人が出来たのを見ていたら俺もお嬢様になにかしたくてフィーバーしてしまって…えへへ。

…まあ、素直に作り過ぎたので正直どうしよう感はあるけど。

お嬢様同様、バスケットの中を覗き込んだスティーブン様も驚いた表情。


「こんなにたくさん…食べきれないわね」

「そうだ、今日の授業は3時には終わりますし、お外でお茶会をしませんか? 1年生の皆さんもお誘いすれば瞬く間ですよ」

「そうですわね、ハミュエラ様は甘いものがお好きと仰っていましたし…」


痛覚はないくせにちゃんと味覚は機能してるからな。

…ま、作り過ぎた自覚はあるのでそうしましょう。


「ですがお外で、とはどこで…」

「あ、それなら南校舎の森林公園などいかがでしょうか? 花壇がとても素晴らしかったですよ」


そうだ!

是非お嬢様にお見せしたかったのだ!

丘の上でお茶会をして、花壇で心癒されてください、お嬢様!


「そうだわ、南校舎といえばヘンリエッタ様の体調が良くなられたようだからお詫びに行かないと。朝早くはお忙しいだろうからお昼にでも行きましょう。ヴィンセント、付いて来なさい」

「……はい…」

「が、頑張ってください」


ズッドーーンと下がるテンション。

まあ、ヘンリエッタ嬢が倒れたのは恐らく俺のせい…。

謝りに行くのは当然だ。

でもやだなー…あの人タカビーでめんどくせぇんだよ。





と、嫌がっていてもあっという間にお昼休み。

いつもなら薔薇園に直行なのだか、二つ隣のクラスにお嬢様に伴われて向かう。

このクラスの男子に声を掛けてヘンリエッタ嬢を呼んでもらった。

少し驚いたようなヘンリエッタ嬢がすぐに教室の入り口にやって来てくれる。


「ま、まあ、ローナ様…」

「ごきげんよう、ヘンリエッタ様」

「ごきげんいかがでしょうか、ヘンリエッタ様」

「っ! ご、ごきげんよう。どうかなさいましたの?」


なんだろう、そんなに俺とお嬢様が来たのが意外だったのか?

なにやら動揺しているように見える。

…だが、よく考えると俺は上半身半裸を見られたのだ。

普通のご令嬢なら動揺する、か……。

ああ、本当にすみませんでした…。


「本日から学園に復帰されたとお聞きしましたの。1週間も寝込んでおられたとか…」

「あ、え、ええ…。でも、もう大丈夫ですわ。ほら、この通り」

「でしたら、なによりでございますわ…。ヘンリエッタ様が倒れられた時にヴィンセントが側にいたと聞いて…なにかあったのではと少し心配していたのですが…」

「べ! …別になにもございませんわ。む、むしろ運んで頂いたようで…こちらからお礼に行かなければと思っておりましたのに」

「そうでしたか…。ですがお気になさらなくても結構ですわ。…午後も料理専攻科にお出になられますの?」

「ええ、勿論そのつもりですわ」

「では、先週の授業で習った事…よろしければ目を通してくださいませ」

「! まあ、ありがとうございます。助かりますわ」

「いえ。…では、後程」

「ええ」


お嬢様がヘンリエッタ嬢にノートを差し出すと、彼女は満面の笑みでそれを受け取りお礼まで言う。

…あるぇ…?

この人こんな人だっけ?

俺、丸っと1ヶ月ばかり「うちの使用人になりなさい!」って引き抜き話をしつこくされたけど…もっと上から物を言う……ザ・貴族って感じだったけどなぁ?

それに、俺のせいで倒れたんだからうちで働きなさい! …とか言われると思って覚悟してきたんだけどそれもなかった。


「…ヘンリエッタ様、雰囲気変わられましたね?」

「貴方もそう思った? …まだ本調子ではなかったのかもしれないわね…。1週間寝込まれるなんて、やっぱり普通じゃないもの…。心配だわ…」

「……そ、そうですよね…」


俺の半裸見ただけで人格に影響を及ぼしたのか?

そ、そんなバカな…。

なんか俺まで心配になってきたぞ。


「なんにせよ、午後の授業はご一緒するから…少し様子を見ておくわ」

「はい……」

「貴方は自分の授業に集中して。…それから、わたくしの誕生日パーティーの準備もそろそろ始めてくれるかしら」

「! お任せください! 女神祭の前日のダンスホールはすでに押さえてあります!」

「貴族たる者、自分の誕生日パーティーくらいしっかり主催出来なくてはいけないもの…。貴方も忙しいと思うけど、お願いね」

「はい!」


お嬢様! ああお嬢様、お嬢様!

お嬢様に頼られるこの幸せ!

去年は俺がダメダメでエディンの家でパーティーをしてもらったから、今年は俺が絢爛豪華なお嬢様のお誕生日パーティーを準備致しますので!


「あまり派手すぎなくていいわよ。次の日はお城で女神祭のパーティーだもの…皆さんが疲れない程度のものにしましょう」

「ふぁ…⁉︎」

「当たり前でしょう? 確かに、誕生日パーティーは権威を示すものでもあります。でも、わたくしの誕生日は女神祭と被るもの…。学生のうちはそこまで大掛かりなパーティーを行う必要はないわ。それに、わたくしの誕生日パーティーにはマーシャの舞踏会マナーのチェックの意味もある。あの子は今後、公の場に出る機会が増えます。…ルークにも手伝わせて、あの二人をしっかり教育するのよ」

「お嬢様…!」


……女神か?

いや、女神だった。







********



さ、てと。

お嬢様は午後、二つの授業がある。

俺は今日偶然にも一つだけなんだよな。

正確には剣技の授業の先生に「セレナードとベックフォード様とディリエアス様にはもう教える事がありません」と言われてしまったんだけど……。

なのでもう剣技に関して俺たち三人は自主練しかやる事が出来ない。

俺はまあ、そもそもこの世界の剣術と少々違うので無理ないのだが…。

公爵家子息2名の『記憶継承』たるや…。


「3時にお茶会? わあ、僕も参加していいの?」

「けど、3時まで時間があるな? 何かするか?」

「俺は体を動かしたいな!」

「ですよね。運動する気満々だったところを出鼻を挫かれましたもんね。俺もなにか運動系がいいです」


教室には俺と同じく突然時間の出来たエディンとライナス様。

そして何故かレオ。

そういえばレオはマリアンヌ(偽)が居なくなってから普通に専攻取ってたよな?

こいつも専攻授業ないのか?


「レオは専攻の授業は……」

「もう教わったところだから退屈なんだよねぇ〜」

「さ、さすがレオハール様!」

「そ、そうですか…」


そうだった、王族は『記憶継承』が現れやすい。

特にレオは強く出ているらしいから、知識に関しても他の貴族より“思い出して”るのか…。


「…………」


王族、で思い出す。

この間のケリーとの会話。

あいつ、普段はそんな感じ全然見せないのに…。

やはりアミューリアは多くの貴族が集まり、順位付けもされるから意識しちまったんだろう。

リース家の遠縁に当たる男爵家の出自。

あまり『記憶継承』が強く出ているわけではない、自分の能力の限界のようなもの。

でも、それを補う努力をあいつはしている。

一緒に生活していたんだ、それは俺が一番よく知ってるんだけど……。


……その“俺”が…、……王族だったから……。


うううう、これどうしたらいいんだ〜?

俺のゲームの知識じゃ全然分からない!

そもそも、俺は『フィリシティ・カラー』の初代を一度しかプレイしてないんだぞ!

『オズワルド』の存在さえ知らなかったのに…!

『トゥー・ラブ』以降のシナリオのネタバレなんて知らねーよ!

い、いや、今ここでヴィンセントとして生きてるのは俺なんだから、俺がケリーとの…このもやもやを解消しないと…。

お嬢様を破滅エンドから救済すると決めた以上、ゲームのシナリオなんざ知ったことか!

俺はケリーともやもやした感じを続けるつもりはねぇ!


「バスケしましょう‼︎」

「「「うわああああああ⁉︎」」」

「わ、わあ〜? ハミュエラ? え? こ、ここ2年の教室だけど…⁉︎」

「道に迷って彷徨ってたら辿り着きましたー! ライナスにいにの声がしたのでここぞとばかりの天の助けでーす! お暇ならバスケしましょうそうしましょーう!」

「バスケかぁ、僕やったことないな〜」


…ふ、普通に会話が続くレオすごい。

う、うあぁ、超ビックリした…!

俺だけでなくエディンとライナス様まで飛び上がってスゲェ叫んだぞ⁉︎

そのくらい気を抜いていた。

だって2年の教室にハミュエラが現れるなんて!

おぉぉ思いもしないだろ、普通!


「やりましょうやりましょう! バスケとても楽しいです! レオハール様と勝負したいでーす!」

「…ル、ルールから教えてくれる?」

「もちのろんでーす! バスケとても楽しいのでレオハール様も楽しいと思いますー! あ! アルトやケリーやルクたんも誘いましょう! 楽しいことはみんなでやるのがいいです!」

「…そうだね…?」


ちら、っと俺たちの方を見るレオ。

俺たちも顔を見合わせる。


「ま、まあ、スポーツなら人数がいてもいいんじゃないか?」

「問題はアルトとケリー君が来るかどうかだろう」

「ルークは誘えば来るでしょうね…」


ルークは立場的にも性格的にも断れないから。

…あと、1年にも専攻授業はある。

午後も教養の授業があるはずだが、うちのケリーは所作そのものは完璧なので休んでも問題はないだろう。

だが、ケリーとバスケか。

これはもやもやを解消するいい機会になるかもしれない!

あいつ運動全般好きだし、俺も得意だし!

ここは共に汗を流し、改めて親睦を深めよう!

あいつと変な距離が出来るのは嫌だ!


「よし、では3時までみんなでバスケしましょう。俺がケリーたちを誘ってきますよ」

「そうか? では俺たちは先にコートに行ってレオハール様にルールのご説明をしていよう」

「俺もバスケはやったことがない」

「なに? そうなのかディリエアス…? 意外だな…?」

「僕もスティーブも乗馬くらいしか外の遊びをしなかったから〜」

「ああ、成る程…?」


確かにスティーブン様が一緒だとあまりアクティブな外の遊びはしないかもな…?

俺とケリーは釣りや駆けっこ、虫取り、木登り、原っぱ滑り…まぁ、思い付く限りの田舎の遊びを網羅してきた。

……うん、それでも普通の貴族のガキがやる遊びじゃねぇな!


「じゃあ今日から毎日やりましょう!」

「毎日はやらないが機会があれば…まぁ、そうだな」

「では先に行ってます! 執事のオニーサマよろしくお願いしまーす!」

「はいはい」





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