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其の参・鬼来神社

挿絵(By みてみん)


「囚われの身?」


「御免ください。奥さん」

「あの声は小林刑事さんだ。百目野さん、県警から来た刑事さんです。お会いになります?」

「無論です」


「厄介な事件ですな・・・おっと、御客さんですか?」

相棒を一人連れて応接間にやって来た。

「東京の探偵さんです。今、此方に着いたんです。百目野さん」

そそくさと女中にお茶を出させた。


「・・・探偵さん?見かけない人物が家に入ったものですから・・・探偵さんか、奥さん・・・」

「あなた方が私の話を信じてもらえないから呼んだんです」

「百目野さん?よろしく。県警の小林です」

「同じく丸井刑事です」

小林は初老のベテラン、丸井はまだ若い。

「よろしくお願いいたします」

「百目野さん、会ってすぐ何だが・・・奥さんの荒唐無稽な話を信じたんですかいの?」

「聞いたばかりで何とも・・・其れに現場も視れない状況では、どうにも」

「あなたの調査にも協力しますよ。全部とは云えないが」

「ありがとうございます。地元の学者さんがいる・・・と伺ったんですが?」

「井川博士?地質學の先生です。此処に住み着いて調べてもらっちょります、今日は盛岡まで何か用があって行ってますが、明日には戻るでしょう」

「現場には何時いつまで立ち入り禁止に?」

「近々・・・明日にでも解除になるかもです。先生の判断にお任せしております」


「小林さん、何か進展はありましたか?」

「奥さん、申し訳ない。何も無しですが、我々が呼んだ物理學博士と井川博士が口論になって・・・結局、物理學博士は怒って帰ってしまった。其れで井川博士が友人の物理學者を呼んでから、あの先生、どうもきな臭い」

「そりゃ、放射能やら水素ガスなどと云っていれば・・・」

「いや、そうじゃないんですよ。相対性宇宙論だの、5次元が何だの、わたしにゃさっぱりわからんことをおっしゃり出して・・・」

「相対性宇宙論?5次元?」

「何の事か?さっぱりですよ」


そして刑事たちは帰った。

「おい、丸井、あの探偵のこと、調べろ。こんな厄介な事件に首を突っ込むなんざ、変わった奴だな」

「はい」


「奥さん、囚われの身とは、どういうことですか?」

「わたしに聞くより、鬼来神社きらいじんじゃの伊藤神主に聞いてください」

「立ち入り禁止区域じゃないですか」

「大丈夫、村の外れだし、神主さんだって黙って住んでるんです。裏口から私の紹介だと云えば、大丈夫。先生、もう夕方ですよ。此処に御泊まりになる?」

「申し訳ない。実際、何処に泊まろうか困ってました」


次に朝、百目野はパソコンで衛生写真を操作して、此の村の写真をダウンロードした。

村全体、周辺が一目瞭然だ。

内田家と思われる場所は、家全体を鉄板とコンクリートで固められていた。今も自衛隊員とトラックが数台配置している。

「自衛隊員はマスクのみか。鬼来神社はどこらだ?此れか?反対側だが何とか行けそうだ」


百目野は徒歩で向かった。

歩いていると村人に会う。

「東京から来た探偵さんに違いないべ・・・」

「こんにちわ」・・・などと声を掛ける者も居た。

「あ、こ、これはどうも」百目野はぺこぺこと頭を下げた。

「くすくす、何かとぼけた人だっちゃね」村人たちは何か親近感を覚えた。

田舎の情報伝達は意外と早い。


2,3日於きに学者グループが調査に来るのだと云う。

井川博士は其のリーダーであり、此処に住み着いて調査している。


「今日、博士が故知等に戻って来る。有意義な話が聞ければ善いが・・・」

百目野は鬼来神社に向かった。地元警察や自衛隊に見付からないように。


挿絵(By みてみん)


其処に着くと、鳥居と祠の小さな古い神社である。其の鳥居は溶岩で出来ていた。真っ黒だ。

「此の神社は山を祀っているみたいだ」

其の横に社務所兼自宅で農業と神主を兼業している伊藤が棲んでいる。

ガラ!「何方どなたですか?」

初老の老人が出て来た。

「あ!わたしは東京から来た・・・」名刺を渡した。

「・・・どうめん?」

百目野どうめんでは無く、百目野ひゃくめのと申します」

「ああ、先程、内田の奥様から電話がありました。東京の探偵さんですね」

「はい、今回の事件を奥方様から調査を頼まれまして、伊藤神主に会いに行けと・・・」

「ええ、わたしが伊藤です。そうですか。奥様が・・」

「ご迷惑ですか?」

「屯でも無い。此処には警察も来なかった。あの事件のことで此処を訪れたのは貴方だけです。まあ、お上がりください」


「百目野さんに何を話しましょうか・・・」

「神社の由来は?」

「鬼来・・・其のままですよ」

「此の山から鬼が来るから祀った?御神体は何ですか?」

「書です」

「書?」

「鬼の大将を封じ込めた言霊の書です。呪術です」

「鬼の大将を・・・山に?」

「山ではありません。土中の巌の中です、貴方は角の生えた、かの鬼を想像してますね」

「はい」

「厳密に云えば、姿は無いんです。霞のような・・・モノ」

「古代、鬼はモノと呼ばれていましたね」

「そうです。大昔、人は姿の視得無いモノを視覚化して絵にした。其れが皆が思う鬼です」

「では、此処に居る鬼は鬼では無いと?」

「はい、正体不明の異界の化物です」

羅刹らせつ・・・ですか?」

「奥様の受け売りですな。(笑)」


ドン!


行き也、地響きの轟音がした。「な、何だ?!山からだ!」


バリン!


窓を割って何かが飛んで来た。伊藤神主の前に転がって止まった。血だらけだ。

其れは・・・人間の首だった。


「う、うわあああああ、そ、村長!!!」

「村長?!」

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