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2章9 G 殺し屋(7)

 「待ってください!」


 JMIの依頼人が急に声をあげた


「なんだ!? 文句でもあるのか?」


 3人組のリーダーが言った。


「文句はありません」

「じゃあ何だ!」


「スミマセン…。あ、宜しければ、コーヒーでも飲みながら、いかがですか?」


 彼らは連れ立ってカウンターの方へ行った。


 密談するつもりか? 俺に聞かれてはまずいことがあるのか…。まさか3人組を仲間に取り込むつもりじゃないだろうな…。


 ここからじゃ、何を話しているか分からない。おや…、何か、もめ始めたぞ。


 依頼人は、携帯を取り出し、電話をかけた。


 なぜ、電話をかけている!? 敵対関係なら、3人組は彼に電話をかけさせないはずだ…。これはヤバイ! 3人組の人質になって逃げる計画は中止だ。


 今が逃げるチャンスかもしれない! あいつらは話に夢中だ。


 よし! 今すぐ逃げよう! 非常口は目の前だ!


 俺はカバンに手を伸ばし、席を立とうとした…。


 その時…、目の前に突然、依頼人が現われて俺と目が合った。


 えっ! 彼は向こうのカウンターで電話をかけていたのでは!? なぜ、俺の目の前にいる??


 彼は、ニコッと微笑んで、カウンターの方へ歩いて行った。


 何が起きている?? 状況が分からない…。


 もう、考えるのを止めて、ただひたすら逃げるか?…。


 そう思って、足に力を入れた時、俺の頭の中でKの声が聞こえた。


「ネズミのように、臆病になれ。自分を過信せず、注意深く、周囲を常に観察し、問題が起こる前に迅速に行動しろ」


 そうだ…。行動は迅速でなければならない。しかし、周囲を常に観察し、自分の置かれた状況を把握できていなければ、命取りだ…。


 逃げる前に、観察だ! それも、素早く…。俺は、彼らの集まっているカウンターの方へ注意を向けた。


 彼らはカウンターの前に立っている。マスター…と、女性の店員は陰で見えない。3人組と2人の依頼人…。


 2人!! 依頼人が2人に増えている! どういうことだ! 服装は違うようだが、確かに同じ顔、同じ体格…。


 双子か!? いや、まさか…クローン!


 …今はどちらとも言えない…。しかし、もし、そっくりな人物がひとりいるなら、あと100人いる可能性も否定できない…。日常ならありえないが、相手は日本最大の裏組織である。何があってもおかしくはない…。


 楽観論は危険だ。常に最悪を考えておく必要がある。今日にでも北朝鮮から核ミサイルが降って来るかもしれないし、明日にでも世界大戦が始まるかもしれない…。


 臆病者だけが生き残るのだ。


 …ところで、彼は、なぜ入店して、すぐに非常口をあけて外を確認したのだろうか?


 初めは、彼が盗聴器や隠れ潜んでいる敵がいないか確認している…と、俺は思い込んでいた…。


 しかし、この場がJMIのなわばりなら、交渉役の彼がそこまで確認しなくても良かった…かもしれない。マスターや他の部下がすれば良いのだ。


 彼は、非常口の外を確認した時、どこを見ていた!? 確か…、足元と上の方を見ていた…。


 外になど盗聴器を仕掛けるはずがない。出口の地面に敵が寝転んでいるか?…軒下に人が張り付いているか?…そんなわけはない…。


 そこから導かれる答え…。


 彼は外からの敵を警戒していたのではない…。


 彼は、交渉相手が店内にいることを確認した。そして、交渉に移る前に、非常口に仕掛けた罠を起動させ、その作動を確認したのだ。


 その罠は、俺が逃げるのを阻止するためのものに違いない…。


 なぜ、今まで気がつかなかった…。1時間も早く店に来て、非常口の外も車までの経路も確認したのに…。


 その時は、この店が彼らのなわばりであると事前調査で明らかに出来なかった。だから、そこまで外を詳しく視なかったのだ…。


 自業自得か…。


 では、どうする? 


 罠を覚悟で逃げ出すか、ここにもう少し留まり、生き残る道を探すか…。


 罠にかからず、突破できる可能性もゼロではない…。しかし、罠に関しては未知数だ。致死的なものかもしれないし、行動を制限するものかもしれない。


 が、逃げようとして行動不能に陥ったら、もう言い逃れは出来ない…。


 その時、彼ら全員がこちらに歩いて来た。そして3人組のリーダーが口を開いた。


「この中で人質をひとり選ぶ…。一応、聞くが…立候補するものはいるか?」


 彼らの交渉は決裂したのだろうか?…。どうも3人組は逃走する時に、人質をひとり連れて行くようだ。


「オレだ」

「いや、オレだ」


 依頼人が言うと、


「双子は静かにしていろ…」


 と、リーダーが言った。


 そうか…。彼らは双子なのか? そうだよな…。クローンなわけない。謎が1つ明らかになると、少し明るくなった気がした。


 俺が逃げられる可能性は、まだ残されている! 3人組の人質となって入口から出て、車に向かう。警察に出会う可能性もあるが、命を落とす危険性は少なくなる…。


 よし! 行ける! 大丈夫だ! 俺は言った。


「俺の車だ。俺が行こう」


「ダメだ! 社長さん、あなたそんな身体じゃないだろう! 自分を犠牲にして、みんなを助けるつもりだろうけど、無理だ!」


 と、依頼人が言った。リーダーも、そんな顔つきをして、俺を見た後、目をそらした。


 えっ、えっ!? どういうことだ??


 なぜ、俺が人質じゃだめなんだ!?


 俺、人質になるの慣れてるよ。お買い得ですよ…。


 そもそも「社長さん」ってどういうことだ? 「そんな身体」とか意味分からん。「自分を犠牲」とか「みんなを助ける」とか、そんなつもり、まったくないんだけど…??…。


 結局、3人組と逃げる目論見は消えてしまった。


 彼らが人質を誰にするか協議していると、厨房から大きな声が聞こえてきた。


「もしもーし! 刑事さん! もしもしー、聞こえますかー、もしもーし…、あ、切れた…」


 刑事さん!?


 誰か、警察に通報したのか? この場が警察沙汰になるのはまずい! 下手すると、ここにいる全員がJMIに始末されるぞ…。


 こうなったら、逃げられなかった場合、ただで殺されるのはごめんだ。どうせ死ぬのなら、一矢報いて、彼らにもダメージを与えてやる。


 武器を準備しよう…。


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