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病気で良い、いや、良くない?


 というわけでお嬢様に直談判する事にした。


「お嬢様……」


 翌日の朝。

 俺はいつも以上に早起きして準備を整え、女子寮の前まで来て、お嬢様が出てきたらそっとメイド服をお見せした。

 察したお嬢様の表情が無表情から零度に変わる。

 見送りのマーシャと、コレを初めて見るメグが固まった。


「ダメよ」

「巫女様とお茶会をなさるとお聞きしました……女子寮で……!」

「…………。貴方のそれはもう病気なのではなくて? はあ、仕方がないわね……学園のガーデンテラスをお借りしましょう。言い出したのは貴方なのだから、手続きは貴方が全部やってね」

「かしこまりましたぁ!」

「…………うん、義兄さんのそれはもう病気だべさ」

「うん、間違いないわ」


 ハッハー!

 褒め言葉だぜー!




 まあ、そんなわけでガーデンテラスの一角で一番早く借りられる日を問い合わせて、押さえた。

 場所は確保。

 今度の木曜日の放課後だな〜。

 つまり来週……それまでにお茶とお菓子と軽食のメニュー、飾り付けとお嬢様たちのドレス、招待状を準備して……はぁ〜〜……忙しい忙しい♪


「何あれどうしたの」

「きもいな」

「今朝から満面の笑みですね……」

「ヴィニー、場所は決まったの?」

「はい! お嬢様! 来週の木曜日午後三時からお茶会が開催可能です! ので、時間はズレますが四時から開催という事で招待状をお作りしました!」

「え……巫女様にお茶会のマナーやルールを知って頂くだけなのだから、別に招待状までは……いえ、あれば良いとは思うけれど……」

「そう仰るかと思ってそこまで質の高い紙でご用意しておりません」

「…………そう」


 あれ?

 反応が微妙!


「お茶会?」

「はい、巫女様にこの世界のお茶会の作法などを学んで頂こうと思いまして。まあ、マーシャにも、なのですが」


 度々お茶会のマナーの練習はお嬢様がしていたようだが、マーシャもまだまだ。

 どうやら早速、一年生クラスで招待が殺到しているそうだ。

 まあ、一応あれでも血筋が王家なので貴族令嬢、そして令息たちも目の色変えて取り入ろうとしている。

 持ち前の鈍さでスルーしているようだが。


「そのお茶会には私たちも招待頂けるんですか?」

「そうですわね、スティーブン様は来られますか? ヘンリエッタ様がなぜか強めに『女子会』と仰っておられたので、レオハール様やエディン様やライナス様にはご遠慮頂く事になりそうなのですが……それでも構わなければ……」

「え? 私は良いんですか?」

「はい?」


 首を傾げるお嬢様。

 スティーブン様の固まった笑顔。

 そして、眉を寄せて複雑そうな顔をしている幼馴染二人。

 ライナス様が突然立ち上がり、スティーブン様の肩を叩く。


「俺は構わんぞ! 楽しんでくると良い!」

「ライナス様……!」


 俺は突っ込まないぞ。


「じょ、女子限定ならヴィニーはダメなんじゃないの?」

「俺は給仕です!」

「何なのその全力の主張と笑顔……ちょっと怖いよ?」

「散々我慢していたんだから! 当然だろう!」

「給仕をか?」

「お嬢様へのご奉仕をだ!」

「いつも通りヤバイな貴様の執事」

「お褒め頂き光栄ですわ、エディン様」


 お嬢様へのご奉仕!

 俺の生き甲斐!

 お嬢様の為に働けているというこの実感!

 幸せ以外の何でもないぜ!


「それじゃあ来週の木曜は魔法の訓練はお休みかな?」

「そうなりますわね。申し訳ございません、レオハール様」

「いや、そろそろ巫女にも休みは必要だと思っていたし構わないよ。あと出来れば舞踏会のマナーなんかも教えてあげてくれるかな? 今月末、マーシャの誕生日パーティーを城で行う事になったし」

「そうですわね……巫女様には少し大変かもしれませんが……。一日頂いてよろしいか、お伺いしてみますわ」

「では! リース家別邸のダンスホールの準備もお任せください!」

「…………え、ええ……でも、巫女様のご予定を確認してからよ?」

「分かりました!」


 という事はこちらも久しぶりにお嬢様のドレスの準備が出来るという事だな!

 新作の春色パステルカラーのドレスとか、靴とか装飾品とか!

 本当は『王誕祭』の時用に予備含め五着ほど新調していたんだが、それのどれかを着て頂いて……巫女殿は先日買ったやつがあるし、マーシャは陛下が贈った未着のドレスがまだあ……る、し……。


「…………」

「え、突然の無表情……ど、どうしたの、ヴィニー?」

「……いえ、マーシャのドレスがまだたくさんあるな、と思いまして……」

「は? それの何がいけないんだ?」


 ライナス様はマーシャのドレスの事知らないんだっけ?

 俺が死んだような目をしているからスティーブン様とエディンは察したのだろう。


「陛下の贈ったもの、ですか」

「そうです」

「贈りすぎなんだよなぁ……陛下……」


 おかげでエディンはまだマーシャにドレスを贈れていない、とぼやく。

 お嬢様を見るとやはり首を横に振られた。

 ですよね、全部着終わらないと……エディンはドレスを贈れない、よなぁ。

 あの量だ……未開封のドレスもある。

 その全てを陛下が覚えているとは思えないが……万に一つ覚えてたりしたら機嫌を損ねられるかもしれん。

 王家の『記憶継承』侮れないから。

 あー、キモい。


「まあ、装飾品ぐらいなら何か贈ろう。誕生日だしな」

「あら? エディンはこれから見繕うのですか? 貴方ならとっくに準備しているのかと思いました」

「お前、一緒に放課後訓練受けておいて良く言えるな」

「……そうですね、確かにちょっと連日の魔法訓練で……。でも、私は今年もオススメの恋愛小説を贈ると決めていますから!」

「そうか」


 マーシャの誕生日だからな。

 俺は今年の分は準備終わってるからなー。

 今年はあのアホが料理に本気出すようなので、初心者用の調理用包丁とピーラーだ。

 鍛冶屋に行ったら割と簡単に作ってもらえた。

 あれで少しは自分の飯をまともに作れるようになれば良いんだが……。


「訓練といえば六月はちょっと僕、公休が増えるんだよね」

「『王誕祭』の準備ですわね」

「そう。まあ、けどその前に……ローナ、その夜会にアルトとラスティも呼んでくれる?」

「? 構いませんがどうして……」

「あの二人に色々聞きたい事が出来たんだ。多分君も興味があるんじゃないかな。ケリーも参加するんでしょ? もちろん」

「…………。分かりました」


 んん?

 アルトとラスティも?

 どういう事だ?

 と、思って後からお嬢様とレオに聞いたところ『斑点熱』の件だった。

 どうやら着実に王都に向かって流行りが拡がりつつあるらしい。

 俺が幼少期に罹った時は冬場だったが……季節関係ないんだな、あれ。

 そしてお嬢様曰く「『斑点熱』は夏場の方が死亡率が高くなるの。このままではまずいわね……」との事なので……嫌な予感しかしない。

 だが、ゲームで『斑点熱』や『流行病』の『イベント』はなかったはずなんだが……。


「…………まさかな」


 ヘンリエッタ嬢に、確認したい事が増えた。




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