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ルール変更

 

「それじゃあ皆さん、明日から頑張りましょう! おやすみなさい!」

「「「「おやすみなさい」」」」


 夕飯後、後片づけまで手伝ってくださった真凛様。

 部屋に戻る直前、きちんと俺たちに対して頭まで下げて挨拶していく。

 天使かな?


「皆様にゴルゴダ様よりお知らせがございます」

「!」


 真凛様が部屋に戻られたばかりだというのに、モモルが音もなく現れた。

 用件はゴルゴダからのお知らせ。

 なんか嫌な予感がする。

 武神族は人間種を早々に敗退させたくて仕方ないと聞く。

 自分たちの失態を隠すために、真凛様と共にいる女神エメリエラを取り戻さんとして居るのだ。

 ヘンリエッタ嬢が女神アミューリアに聞いた話だと、エメリエラは創世神ティターニアのかけら。

 元々の管理者は武神族だったものを、奴らは酔ってそれを『ウェンディール王国』に落っことし、魔宝石を得てエメリエラが生まれてしまった。

 奴らはどうあっても人間の勝利を許さない。

 自分たちの失態が露見するのを防ぐため、エメリエラを手に入れた形となった人間種を滅ぼしたいのだそうだ。

 それを人間族が崇拝する女神アミューリアと女神ティライアスが、「理不尽すぎると」抗議してやめさせた。

 なので手出しができるこの戦争で、エメリエラを回収するつもりなのだ。

 俺たちを、皆殺しにして。

 まあ表向きは戦争なので、最弱種族は放っておけば勝手に敗北すると思われてるっぽいが。


「なんだろう? 巫女を呼んでくる?」

「とりあえず我々だけで聞いて、明日の朝真凛様にお伝えすれば良いのでは?」

「それもそうか。ではモモル、武神ゴルゴダ様はなんと?」


 レオが椅子に座ったまま向き直り、モモルに促す。

 モモルは頭を下げて「ゴルゴダ様よりお知らせです」と改めて告げる。


「人間種——『ウェンディール』の者たちは、明日獣人族と闘い、翌日はエルフ族と闘い、翌々日妖精族と闘い、その次の日に人魚族と戦うことを命じる。また、ルールを変更し対戦方式は勝ち抜き戦とする。…………とのことでございます」


 言い終えると頭を下げるモモル。

 俺たちは口を開ける暇もない。


「ル、ルール変更……」


 ヘンリエッタ嬢がもっとも警戒すべきと言っていた案件。

 まさか、本当に……。

 しかも勝ち抜き戦ということは、五対五で戦う以上に危険極まりない。

 スティーブン様とアルト、ラスティにそうなった場合の戦略は授かっているが……本当に使うことになるとは。


「モモル、君に言ってよいものかわからないが——それはいささか人間手に不利すぎるのではないかな? いかに武神といえど、主催神であるのなら公平さは必要ではない?」


 やんわりと笑顔を崩さぬまま、しかししっかり抗議するレオ。

 当然だ。

 四日連戦を強いるなんて、公平性のかけらもない。

 俺たちは軟弱な人間族だぞ、ハンデがあってもいいくらいだろう!


「申し訳ありません。わたくしには、武神ゴルゴダ様よりの言を、皆様にお伝えするのみでございまして」

「まあ、そうだよね。では、明日、直にお伝えすることとしようか」

「残念ながら、開戦宣言後ですとゴルゴダ様は戦争最終日にしかお姿を現されないかと」

「へえ? では、このような不公平なルール変更をお決めになり、後は知らんぷり?」

「わたくしにゴルゴダ様へ皆様の言をお預かりする任は仰せつかっておりません」


 思わずみんなで顔を見合わせた。

 おいおい、まじかよ。

 ここまでクソ野郎だとは思わなかったぜ。


「つまり、四連戦すべて勝てばよいと?」

「それが最短かと」


 終わったあとじゃねーか。

 いやー、さすが『難易度鬼』。クソゲーだな。


「そう、わかった。では、僕たちは明日に備えて休むとしよう」

「おやすみなさいませ」


 モモルは頭を下げて去っていく。

 その場の誰も口は開かなかったが、内心腹は立っていた。

 だが、なにもすべてがゲーム通りにいくものではない。

 そんなのとっくに知っている。

 それに、だ。


「逆に考えると四、五日でお嬢様のもとへ帰れるってことですね!」

「なるほど、じゃあサクッと倒してサクッと帰ろう!」

「一ヶ月二ヶ月マーシャに会えないのは退屈だからな、そう考えると早く終わるのはいいかもしれん」

「ヴィニーのくせに冴えてんじゃん。獣人族は魔法に弱いと言いますし、俺が——」

「いや、ケリーは温存だ。スティーブの作戦通り獣人戦は僕が出よう」


 にっこりと微笑むレオ。

 ふむ、では決まりだな。


「ヴィニーは巫女に連絡をしておいてほしい。本番となる明日の朝聞くより、今夜聞いておいた方がいい」

「でも眠れなくなりません?」

「…………じゃあやっぱり明日の朝びっくりさせる?」

「う、うーん」


 真凛様にはしっかり睡眠をとってほしい。

 先程も言ったが、真凛様が要なのだ。

 緊張で眠れなくなるかもしれないが、心の準備をしてもらった方がいいだろう。


「わかりました、俺がお部屋に行って伝えておきます」

「うん、その方がいい。よろしくね」


 というわけで解散。

 俺は真凛様の部屋に行き、扉をノックする。

 先程戻ったばかりだから、まだ起きていると思うのだが——。


「真凛様、起きてらっしゃいますか? ヴィンセントです」


 あなたのヴィンセントですよ、とか乙女ゲームっぽいセリフを一瞬言おうか悩んだが、乙女ゲームっぽいのか? これ?

『フィリシティ・カラー』、俺の生前ですら五年前のゲームだしな。

 うん、言わないのが正解だろ。


「真凛様、真凛様〜」


 何度も叩き、声がけするが反応なし。

 ……寝たのか。

 では起こすのは忍びない。


「おやすみなさいませ」


 また明日。

 扉の前で頭を下げて自室に戻る。

 それでもここは乙女ゲームのモデルの世界だと、思い知るのはまた明日。


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