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うちのお嬢様が破滅エンドしかない悪役令嬢のようなので俺が救済したいと思います。【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
アミューリア学園二年生編

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人と亜人の今後のこと



「武器か…一応騎士団の方で僕が本気で振るっても壊れない物を作ってもらっていたところなんだけどね」

「あ、一応開発はしていたんですか」

「うん、でも……今のところ予算が嵩むだけかな……」


えへ。

…と、可愛く笑っているがそれって要するに失敗続きって事じゃないか。

壊しまくってるんだな?

可愛く笑って誤魔化してるけどつまりそういう事だな⁉︎

えー…。


「レオハール様、おはようございます」

「おはよう、ローナ」

「少しヴィンセントをお借りしても?」

「え? まあ、構わないけどどうかしたの?」

「ヴィニー、貴方昨日、ヘンリエッタ様にご迷惑をお掛けしたと言っていなかった?」

「うっ…、…は、はい。けれど彼女のメイドに今朝確認したところ本日は体調があまり優れないように見受けられたので休ませるそうで…」

「…まあ…。ではお元気になったら謝罪に行かなければならないわね」

「昨日何かあったんですか?」


自身の席にカバンを置くスティーブン様。

俺はショボーンと頭を下げる。

レオも昨日、例のサバイバル宝探しに参加していないので同様に首を傾げた。

いやあ……あははは…。


「実はなかなかにハードな宝探しだったのでそれなりに汗を掻きまして…。南校舎のポンプ井戸で軽く身体を清めていたところをヘンリエッタ様に見られてしまい…服を着た時には遅く、倒れられてしまいました…」

「…ヘンリエッタ嬢にヴィンセントのあられもない姿を見せてしまったということですか? …な、なんという酷な……」

「あられもないって…上半身だけですよ…!」

「でも、ヴィニー…ヘンリエッタ・リエラフィースは確か婚約者がいなかったよね? …うわあ…それはさぞ刺激が強かったんだろうに…」

「貴方もたまに迂闊なことをするわよね…」

「は、はい。あれは完全に俺に非があります。後日謝罪に行きますので…」


この件にはもう触れないでください。

マジであれは反省してますので。

…どうせシャワー浴びてから帰ろうって話ししてたのに、本当下手こいた。


「まあ、今日はお休みのようだから仕方がありません。その時にはわたくしも同行します。ヘンリエッタ様とは料理専攻でご一緒しているし」

「も、申し訳ありません…」

「料理専攻ですか…。私も今から料理専攻に参加したいです…」

「え? どうしたの、スティーブ」

「昨日、ローナ様と学園の厨房を借りてクッキーを作ったんですけど……すっごく楽しかったんです…!」

「そ、そうなんだ。まあ、スティーブもどんどん料理が上手になってるものね」

「はい! 昨日楽しかったので、今日は自分のお弁当を自分で作ってきてしまいました」

「まあ、スティーブン様もですか? わたくしもです」

「…………ヴィニーの仕事が減っていくね」

「そうなんですよ!」


ねー、っと顔を見合わせて背後にお花を飛ばすお嬢様とスティーブン様は俺の贔屓目抜きで可愛い。

いや、可愛いだろ。

なんだここは、花園か。

いや、楽園か? 天国か? 最果てか?

だがしかし!

お嬢様がご自分でお弁当を作るようになると俺の楽しみ……ではなく仕事がまた一つ減ってしまう‼︎

お嬢様のお弁当作りは俺の楽しみ…じゃなく仕事の一つだというのに!


「ローナの手料理は僕も興味があるな〜。お弁当はなぁに?」

「ハンバーガーです」

「そっかー、じゃあ余裕がある時に僕の分も作って?」

「まあ、わたくしのような者が作ったものをレオハール様かお召し上がりになるなんて……」

「いやいや、お嬢様…レオハール様は散々俺の料理食べてますから」

「貴方はわたくしより料理が上手いでしょう」

「お嬢様だってお上手です!」

「私もローナ様はお料理がお上手だと思いますよ。それにイースト区のことわざに『男は胃袋を掴め!』というものがあるそうです! 『輝夜戦姫』に書いてありました」

「………新作ですか?」

「はい、先月から連載が始まったんです」


……恋愛小説の新作はイースト区が舞台なのか。

なんとなく和物な空気。

イースト区って俺が思ってるより和風な文化でもあるのだろうか?

ありえる…『フィリシティ・カラー』の製作会社は日本だし、曜日や暦も日本と同じ…。

わー、すごい行ってみてー…。

イースト区って米が主食らしいし…あ、この話今度アルトに徹底的に聞かないと。

お嬢様に是非オムライスや丼もの、カレーライス! を、食べて頂きたい!


「おはよう、なにやら盛り上がっているな」

「あ、おはようございます、ライナス様」

「ふぁ…」

「まあ、エディン様…あくびだなんて夜更かしですか?」

「いや、夜遊…………、そうだな、勉強していて寝るのが遅くなった」

「左様ですか」


お嬢様とスティーブン様の冷めた目線を物ともしないクズ。

いや、絶好調なのは良いことだけどな…。

クラス内のご令嬢たちからもシラー…と冷たい視線が送られている。

さすがに1年同じクラスにいると夢も覚めるのだろう。

入学当初はそれでもエディンに頬を染めていた令嬢もいたものだか…。

彼女たちが現実を見るようになったのは喜ばしい事だな。

……それでもたまにちらほら「私もエディン様に遊ばれたーい」という声がちらほら聞こえるんだが、信者か何かなの?

まだ何人かのクラスメイトの令嬢が夢の中に取り残されていると思うと複雑だ。


「そうだ、剣の話だけど」

「うっ! も、もうレオハール様のお耳に…⁉︎」

「え?」

「あ、えーと…昨日宝探しゲーム中に俺とライナス様は木剣を壊しまして…」

「え、また?」


そう、また。

なので今日はライナス様とケルーシャ先生に謝罪に行かねば…。

あと、昨日不完全燃焼だったので再試合を鉄剣でしたい。


「ハミュエラが持ってきたのは木剣でして…つい力が入り過ぎてしまい…」

「俺も人のことは言えないが、お前ら何本目だよ…」

「面目無い…」

「まあ、木剣は“お遊び用”だからいいんじゃない? …僕なんて鍛治師がわざわざ鍛えた鉄剣何十本も壊してるし……」

「な、何十本も…⁉︎」


上には上がいたー…!


「そう、悩みの種なんだよね…。僕が使っても壊れない剣を作ってもらっているんだけど…材料と材料費が嵩むばかりだよ…。かと言ってあんな脆い剣では戦争に行っても戦えないだろうし」

「な、成る程『代理戦争』用の武器ですか」

「確かに“お前が扱える剣”は必要だな。というか、急務じゃないのか?」

「うん。国中の鍛治師に注文しているんだけど…まだ出来てないんだよ」

「ノース区の鍛治師の物でもご満足頂けないのですか?」

「ごめん、多分20本くらい壊した……」

「………な、なんと…」


この時点で俺が壊した木剣と鉄剣の数を上回っとる…。


「あ、その件で一つご提案が。レオハール様、お耳を」

「なになに?」


残念ながらクレイ達のことを大声で、教室の中で言うわけにはいかない。

まだまだ亜人族のことは貴族達に受け入れられたわけではないからな。

戦争で勝てば、彼らの地位は上がるだろう。

そしてもし『レオハールが使っても壊れない剣』を亜人達が作れたなら、彼らの評価も変わるはずだ。

人間にはない技術。

クレイは二本の剣を持っていたが、レオと同じ力を振るってもあちらは壊れなかった。

決定的に技術力の差が出ている。


「成る程!」

「え? なんですか? なんなんだ? ヴィンセント」

「ごにょごにょ」

「成る程!」

「お前らなんなの…」


レオの次にライナス様にも耳打ちした。

反応は同じ。


「近いうちお城に招いて聞いてみよう」

「え⁉︎ ま、招くんですか⁉︎」


だがレオの言い出した事は思いもよらなかった。

亜人を招く⁉︎

しかも城に⁉︎

何故に⁉︎


「その方が周知されるでしょ。あ、勿論出来るか出来ないかは先に聞いておくけどね」


と小声で付け足すレオ。

…成る程…城にわざわざ呼び出して『戦争でレオハール王子が使う剣は亜人が作りますよー!』と大々的に宣伝するのか…。

なんとなくクレイたちは嫌がりそうな方法だが、貴族連中や城下町の人間たちに亜人の技術力を知らしめる方法としてはいいのかも。

その上、今後亜人が堂々と街の中をうろついても『王子の武器を作ってる』と銘打てば街の人間たちも差別しにくいはず。

なにしろ『王命』で『戦争勝利の為』に働いてるんだもんな。

目に見えた功績があれば、人間族は亜人を認めざるを得なくなる。

そしてそれがあれば、亜人はウェンディール王国の民に受け入れられるようになるだろう。


「まあ、初めは目立つだろうけど…。…でもクレイカッコいいしね」

「ん? …うん、まあ…。…うん?」


…そこは「亜人の長らしく堂々としてる」とかではないのか。

いや、カッコいいのは認めるさ。

追加とはいえメイン攻略キャラの1人だぞ。

そりゃイケメンだよ、アイツ。

あと耳と尻尾が可愛い。

…あれ? やっぱカッコいいから大丈夫なんだっけ?




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