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エルフの領域【中編】

 

『でもでも、ウェンディール王国の民に“愛の女神”として定着してきてるのだわ! おかげでプリシラお姉様くらいにはなってるのだわ! 多分!』


 多分かい。


『人間族の味方をするのは当たり前なのだわ! エメを見つけて魔宝石という居場所を与えてくれたり、エメリエラという名前もレオからもらったのだわ! エメはとても弱くて消えそうだったのだわ。それを助けてくれたし、エメを人間族の女神の一人として信仰してくれてるのだわ。そんなの手を貸すに決まってるのだわ。なにを当たり前のことを言ってるのだわ?』


 こちらも矢継ぎ早。

 というか早口でウキウキ話している。

 多分今までレオや真凛様としか話せなかったから、他の人と話すのが楽しくて仕方ないのだろう。

 本当に、まるで見た目通りの幼女だな。


「う……」


 そしてそんなマシンガンアンサーにマーケイルがたじろいでいる。

 まあ、あれはたじろぐわな。わかる。

 でもそもそも質問も多かったからしゃーない。


「い、いや! だとしても不公平ではないか!」

『人間族だけ四連戦の勝ち抜き戦というルール変更を強要されておるのに、そんな我らに不公平を語って聞かせるつもりか? お主』

「う……」


 俺の頭の上で鈴緒丸が答える。

 なぜ俺の頭の上に載っている? 重くないけど。

 別に体重的なものは感じないけれども。


「そ、それとこれとは、話が別ではないか。いや、むしろ今日の戦いぶりを見て、人間族だけ女神の協力を得ていてやはり不公平だ。ゴルゴダ様は、人間族の卑怯な戦略を見抜き、そのルール変更を申しつけたのではないのか!?」


 想像力豊かなやつだな……。

 だが、実際ほぼ無尽蔵な魔力供給で魔法使い放題なのは、確かにチートかもしれん。

 俺の鈴緒丸もあのチート野郎——鈴流木雷蓮——の技や戦術を俺に教えてくれているし。

 ……だが。


「女神エメリエラの力も、俺の鈴緒丸の力も、人間族の歴史の中で培われたもの。そして、彼らが進んで協力してくれるから成立しているものだ。獣人族の王子ガイ・マスルールは、それら含めて俺たち“人間族の力”と認めた上で、正々堂々と戦ってくれた。アンタになに言われたって女神エメリエラも鈴緒丸も、俺たち人間族の“力”だ。認めたくないならそれでもいいけど、器が知れるな」

「!? な、なん、だ、と……」


 だってそうじゃん?

 ガイのあの堂々たる姿よ。

 俺らの立場になってゴルゴダにも抗議してくれるし、真凛様との恋愛ルートは死んでも許さんが、あれはいい男だ。

 レオやクレイのように人をしっかり導ける者の器ってやつだ。

 に、比べてマーケイル。

 お前はなにがなんでも俺たちが不正していると言いたいような口ぶりだな?

 おおん? 喧嘩なら買うぞ?

 明日筋肉痛で死にそうになるかもしれないが、筋肉痛の前兆がその日のうちに来る若さを舐めるなよ。

 死ぬ気でお前らエルフ族も刀の錆にしてやろうか。


「わ、我らエルフをバカにするつもりか!? 現支配者は我らエルフ族だぞ! 我らエルフ族が貴様ら人間族の自治を認めた恩を忘れて、なんと無礼な……!」

『その支配権限は一昨日終わっておるではないか。そして今はその支配権限を奪い合う戦争の真っ只中だぞ。お主本当に王族か? 五百年前の王子の方がまだまともだったぞ。……まあ、エルフ族も雷蓮に半殺しにされて一人生きながらえた程度だったが』

「っ!」


 勝者が決まったあと、雷蓮とクレースにけしかけられた他種族。

 そのエルフの生き残りね。


『前回の戦争は今回のように勝ち抜き戦にされた。そして雷蓮とクレース以外、ゴルゴダが勝ち抜き戦で殺し、最後は生き残った人数で勝敗を決された。この理不尽が主にわかるか? 余はゴルゴダを許さんぞ。あれが武神などと認めてなるものか』


 頭の上から冷たい空気。

 確かに資料を見る限りでも、自分で体験してみたから余計に——鈴流木雷蓮という男一人いれば前回の戦争、人間族が優勝していても不思議はなかった。

 だが、ゴルゴダの度重なるルール変更で仲間三人が死んで、人間族は敗者になったのだ。

 その上生き延びたクレースも当時生まれたばかりのエメリエラ——に、なる前のかけらの状態——を狙われて、雷蓮がキレた。

 今ならなんとなくわかる。

 鈴流木雷蓮は主人を守れないままこの世界に来て、絶望感の中で「死んでもいい」……いや「死にたい」と思って死に場所を求めてこの戦争に参加したんだろう。

 なのに、度重なる卑劣なルール変更、意味もわからないまま狙われるクレース……ブチギレた。

 鈴緒丸を通して強くその怒りを感じる。

 理不尽すぎて腹が立つのだ。


『まあ、そんなわけで覚悟しておけよ新たな我が主人よ。ゴルゴダはまず先に必ず“三人”殺そうとしてくるぞ。そのための勝ち抜き戦よ』

「その辺心配してねーな。今回は前回の参加者と違って、みんな強いよ」

『まあ、それは認めるが……それでも必ず卑怯なルール変更をしてくる。ゴルゴダはそういう卑怯者だ。ま! それに便乗して! か弱き人の娘を! 夜な夜な攫おうとこそこそする武を司る神と思えんやり方をする者もおるようだから!? この世界の武神と名のつくものはみんなそういう卑劣極まりない生態なのかもしれんけどーーーー!』


 ……と、誰かに聞こえるように叫ぶ鈴緒丸。

 もしかしなくてもお前、この世界の武神大嫌い?


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