表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

306/342

初陣

 

 転移陣に乗ると、俺一人だけが闘技場の上にいた。

 真凛様たちは——と探すと、地上六メートルくらいのところに横長の窓ガラスが浮かんでいる。

 口をパクパクさせて手を振る真凛様。

 なるほど、他のメンバーはあそこから先鋒の戦いを見学できるというわけか。

 周りを見回すが、他の種族は来ていない。

 戦いを見られて情報共有されては堪らないが、この場にいなくても宿の方で映像が見られるとか、ではないよな?

 まあ、どちらにしても俺一人で獣人族五人を倒せば問題ない。


「ところで鈴緒丸、お前はなんでずっと浮いてるんだ? まさか戦ってる間ずっとそこに浮いてる気じゃないよな? 気が散るんだけど」

『物理的な武、のみである鈴流木流は体が覚えておるだろうが、魔法を交えた鈴流()流はまだすべて把握しておらぬだろう? 余が教えてやる。獣人は魔法に弱いからな、雷蓮の編み出した固有技をいくつか授けよう』

「!」

『雷蓮の固有技、紫電刀』


 よく鳴るぞ、と笑われる。

 頭の中に流れ込んでくるイメージ。

 使い方、魔力の量。

 あ、これマジ致死率高いやつだ。


「ガハハハハハハハ! 運がなさすぎるな人間!」

「!」


 どーん、と音を立てて降りてきたのはサイの獣人。

 まあ、いきなりガイには当たらんよな。

 しかし……なにあれ恐竜?

 皮膚硬そう。


「来て早々に俺たち獣人族の第一戦目! しかも勝ち抜き戦にルール変更とは! 哀れすぎて笑いが止まらん! さあ、開始の合図を! 貴様の腹に俺様の角を突き刺してやるぜ!」


 獣人ってみんなこんな感じなのだろうか。

 鳥の獣人と似たようなこと言ってる。

 だが、紫電刀の試し斬りにはちょうど良さそうなものがついているな。


『第一回戦、獣人族対人間族』


 空の雲が動く。

 そうして聞こえてきた声。

 耳障りなサイの獣人、お前は本当に運がいいよ。

 ゴルゴダの栄養にさせないために、俺たちは誰一人殺すつもりはない。

 最終的に戦うかもしれないゴルゴダを、強化するわけにはいかないからな。


『始め!』


 不愉快なゴルゴダの声にて開始された戦い。

 奴にとってこの戦争で犠牲となる戦士はみな、自分が創世神へ至るための栄養。

 ゴルゴダのその陰謀について、他の武神や女神たちにはアミューリアが伝えてくれると思うが、果たして信じて動いてくれるだろうか?

 ヘンリエッタ嬢の話だと微妙そうなんだよな。

 やはり俺たちでゴルゴダを倒すしかないかもしれん。


「行くぜぇ!」

「鈴流()流 地の組 一閃」


 雷蓮が使っていた雷の身体強化魔法に加え、今し方鈴緒丸に教わった雷の“武器強化魔法”を発動させる。

 なるほど、なにもかもが遅い。


「は?」


 ジャンプしてサイの獣人の背後に回り込む。

 斬ったのはご自慢の角。

 サイの角ってまた生えてくんのかな?

 わからないが、心を折って負けを認めてもらえるならありがたい。


「お、俺様の……俺様の角が……俺様の……ふぅ」


 どさ、と倒れるサイ。

 まさかの気絶。

 空を見上げると怒りの気配。

 そして、見えないなにかが呟いた。


『ライレン・スズルギ……』


 女の声だ。

 あの窓枠の中にいる真凛様の声ではないし、あの窓からの音はすべて遮断されているようだから真凛様ではない。

 では誰だろう。

 鈴流木雷蓮を知る者。

 女神族か、当時を知る長寿種か。

 少なくとも真凛様の声は遮断されてて、他の女神や他種族の声が聞こえるってことはまあ、つまり()()()()()ってことだろう。

 チッ、こっちが仲間とコミニュケーションを取るのは邪魔するくせに、こっちの情報は他の種族に流してんのかよ。

 まさかそれを『公平のため』とは言わねぇよな?

 ゴルゴダマジでクソじゃん。


「…………」


 で、しばらく待ってみたがなにも変わらない。

 空を睨んでみるが反応もない。

 こちらからアクションを起こさねば『勝ち』を認めることもしないのだろうか。


『やれやれ仕方のない』

「鈴緒丸……」


 どうやら俺と同じことを考えたのか、鈴緒丸が刀から現れる。

 聖域の中でなら鈴緒丸の姿は俺以外にも見えるというから、盗み見ている他種族やゴルゴダにも見えるし声も聞こえるのだろうか。


『宣言しておけ、主人殿。ゴルゴダは神の風上にもおけぬ神。他の種族にもそれを思い知らせておくべきだ。あんなモノ盲目的に信仰する必要はないのだから』

「…………。そうだな」


 あくまで戦う者は俺。

 だから俺が言え、ってことか。

 では遠慮なく、と空へ刀を向ける。


「ゴルゴダ、俺は相手をお前に食わす気はないぞ。この対戦場の上で死んだ者の魂が、お前に吸収されて糧となる話は女神アミューリアに聞いている。気絶させているのだから、戦闘不能と見做し俺の勝ちにしてもらう。俺たち人間族に『四日連続の勝ち抜き戦』を不公平にも言い渡したのだから、そのくらいの融通は利かせてもらってもいいよなぁ?」


 空気がわずかに揺れた。

 それはゴルゴダの強烈な怒りと、動揺。

 女神族か他の武神族か、はたまた他種族の動揺なのかまではわからないが。


『…………よかろう』


 そこそこ長い時間悩んだようではあったが確約いただきました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
コミカライズ「マンガUP」で連載中!
『うちのお嬢様が破滅エンドしかない悪役令嬢のようなので俺が救済したいと思います。』
321811000629.jpg
詳しくはこちら カドカワBOOKS様ホームページ

『追放悪役令嬢の旦那様』
aubh3lgrafru8nlejtjv4uphjx9k_7i1_c0_hs_4cx8.jpg
ツギクルバナー

書籍版、発売中です!
詳しくはツギクルホームページへ
1巻
2巻
3巻
4巻
5巻
6巻
7巻
8巻
9巻
マンガアプリ「マンガPark」で先読み連載中!
コミック1巻〜7も大好評発売中です!


1hxm3gog5t1ebzv5l4dm7li2543t_tvn_6a_8w_1122.jpg
『巻き込まれ召喚された身でうっかり王子様に蹴りを入れたら、溺愛花嫁として迎えられることになりました』
各電子書籍サイトで配信開始!
― 新着の感想 ―
[一言] ゴルゴダが、糞過ぎで茶番はいいからさっさと神殺ししてほしいですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ