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お嬢様のお茶会【後編】



「ご、ご迷惑をおかけしましたですだ」

「まあ、怪我もなくて良かったよ〜。ね、お兄さん!」

「そうだな、居ない方が逆にスムーズなくらいだったからな」

「ううううう〜!」

「ヴィニー、あまり虐めてはダメよ。マーシャは最近とても頑張っているのだから」


と、マーシャを庇うお嬢様。

同じようにメグも「そうだよ! お兄さん、マーシャは最近1人でも起きられるようになってきたんだよ! 7日にいっぺんだけど!」とフォローとしてはなかなかに致命的なフォローを入れる。

それ以外はメグに起こしてもらわなければ起きられていないということだろう。

めっちゃダメじゃん。


「それに、お茶会は大成功と見ていいですしね。義姉様の誕生日パーティーも、招待状を増刷しておく必要がありますよ」

「そうね、ありがたいことだわ」

「おお〜! さすがお嬢様ださ!」

「エディンとライナス様が明確にローナ様を次期王妃に推している、と表明したと同義ですからね! あ、もちろん私もですが!」

「はい、ありがとうございます、スティーブン様」


しかし、ライナス様はアルトの体調が心配だと早々に帰ったし、エディンも用事があるとかでお茶一杯を飲み帰ってしまった。

ハミュエラは現れなかったので、多分アルトにマジで部屋に入れてもらえなかったんだろうなぁ。

まあ、それでも公爵家2名とスティーブン様がお嬢様側だと明確にしたのは大きい。

アリエナ嬢は残りの公爵家3人……アルト、ハミュエラ、ラスティを味方に付けなければ、これでもうお嬢様と対等に渡り合えているとは言えなくなる。

まるで選挙のようだが、レオが婚約者を幼少期に定められなかった以上貴族人気と血筋家柄その他諸々でこのような状況になるのは致し方ない。

正直、アリエナ嬢に勝ち目はもうないとも言えるような状況だが……あちらさんはなにか秘策でもあるのだろうか。

それとも、レオは諦めてサクレットにマーシャを口説き落とすように作戦変更させる?

いやいや……まさかな?


「他にやっておくことはあるでしょうか?」

「そうですね……学園全体はローナ様寄りに傾いていますが、我々より上の世代はオークランド侯爵とオルコット侯爵、ディリエアス元公爵、そしてローナ様のお祖父様、リース元伯爵様の影響が大きいと思います。特にオルコット侯爵様は現役で、絶対的な中立。全ての基準は王家にとって是が非か……という厳格なお方です! オルコット侯爵様を味方につける事が出来れば、ローナ様がレオ様の婚約者になるのにルティナ様を含め全ての貴族は文句も出ない事でしょう!」

「え? そうなのですか? …………」

「? ローナ様、どうかされたのですか?」

「……え、ええ、実は以前マーシャがオルコット侯爵様がマリアンヌ姫に…いえ、マリアンヌ姫だった娘へ贈った品を誤って壊した事があったのですが……」

「は、早くも状況にツッコミどころしかないんですがどうしてそんなことになったのですか⁉︎」


それについては簡単に説明しておこう。

以前、レオがマリアンヌ姫だった娘へ「友人を紹介したい」ということで一度城にマーシャを伴い行ったことがある……これがそもそもの失敗だったのだが……。

しかしマリアンヌ姫は“女”であるお嬢様に会うどころか「お帰り頂け」という王族として相当にアウトな扱いをお嬢様に行い、我々はすごすご……しかし内心「ラッキー」くらいの感覚で帰路につくことにした。

……その時である。

ラッキー、と浮かれていたせいかマーシャが城のメイドさんにぶつかってオルコット侯爵からの贈り物を壊してしまったのだ。

まあ、それから色々あって、お嬢様はオルコット侯爵に直接謝りに行き、許して頂いたのだが……。

あれだ、マーシャのドジ伝説の中でもかなり上位に入るものだが……マーシャのドジなんて上げたらきりがないので割愛していた……というか、身内の恥の中でもそれなりにトップの部類なので封印していたかった……ものすごく。

……ああ、因みにそのオルコット侯爵とはセントラル北の領主家。

セントラルでも特に寒い地方の領地で、よく食糧難になる為、セントラルの半数近くの食糧を生産していると言っても過言ではないリース家とはそれなりに懇意にしてくれている。

まぁ、だからと言って贔屓してくれているわけではない。

なんというか、ものすごくありきたりな言葉で言うなら『お得意様』なのだ。

旦那様からすれば「北側は技術力がすごいよ」との事なので持ちつ持たれつという事だけど。


「なんにしてもその件で直接謝罪に行ったのです。その時に大変良くしてくださって……今でもお手紙を頂きますの」

「えええ⁉︎」


スティーブン様が驚くのも無理はない。

しかし、オルコット侯爵はお嬢様とメル友ならぬ文通友達。

お嬢様も筆まめなのできちんとお返事をしている。

どんな事を話しているのか知らないが、エディンがお嬢様と婚約を解消した後はオルコット侯爵も心配して「うちの息子が婚約者と上手くいかなかったらうちの娘におなり」的な内容の手紙をくれたこともあるのだ。

ちなみにそれ以前からお嬢様の誕生日にはちゃんとプレゼントをくださることもあり、交流はあった。

オルコット侯爵は年齢よりも遥かに若く見える方らしく、まさかお嬢様を狙っているのではあるまいなと警戒もしていたのだが……お嬢様曰く「お手紙はほとんど奥様のことが書いてあるのよ。愛妻家でらっしゃるのね」……との事。

また、どうやらお嬢様のお祖父様……大旦那様や、オークランド侯爵の先代、オークランド元侯爵、ディリエアス元公爵と仲のいい人物で、ローエンスさんが「あのジジイカルテットはヤバイよ」と目を本気にして語っていたので曲者であることもまた、間違いないだろう。

若干お前が言うなとも思ったけど、それはそれとして。

長男が来年20歳になるので、その時に爵位を長男に譲る予定(お嬢様情報)だそうだ。


「…………え、で、では、ローナ様が婚約者候補になっている旨についてお伺いしたりは……?」

「ご子息の方々に「父が頑張ってくださいと申しておりました」とお言葉をいただきましたわ」

「さ、さすがローナ様……」

「スティーブン様、という事は……義姉様があと味方につけるべきは……」

「……。……エディンの家族、でしょうけれど……」

「………………」

「………………」



……エディンの両親?

お嬢様は攻略済みだな。



「……あ、いえ! 影響力を考えるのならエディンのお祖父様です!」

「え⁉︎ あの根性論が服を着て歩いているという⁉︎」

「はい!」


ええええええ⁉︎

レオも太鼓判を押すヤバイ人じゃんんん⁉︎


「……まあ、もちろんエディンのお祖父様はすでに爵位をお持ちではありません。影響力はお強いですがディリエアス公爵はローナ様ガン推しですので問題ないとして……あとはやはりハミュエラ様とアルト様……遠方公爵家の方々ですね」

「アルト様は体調が優れないとお聞きしましたから……明日、お見舞いに行って差し上げて、ケリー」

「はい、分かりました」

「…………。スティーブン様」

「はい?」


つまり、お嬢様の“勝ち”は確定的。

揺るぎそうもない……だが……。


「それでももし、アリエナ様がレオハール殿下の婚約者になるにはどうしたらいいのでしょう?」

「…………。……ローナ様かリース家にありえないようなスキャンダルがあるか、反逆や殺人などの大罪を犯している……別な誰かとの婚約や……最悪なもので、ローナ様が御子の産めないお身体であるとか、亡くなってしまう、など……でしょうか」

「わたくしにも我が家にもそのようなものはない、はずだけれど……そうですわね、一度こちらの視点で身内の恥を洗い出すのも必要かもしれないわ。……それに今度、健康診断に行って参ります!」

「は、はい! 行ってらっしゃいませ!」


……と、お嬢様とスティーブン様が拳を作る横で俺とケリーは同じポーズ(無意識)で考え込んでいた。

正直、大罪と称するそれらはアリエナ嬢の方にこそあるものだ。

しかし、一番最後の……。

お嬢様が……死ぬ。

冗談ではなく、うちのお嬢様はそういうフラグがあるんだよなぁ。

それに……オークランド家は亜人族の中でもヤバめなやつらと繋がっている。

俺もニコライやクレイを知っているから……一つ、確信して言える事がある…………それは……。


亜人の力を持ってすれば、人の暗殺なんて容易い。



「………………」



まさか、これは…………まだ戦巫女も召喚されてないのに……。

お嬢様の……新たな破滅フラグな予感が……!




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