戦巫女たる姿
「…………エメ、落ち着いて。大丈夫」
『真凛……?』
「あなたの力なら助けられる。大丈夫。わたしは、エメのこと信じてるから」
『!』
「わたしたちの力は防御壁だけじゃない。それに、わたしは決めたの。ヴィンセントさんとハッピーエンドを目指すって。誰も死なない、誰も破滅しないエンディングを迎えるんだ! なにも言えない、なにもできないわたしは、もう卒業するの! わたしはわたしの望みを大声で言うよ! エメ! 二人の妖精族を癒して!」
『っ! 了解なのだわ!』
光が——溢れる。
洪水のように、真凛様とエメリエラから。
「……真凛様……」
ヒロインなんだな、と、頭の片隅で自分の声が呟く。
あの人は、本当に正真正銘この世界の主人公だ。
いや、今この瞬間に主人公になったと言うべきか。
エメリエラの髪が、黒から白へ。
翼から黄金の光が放たれ、血を流して倒れる妖精と、特攻続ける妖精を捕らえる。
俺たちは多分、奇跡を目撃していると思う。
「あ、あれ? ぼくは……一体なにを……?」
「ここは? あたち、ベッドで寝てたはずじゃ……!?」
「!」
『蘇ったのだわ!』
魂がゴルゴダに半分喰われたという妖精たちが、ゆっくり光の渦の中から起き上がる。
次の瞬間、凄まじい怒りを含んだ咆哮が戦場に響き渡った。
ゴルゴダだ。
『おのれおのれおのれ! 妖精族よ! 命令だ! あの女を殺し、魔宝石を奪え!』
虚ろな顔の妖精が三体、現れた。
アニムまで!
『なりふり構わなくなったのだわ! 本性を完全に表したのだわ!』
「うん、でも大丈夫! 今のわたしたちなら、助けられるよ!」
『ええ! 行くのだわ!』
「『リ・ステータス・ヒール!』」
あの広い戦地が覆われるほどの光の渦。
半分魂を喰われ、一撃でも攻撃を受ければ死んでしまうまで弱められた妖精たちが、見る見る回復していく。
目に光が戻り「え、ここどこ?」「なにが起こった?」「め、女神様ー!」……あ、最後のはアニムだな。
ああ、本当に……。
「巫女……すごい」
「せ、先代戦巫女が、プリシラという女神になったと言われるのも——これは……」
「え、ええ……頷けますね」
俺も、雷蓮が先代戦巫女……クレースだけは生かして帰そうとしたのがよくわかる。
あれは希望だ。
ゴルゴダの理不尽を覆して、さらに多くの種族との架け橋となる——!
『ゴルゴダ、お前には聞こえないの? 戦争に勝つよりも、支配種族になるよりも、戦争に赴いた戦士たちの無事を祈る人々の声が! 真凛やレオの言う通り、この世界にもう大陸支配権争奪戦争なんて必要ないのだわ!』
「わたしたちは誰も傷つけさせないし、死なせない! もう、誰も! 戦争はこれで終わりです!」
揃った五人の妖精族の戦士たちは、自分たちがなにをされてどうなったのかを理解したらしい。
跪いて「女神様!」「僕たちの負けです!」と泣いて叫ぶ……だけでなくなんか縋り出した。
女子高生の生脚にしがみつく妖精どもは、俺が殺しても差し支えないのではないだろうか?
『さあ、勝者は決まったぞ』
『そうですね』
鈴緒丸の声に反応したのは女神ナターリアの声だった。
白い渦が控え室全体を覆い、気がつくと俺たちは真凛様の後ろに佇んでいる。
空間を移動したのだろう。
助かる。
あのままあの空間に閉じ込められたら、ゴルゴダの思う壺だったかもしれない。
あと、真凛様の生脚にしがみつく妖精族どもをペイペイっと剥ぎ取って捨てられる!
てめぇら俺ですらまだ触らせていただいたことのない真凛様の生脚に触れるとは何事だゴルァ!
JKの生脚にしがみつくとか許されると思ってんのか!
「真凛! よくやったわ!」
「おう! 本当に誰も殺さずに優勝するとぁ、やるじゃねぇか!」
さらに、後ろの方には他の種族の戦士たち。
クレヴェリンデ率いる人魚族と、ガイ率いる獣人族。
そして、エルフ族は複雑そうだが敗者の自覚も真凛様の見せた奇跡も、ゴルゴダの卑劣な罠もすべて見ていたからだろう、なにも語ることはないとばかりに空を睨んでいる。
さあ、舞台は整った。
「主催の武神ゴルゴダよ、僕たちは勝ち抜いた。その姿を現し、『審判の武神』の名を汚した卑劣極まりないこれまでの行動に対する説明を行ってもらおう。僕たちはあなたの不公平で理不尽な要求を完遂した。その上で勝利したのだ。僕たちは知る権利があるし、あなたは説明する義務がある! これ以上武神の名を穢すというのなら、他の天神族にもこの非を問おう!」
レオが上空に向けて叫ぶ。
ククククク……ようやくこの時がやってきた。
俺たちが散々「さすがに不公平ですよ」って言ってきたのを、他の武神にチクるのだ。
武神族はエメリエラ強奪に関してはグルだが、ゴルゴダが戦士の魂を喰って強くなることに関しては絶許の立場。
なぜなら武神は自分たちで戦い、高め合うのがセオリーだからである。
ゴルゴダのやってることは到底許されないズルなのだ。
その真偽を女神族が確認した今、舞台は完全に整った。
終わりだゴルゴダ。
お前の味方は誰もいない!







