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メイン攻略対象



9月も半ばにさしかかり、アルトの熱は上がる一方。

というか本格的に風邪引いたらしいんだが俺たちのせいではない、と思いたい。

で、俺はというと本日レオに頼まれてケリー、エディンと一緒に魔法研究所へと赴いている。

ものすごく帰りたい。

というか、このメンバーってアレじゃんん……!

“メイン攻略対象”じゃんんん!


「あの、レオハール様……今日は一体何を……?」

「えーと、魔力適正が『高』以上の僕らに属性検査だって」

「……確か、ルーク・セレナードも『極高』だったよな? やつはいいのか?」

「すみません、ルークのやつはフェフトリー様から“貰って”しまいまして……」

「潜伏期間を思うととっくに罹っていた気もするけどな」


頭を抱えるケリーに、俺も一応フォロー入れておく。

そうなんだよなぁ、実はルークもアルトの見舞いに行った2日後に熱が出た。

咳も激しく、喉はガラガラ……かなり悪化の一途を辿っている。

スラム街育ちなので病気には強いと思うのだが、それとこれとは違うようだ。


「そ、そっか。僕らも気を付けないとだね!」

「属性検査か……なんかそういえば去年から滞ってたな、その手の話」

「そうですね」

「いや、ヴィニーがミケーレの検査方法に何度もいちゃもん付けたからだって聞いてるよ?」

「は? そんなの当たり前じゃないですか。なんで検査するのに全裸にならなきゃいけないんですか。そんな検査方法しなきゃならないなら当然の権利を持ってぶん殴りますよ」

「…………お前去年なにしてたの……?」


エディンはなんとなくなにかを察してくれた表情だが、そういえばケリーはミケーレに会うの初めてか。

最近弱ってはいたが検査ともなればハイテンションな奴との遭遇になるはず!

しかし、こちらには誓約書がある……また変な行動をしようものならぶん殴る……!


「あと、ミケーレに巫女の送還方法も相談しないといけないしね」

「ああ、そうですね」


今暇してるらしいから頼むって話してたっけ。

しかし、具体的にどうやって帰すのだろう?

『ティターニアの悪戯』に関しては資料があまりないと聞いているけど……。


「アルトが元気になったら魔法研究所で一緒に考えてもらおうと思っていたんだけど…体調不良では致し方ないよね」

「あの、レオハール様…ルークのことで一つ質問があるのですが」

「うん?」


なんだ?

ケリーのやつ、挙手までしてレオに質問?

表情もやけに深刻そうだが…。


「あいつはレオハール様とヴィニーに次ぐ魔力適性『極高』……しかし、正直あいつが戦力になるとは思えません。剣も戦略も、最近習い始めましたので……」

「!」


あ……わ、忘れてた……!

そうだ、ルークのやつ魔力適性『極高』だったんだ!

攻略対象でもないくせになんであんなに魔力適性高いんだあいつ⁉︎

え? じゃあ……魔力適性からいえばエディンやケリーよりもルークの方が『代表候補』になる確率が高くならないか⁉︎

ええええ⁉︎


「ああ、確かに初日のテストは成績が振るわなかったんだよね? でも、あの子『疑惑』があるんでしょう?」

「う……、は、はい。それはそうなのですが……」


ケリーの考える疑惑とレオの言う疑惑にはややズレがある。

ケリーはルークを『貴族の隠し子』だと思っているが、レオには俺から『オークランド家の血筋の可能性濃厚説』を教えているのでレオはそっちの『疑惑』を言ってるのだろう。

まあ、ここで言うことではない。

廊下なんて……しかも魔法研究所付近なんてまさに『オークランド家』の領域だ。

どこで誰が聞いているか分からないから、こうして濁して話すのが一番だろう。


「……まあ、確定でもないからなんともいえないけど……魔力適性のみで『代表』に選出される事は多分ないかな……」

「そうなのですか?」

「うん。今のところだけど、僕とクレイ…そして戦巫女は確定。残りの2人は魔力適性と剣技、戦略など総合的なものから有力候補としてヴィニー、エディン…そしてケリー、君が上がっている」

「え…?」

「……リース家の跡取りとして引き取られた君には申し訳ないとは思っているんだけど……それは僕らも同じようなものだから……申し訳ないが理解して欲しい。でも、あとの2人は戦巫女に決めてもらおうと思っているんだ。魔法の要となるのは彼女だから。彼女が戦い易いメンバーを彼女自身で選んでもらうべきだと思っている。……だからその……もし戦巫女が君を望んだら、どうか応えてはくれないだろうか……。例え選ばれても僕も一緒に戦うから…………」

「……………………」


ケリーの表情が凍った。

……戦争の、代表候補と言われればそうなるよな。

俺も去年味わった、その恐怖。


「ケリー」

「っ!」

「もしお前が選ばれたら俺が残り1人になる。絶対にお前を死なせはしない」

「…………ヴィニー……」

「ま、貴様がそれだけ優秀だと認められたという事だ。……他の公爵家子息たちですら及ばぬ場所に立っている事は、貴様にとって誇りにはならないのか?」

「……! …………。……いえ、そう、ですね……王族と、公爵家のご子息と……肩を並べられる事は誉です。…………リース家の跡取りとして鼻が高い」

「…………ごめんね。本当はもっと早くに知らせるべきだったかもしれないね……でも、その、申し訳ないけど、ルークは『候補』止まりになるだろう。戦巫女が望んだら……その時は彼に『代表』になってもらうこともあるかもしれないけれど……」

「それは、酷でしょうね。……あいつは優しいので……」


……エディンめ、上手いこと言いくるめやがって。

だが、確かにルークのあの性格を思うと俺やケリーの方が、まし、か。

まあ、性格で代表を決めるならハミュエラやアルトも向いてないっちゃー向いてないし。


「まあ、そんなわけでエディンとヴィニー、そしてケリー、君たちは『最有力候補』という扱いになるんだよ。今日魔力属性検査に呼ばれたのはそのせいかな」

「成る程……」


うおおう……メイン攻略対象組が完成してしまった感んんん!

……いや、いつかこうなる事は分かっていたはずだが……それでもなんか……ううう。


「ふむ、つまり俺たちは同じ戦場に赴く可能性の高い仲間、同志……、ということでもあるわけですね?」

「え? ああ、うん、そうだね?」


相変わらずうちのケリーは切り替えが早い。

八重歯まで見せてニヤリと笑う、その腹黒い笑顔たるや!

レオが微妙に引いている!


「ではその同志に是非、レオハール殿下がうちの義姉様をどう思っておられるのかお教えくださいませ。レオハール様はうちの義姉様のこと好きなんですか?」

「ほ、ほぁ⁉︎」



ド、ド、ド、ド…………ドストレーーーート⁉︎



「え、な……」

「今の状況お分かりになられてますよね? うちの義姉様は殿下の婚約者になるために努力しておられるんですよ。殿下、今年中に結婚までこぎつけてくださいねって年始に宰相から言われていたではありませんか。その辺どうなのかハッキリしてくれないと俺も安心して義姉様を嫁になど出せません。どうなんです? 当の殿下がうちの義姉様を特に好きでもなんでもないというのなら……」

「ケ、ケリー!」

「……え、あ……?」


あれぇ〜?

俺、ケリーにレオはお嬢様が好きって言わなかったっけ?

あ、言ってない。

だが、真っ赤になったレオの顔を見れば一目瞭然。

ケリーも真顔で停止する。


「えー、えーと! そそそそういえばちゃんと明確に言ってなかったけれどあの、あの……」

「…………(かわいい)」

「…………(天使かな?)」

「……はい」


あわあわするレオの可愛さときたらお兄ちゃん欲目抜きで可愛いと思うんだ。

しかしケリーの目がやばい。

レオもシスコンだがケリーも相当にシスコンだ。

うちの異母弟天使とか思ってる場合じゃなかった。

万が一の時は俺が間に入らねば!


「……ぼ、僕はローナのことを……」

「…………」


……そ、そうだ、ハッキリ言ってやれレオ!

ここは魔法研究所敷地内!

オークランド家の手の者が聞いていてもおかしくはない!

キッパリ! ここで! アリエナ嬢に引導を渡してやるんだ!


「太陽にも劣らない光り煌めく、女神だと思っているよ!」


…………………………。

あれ?


「よく分かってらっしゃる!」

「⁉︎」


ケリーが!

ケリーが稀に見ぬ満面の笑顔!


「そうなんですよ、うちの義姉様はまるで女神! 厳しくもありますが…、いや、厳しいんですが! それでもだからこそ出来た時にしっかり褒めてくれるんです! 人をよく見ているというか!」

「あ、それは分かる! ローナはちゃんと人を見ていてくれるよね。それで、正義感も強くて優しくて、彼女の存在そのものがこの国の良心……太陽のような存在だと思うんだよ!」

「おお! それは素晴らしいですね! ……ヴィニー! レオハール殿下は分かっておられる方だな!」

「だろう!」


そう、その通りだレオ!

成る程太陽神……素晴らしい例えだな。

お嬢様はこの国を照らすまさに太陽というわけか……。

冬の長いこの国にとって太陽の光はありがたいものだ。

例え曇っていても、雨や雪が降っていても、雲が晴れればそこにある……そして、この国に降り積もった雪を溶かして春をもたらす。

太陽神お嬢様だな!


「……おい、階段気を付けろ」

「おあ!」

「うわ!」

「わあ!」


語りながら歩いたせいで俺とケリーとレオは階段でこけかけた。

エディンはレオしか助けない。

俺は辛うじてケリーを襟を引っ張り、こけるのを阻止した。


「さて、と…」


ドキドキしながら姿勢を正す。

目の前には魔法研究所。

そしてその扉の奥には奴が待ち構えている。

気分を切り替えなければ。

ケリーは初めて奴の本性を知る事になるんだし、俺が守ってやるからな!

まあ……それを差し引いても……魔法研究所はオークランド侯爵の領域と言える。

去年はミケーレにだけ警戒していたが、今年は警戒するものが増えた。

もちろん、侯爵が中にいるとは思わない。

普通領主っていうのは領地を離れないものだからな。

うちの旦那様だって、セントラルには領主会議の日にしか来ない。


「ちょっとワクワクするな。魔法属性って」

「呑気か」

「分かるー」

「天然か」


ケリーとレオがすっかり仲良くなった。

良かった。良いことだ。

しかし……俺とエディンはそっと自分の頭に手をあてがうのであった……。




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