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ゴルゴダは馬鹿

 

 翌日、俺はなぜかエディンに羽交い締めにされていた。

 いや、マジに解せんね。

 なにこれ?


「では、行ってきます!」

「いってらっしゃい。気を抜かないでね。巫女に傷一つでもつくと、多分ヴィニーが暴走するから」

「はい! 大丈夫です! 怪我してもすぐに治すので!」

「うーん、そういうことじゃないんだけど〜」


 真凛様に怪我?

 殺す!!


「ヴィニー、これはお前の愛が試されているぞ」

「!?」

「巫女殿への信頼が揺るがないものであれば、笑顔で送り出せるもんな?」

「!?」


 人を羽交い締めにしながらケリーの言葉に乗っかってくるエディンを睨むが、そういう言い方をされると暴れそうな俺が真凛様を信じていないみたいじゃねぇか!

 いや、信じてはいるんだ、本当に!

 けど、それとこれとは別っていうか!

 ……だが、これが愛の試練とでもいうのか?

 真凛様を信じて送り出すことが。

 信じてるんだって言っても、行動で示さなければ俺が真凛様を信じてないように見えるってことだもんな。

 ぐぬぬぬぬぬ!


「わ、わかった。……真凛様、ご無事をお祈りしております」

「はい! ……見ててくださいね、わたし、頑張りますから」

「っ……」


 悔しいな。

 そんな言い方をされたら、本当にただ見ていることしかできないじゃないか。


「巫女はヴィニーにかっこいいところを見せたいんだね」

「はい!」

「ぐっ!」


 レオの指摘にものすごく身に覚えがあるー!

 真凛様も肯定すんのー!?

 んもおおおおぉっ!

 こうなったら全力で応援するしかないじゃねえかーーー!


「さて、相手は妖精族——の、はずだが」


 控え室の空間に着くなり、ケリーが椅子を持ってきて背もたれを前に座り目下の戦地を見下ろす。

 発言が早くも意味深なんだが。

 ああ、真凛様、後ろ姿も愛らしい!


「どういう意味だ?」


 俺と同じことを思ったエディンが眉を寄せてケリーに近づく。

 俺とレオも窓枠の近くに位置を決めた。

 そして次はやはりケリーの発言だろう。

 視線がケリーに集まる。


「ここまでトントン拍子にコケにされた武神ゴルゴダが、今後相手になにもしないとは思えない。昨夜俺たちに釘を刺されついでに馬鹿にされて、腹に据えかねているはずだ」

「あ……ああ」


 かなり小馬鹿にはしたな?

 ん?

 じゃあ俺たちに手を出さなくなる代わりに、妖精族や人魚族になにかするっていうのか?


『ほーん、なるほど。前から思っておったが主人の主人は頭がよいな』

「だろう!? うちのケリーはとってもいい子なんだぞ!」

「おいやめろその言い方」


 なんで嫌がるんだ!

 褒めたのに!

 鈴緒丸に褒められてるのに!


「改めてお前本当末恐ろしいわ。スティーブンとどっちがヤバいか悩ましい奴がこの世にいるとはな。敵じゃなくて心底良かったと思う」

「光栄ですね。一度敵になってましたけど。義姉様の件で」

「……そうだったな」


 と、なんか俺にわからない話になってる気配のエディンとケリー。

 いやいや、これ俺だけわかってない?

 嘘だろ?

 よし、ちゃんと分析してみるとしよう。

 ケリーの発言から考えて、昨日モモルに俺たちがゴルゴダを馬鹿にしているのをほぼ直接的に伝えている。

 それが今回の“相手”——つまり妖精族と人魚族にゴルゴダがなんかする的な話になってるわけだ。


「!」


 ああ、なるほど、そういうことか。

 戦争も三日目。

 とはいえ、本来ならばこの戦争は二ヶ月かけて行われるものだった。

 その予定を、ゴルゴダは俺たち——というかエメリエラを手に入れるために四日に超短縮。

 そして初日の獣人族との戦いで、そのルール変更は他の種族も知ることとなった。

 それだけでも舌打ちものだが、二日目——昨日のエルフ族との戦いもレオが圧勝。

 ゴルゴダを含めて武神族はおそらく焦っている。

 そんな中、追加のルール変更。

 今日の戦い、先鋒の人物を指定。

 この糞食らえな指示を、俺たちはすでに予見していた。

 なんなら「こいつマジにやったよ」と笑って小馬鹿にもしてやった。

 誇り高い武神族様が、それにムカっ腹立てないはずもない。

 まあ、こっちはもうとっくにムカっ腹立ってんだけどな。

 そんな感じに俺たちに行動を読まれ、その通りにやらかして馬鹿にされたゴルゴダが次になにをするかといえば、()()()()()()()()()()()

 俺たちに手が出せない状態になった以上、それは必然だろう。

 つまり、他の対戦種族。

 残っているのは妖精族と人魚族。

 だからケリーは大人しく妖精族が出てくるのかを案じている。


『ほほう……』


 鈴緒丸が目を細めて笑う。

 俺もこれにはうっかり笑いそうになった。

 真凛様の前に現れたのはクレヴェリンデ。

 人魚族の国、『シェリンディーナ女王国』の女王。

 巨大な三叉の槍を携えて、よもや女王であり大将として出てくると思っていた彼女が先鋒で現れるとは——!


「やはりか」


 ゴルゴダ、残念ながらうちのケリーはこの事態すら想定内。

 昨夜真凛様にしっかり()()()()()想定して対処法を授けている。

 でもまさかマジでやると思わなかったし、クレヴェリンデが自分から現れるとは思わなかった。



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