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ケリーVSハミュエラ



 俺は、自分ではあまり意識していなかったが……まあ、やはり王家の血筋として『記憶継承』の発現が強い。らしい。

 ケリーはリース家に連なる男爵家の出身。

 爵位はあるが、『記憶継承』に関しての発現は脆弱な家だったようだ。

 ケリー自身の努力で学年でトップクラスの成績を勝ち取り、二年の生徒会役員になっている。

 ……まあ、アルトとハミュエラが生徒会に興味を示さず辞退しているのもあるらしいが……いや、それはそれで公爵家大丈夫か!?


「…………っ」


 黙ってベンチまで戻る。

 レオに「良いの?」と聞かれるが、信じてやるしかないというか……。

 あいつが血筋に関して、この中で負い目のようなものを感じているのは知っている。

 なのに、あの自信満々の表情。

 心配ではある。

 いや、もうとても心配ではあるんだが……心配……心配……!


「心配ではあるけれど! 心配だけど! いや、心配に決まってんだろ!」

「ケリー様……!」

((セレナード家過保護か……))


 エディンとクレイの無表情にそんな思いが込められているとは気付かずに、むしろいつの間にか俺の横に現れたルークの方が気になった。

 お前、剣の訓練中では……。

 いや、ケリー付きの執事はお前だもんな。

 そうだよな、心配だよな!


「いや、オレは本当にやらないからな?」

「いいぜ。じゃあダモンズ」

「おっけおけー! アルトはあっちで見ててよ」

「…………、……お、お前もあまり無茶する、なよ」

「え? なんてー?」

「に、二度と言うか!」


 ん?

 俺たちの距離だとなんて言ったのかよく聞こえなかったけど、アルトの顔が赤い。

 まさか具合が悪くなったのか?

 そうか、ハミュエラのやつ、それでアルトの代わりにケリーと模擬戦を……模擬戦だよな?

 あ、こっちに来た。


「く、くそぅ、ハミュエラめ」

「アルト様、顔が赤いです。熱ですか?」

「わあ、本当です! 今お水をお持ちしますね!」

「ち、違うわ!」


 ケリーも心配だが病弱なアルトも無理させられなかったな、そういえば。

 ルークがすぐに水の入った水筒を持ってくる。

 なぜかアルトにはとても嫌がられた。

 面倒くさいツンデレだな。

 何が大丈夫だ。

 お前の大丈夫はレオやマーシャの大丈夫並みに信用がないっつーの。


「でも、ケリーとハミュエラの模擬戦は興味深いねー」

「確かに魔法有りの模擬戦は俺たちもやった事がないからな。……まあ、出来るレベルに到達していないというのが本当のところではあるが……あの二人はそのレベルか……くそッ!」

「む……確かにそう言われると些か悔しいな!」

「…………」


 レオたちはそういう視点か。

 まあ、エディンの言う通りなんだよな。

 俺たち剣技の方は負ける気がしないが、魔法を交えてとなるとあの二人とは戦いにならないだろうし、魔法に関してのみならアルトにも劣る。

 主に同属性の俺!

 今度『水属性』の魔法の使い方、参考までに聞いてみようかな?

 ちらりとアルトを見下ろす。

 んん、ハミュエラを心配そうに見ている。


「ライナスにいに〜、ダウンしてるなら審判やってくださーい」

「うっぐ……」

「しかしベックフォード様はなんで魔法を試す度に具合が悪そうになるんですかね? 適性は『中』……ダモンズやフェフトリーと同じ、はずですよね?」


 た、確かにな。

 つーか魔法有りの模擬戦だったらそこにいるの危ないんじゃないかなライナス様。

 少し離れてた方が良くない?

 俺も迎えに行った方が良いかな?


「エメがライナス様は適性は悪くないけど、容量が多くないって言ってます」

「容量?」


 剣の稽古を中断した巫女殿がベンチに近付いてきた。

 ちらりと他の……スティーブン様やラスティを見ると死にそうな顔になってる。

 う、うん、こちらも一旦休憩が望ましいな。

 ルークに頷いて見せて、スティーブン様たちにもお水を配布。

 その傍、巫女殿がエメリエラに聞いた話を聞く。


「えっと、エメと契約して、人間族も魔力を持てるようになりました。でも、まだその使い方がど下手くそだし、魔法を使えるほど人間族の体の中に魔力がたくさんあるわけじゃない……だそうです。で、ライナス様はその中でも特に魔力の容量が少ないようでして……」

「エメの魔力を供給してもらうんだけど、供給過多で酔っちゃうんだろうね」


 なるほど……。

 あの人、いかにも魔法向いてないもんなァ……。


「逆にアルトさんは適性が『中』でもその容量が多いみたいです。だから適性が『高』のケリーさんとおんなじぐらい魔法が得意なんだと思う……だそうです!」

「そ、そうなのか……」


 つまりハミュエラが『中』の標準って事?

 ふーん、容量ねぇ……。


「ちなみにレオハール様は適性も高ければ容量も大きいのであんな事になるようですね……」

「ああ、うん、エメに聞いたよ……」


 な、なるほど。

 火柱の原因……。

 要制御訓練、だな。


「し、しかし……それならば……はぁ……よ、よ、容量の、把握も、はあ……必要なので、は……」

「スティーブン様、一度座ってお休みください」

「す、す、すみませ……」


 この人がこんなに死にそうな顔になってるの久しぶりに見たな!

 しかし運動用の薄着が大変に目の毒!

 巫女殿は年相応で可愛い、ぐらいなのにスティーブン様が着てると……いや、別に汗だくだからとかそういうのではないと思いたいというか!

 …………。

 なんでスティーブン様の方が巫女殿より汗だく疲弊してらっしゃるんだ?

 あとラスティ……。

 こっちも言葉を発せないほど震えてダウンしてる。

 剣の稽古組何があった。


「えっと……エメが言うに……」


 巫女殿が一人……まずはレオを指差す。


「レオ様は今言った通り、適性も高いし容量も多いです」


 ……いや、さすがメイン攻略対象、公式ゴリ押しの人気不動のNo. 1。

 むしろ戦争イベント救済の神。

 納得のチート野郎。


「ヴィンセントさんも同じぐらい」

「俺も!?」

「は、はい。容量だけならレオハール様より多いそうです」

「嘘でしょ!? 俺全然ダメダメですよ!?」

「えーと、エメからヴィンセントさんは『想像力が足りないのだわ』って……」

「うぐっ!」


 魔法を創造する想像力!

 でしょうね!


「クレイさんも容量は多いそうです。レオハール様やヴィンセントさんよりは少ない方ですけど」

「む……」

「エディン様は普通? ルークくんとラスティ様とハミュエラくんとスティーブン様も普通……」


 で、ライナス様は少なめだと……。

 ん? ケリーは?


「ケリーさんとアルトくんは容量がレオハール様やヴィンセントさんより多いそうです」

「なっ!」

「え、それはすごいね……!」


 …………うん、ごめん、俺それよりもアルトとハミュエラが『くん』なのにケリーが『さん』な方が気になってしまった。

 巫女殿の中のケリーの位置って頭一つ飛び抜けてるの?

 ……同じクラス、学年なのに?

 もしかして親密度でその辺りが変わる……のかな?

 正直あまりアルトが巫女殿と仲良くしている印象はなかったんだが……。

 これはアルトルートかハミュエラルートに巫女殿が入ったという事か?

 そ、その辺詳しく……!


「…………。だが、そうなると本格的にリースはレオ並みの戦力になるな」

「うっ」

「……ケリー・リースか……お手並み拝見といこう」


 うわ、クレイの顔が『代表候補のライバル』を見る顔になってる。

 戦争の代表は巫女殿に一任されたからな〜。

 とはいえ、巫女殿としては単純な戦闘力だけでは代表を選んだりしないだろう。

 攻略サイトに出没した方の戦巫女(プレイヤー)殿は『全員顔で選んだ』『推しだけで挑んだ』という猛者も中には見かけたけど。

 さすがに戦闘難易度も不明の『現実』でそんなアホな真似は出来ないからな。

 それに、アルトとケリーが魔法を得意だとしてもアルトは剣が得意じゃないし体も弱い。

 属性『水』も俺と被ってるし、魔法だけで固めると獣人戦は楽に勝てても妖精やエルフは大変そうだし……。

 ヘンリエッタ嬢……佐藤さんはプレイしてる時どんな戦略で戦争を勝ち抜いたんだろう?

 俺は一周しかしてないから普通にメイン攻略対象(レオ、エディン、ケリー、ヴィンセント)なんだよなー。

 やっぱり佐藤さんに助言を乞いたい。

 今度ケリーに連れてきてもらおう。


「こほん」


 あ、ライナス様が話してる間に立てるぐらいには復活したか。

 良かった良かった。


「で、では、魔法使用ありの模擬戦、という事でいいんだな?」

「ええ」

「うん!」

「よし、では最低限のルールを決めるぞ。相手の剣を払う、相手が負けを認めたら勝ち。そして、俺が戦闘続行不可能と判断したらどんな状況でも戦闘を止める。分かったな?」

「ええ、それでいいですよ」

「はーい!」


 ハミュエラとケリーの魔法有り模擬戦。

 興味深いけど……不安だ。

 ケリー、本当に大丈夫なのか?

 ハミュエラの戦法はかなり厄介だぞ!?


「では! 始め!」


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