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うちのお嬢様が破滅エンドしかない悪役令嬢のようなので俺が救済したいと思います。【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
アミューリア学園二年生編

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郊外へ向けて



クレイ、ライナス様、エディンと合流し、護衛騎士のリヴァルさんとイーディスさんに案内されて向かったのは『ウェンデル』郊外にある墓地。

その途中、クレイは二振りの剣をレオに投げてきた。

危な!


「? これは?」

「コリンズが作った剣だ。とりあえず、試作品とのことだが今回使ってみてはどうだ?」

「! 早いね! ありがとう! もう一本あるけど、どっちも試作品?」

「王子の剣の好みと性能を重視したもので二種類作ってみたそうだ。それをベースに開発していくと言っていたから好きな方を選べばいい」

「うわー、うん、迷うなぁ」


1ヶ月足らずでもう⁉︎

すごいな亜人族…いや、レオの剣を最優先してくれたのかも?

一つはオリーブ色の鞘に収まった、騎士団の標準サイズの剣。

もう一つはインディゴブルーの鞘に収まった、やや幅のある剣。


「僕こっちかな」


と、レオが選んだのはインディゴブルーの剣。

選ばれなかった方はクレイが受け取り、そしてライナス様の方をちらりと見る。


「お前、使ってみるか?」

「なに⁉︎ いいのか⁉︎」


…………ガン見してたの俺でも気付いたよライナス様……。

思えば当初から亜人の剣には興味津々だったもんな、この人。


「パーティーの礼服の件もある。亜人族は恩は返す。……アメルも世話になっているしな」

「え?」

「アメル?」

「黙っていたがアメルも亜人族だ。ヤツは人間と亜人の混血故、見目は人そのものだが」

「な……」

「お前には話しても問題ないと判断して今話した。それとも……」

「…………そうか、いや、話してくれてありがとう!」

「…………」


一瞬驚いたが……ライナス様はあっさり笑顔で剣を受け取り、そしてアメルのこともクレイに礼まで言った。

この人らしいというかなんというか。

でもそうか、アメルも亜人族だったのか……。

貴族の家に入り込み情報収集を行う。

まあ、亜人族には必要なことなのだろう。

普通の貴族なら眉を顰めて叩き出しそうなものだがライナス様はニコニコ上機嫌になってしまった。

そこまでご機嫌になるようなことだろうか?


「?」

「ライナス、嬉しそうだねー?」


クレイも俺と同じことを思ったのか、顔が怪訝だ。

イケメンの顰めっ面。

馬に乗ったレオが、同じく馬に跨ったライナス様へ「なんで?」と聞くと満面の笑みでこう答えられた。


「俺が無茶をしても、亜人族ならば怪我もそれほどしないと思いまして」

「無茶の度合いによりますよ」


成る程、と納得したが釘は刺しておく。

何故なら、先日メグが馬車を支えるという無茶をやらかしたからだ。

お嬢様を助けるためとはいえ、亜人でも倒れてくる馬車を一人で支えるなんて無茶が過ぎる。

ましてメグは猫の亜人。

素早さには特化しているだろうが、他の亜人に比べると筋力はそれ程特化しているわけではない。

無茶しやがって。

お陰でメグは3日ほど全身筋肉痛。

右腕は負荷で腫れていたんだぞ。


「そ、そうか、そうだな。しかし、馬車に轢かれそうになっても亜人なら避けられそうではないか?」

「馬車程度ならば……」

「クレイ、そこ真面目に答えるところじゃない」


なにが馬車程度ならば、だ。

……まあ、トラウマのあるライナス様からすれば頑丈である程度動ける事が条件になるのは仕方ない。

アメルは身のこなしもなかなかのものだったが、亜人なら納得だ。

恐らく人に紛れるためにかなりセーブしてあれだったはず。

なら、本気になればよりすごそう。


「しかし、それならばアメルを俺が使用人として借りていていいのか?」

「本人同士で交わした契約ならば俺から口を出すことではないな」

「ふむ、確かに」


……なんだろうな、ココ2人の会話……当たり前のことを言っているのに……妙にこう、ずれた感じに聞こえる……。


「こほん、よろしいですか?」

「そろそろ郊外墓地に着きます。ゴヴェス氏が逃げ込んだのは王墓の管理地です。恐らくそこの建物の中に居るはず」

「…………? いるはず、というのは? もう建物の中は捜索したのですよね?」

「は、はい……しかし……」


リヴァルさんとイーディスさんに聞き返すと、なんとも歯切れが悪い返答。

ああ、やな予感しかしないなー……。


「建物は隈なく探してのですが……未だ見つかったという報告は……」

「ふむ……レオハール殿下、ということはアレですね」

「そうだね、アレだね」

「なんだ?」


俺とレオが通じ合ってる感が気に入らないエディンに睨まれてしまう。

ふふふ、ざまぁ。

……じゃなく、アレといえばアレだ。


「王家のみに伝わる隠し通路だよ。王墓から城までの道もあるんだ。……しまったな、ルティナ妃の言う通り城にいるべきだったかもしれない。でも城に何の用だろう?」

「クレイ、亜人族が王家の隠し通路に関して知ってることは?」

「多少。たまたま発見して勝手に使わせてもらっているところはある」

「えー……」


まさしく「えー……」だ。

レオじゃなくても声に出てしまう。

王家の隠し通路、亜人に発見されてしかも勝手に使われてんのぉー?

聞いておいてなんだけど俺も「えー……」って言いたくなったわ!


「王墓の隠し通路もその一つ。……とはいえ、ある個所に扉があり、そこには奇妙な窪みしかなくどうやっても開かなかった」

「ああ、扉は石鍵じゃないと開かないからねー」

「え? 石鍵って、さっき言っていた……?」


クレイたち亜人がこっそり使っていた王家の隠し通路。

どこに通じるのかわからないが、扉には石鍵用の……窪み?

いやいや、石鍵って『血石の間』と『クレースの寝所』に行くためのものじゃないの?


「あー、うん、そうだねぇ……えーと、石鍵は僕が陛下に借りてきたマスターキー以外にセントラルの領主家が持つスペアキーが四種類と宰相が持つスペアキー、騎士団総帥が持つスペアキーが二種類ずつ……知恵の輪のようにスペアキーは四つ繋げることで開くところと、二つ繋げる事で開くところ、一つでも開くところと三種類あるんだ。ちなみにアンドレイとディランが持っているスペアキーは東西南北の領主たちに預けられている対とは逆になっている。どっちがどっちを持っているかは僕も知らない。意味わかる?」

「え、ええ……そうだったんですね」


つまりさっきの話でいうと北と南の領主に預けられているスペアキーの石鍵は対になっている。

宰相と騎士団総帥は、それぞれ北と南の対と東と西の対をセットにならないよう北と東、南と西、に分けて持つようにして悪用を防ぐ。

必要になった時に王家に協力し合うってことか。

そしてスペアの石鍵は一つで開く場所。

二つで開く場所。

四つ合わせなければ開けられない場所に分かれている……。

成る程、鍵を分散させて悪用を防ぎ、重要度に応じて鍵を集めなければならないということか。


「……随分と慎重だな?」

「まあ、王家も歴史が浅いわけではないからね。……ロクなものは入っていないけど……」


王家の宝か。

ぼ、冒険心がくすぐられるなぁ!

でもなんか金銀財宝のイメージがない。

『血石の間』だの『クレースの寝所』だのと夢のないことばかり聞かされた後だからだろうな〜。

まあ、金銀財宝が欲しいのかと言われれば別に欲しくないんだけど。


「……でも、いくらセントラルの領主家といえど王家の隠し通路は知らないはずだ。これは亜人が絡んでると見て間違いないかな?」

「そのようだな……」

「待て、レオ。今の話を聞いていると、その石鍵がなければ通れない扉は……オークランド侯爵の石鍵で開いていることになるぞ」

「そうだね。ルークが持っていたオークランド家の石鍵はゴヴェスが回収したらしい。オルコット家の石鍵はダドリーがゴヴェスに手渡し、ルークは二つを使って『血石の間』を開けて石鍵二つと『血石』をゴヴェスに渡した。なら、取り戻すべき道具アイテムは三つかな」


……オークランド家と、オルコット家の石鍵。

そして、王家の宝の一つ『血石』だな。

むむむ……。


「その扉はどこに通じているのでしょう?」

「……………………」

「レオ?」


神妙な面持ちで、前を馬で走っていたリヴァルさんがレオに問う。

俺は後ろの方なので、真ん中のレオの後ろ頭しか見えない。

馬の足が少し緩くなる。


「いくつか、候補はあ、るけど……可能性として、高いのは…………、……『王墓の檻』かなぁ……」

「王墓の檻? ですか?」

「…………。あんまり行きたくないな……」

「レオ……」


俯くレオ。

馬のスピードは、あまり変わらない。

トップスピードではないにしても、郊外までは間もなく。

なんだろう……。


「…………?」


俺も少しずつ、気分が悪くなってきた。

手に汗が出てきたし、背中が冷える。

額にも変な汗かいてきたぞ。

なんだ?

行きたくない、行ってはダメだ、行くな。

吐きそうな程胸糞悪い。

頭の中でなにかが叫んでいるようだ。



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