表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/31

2章7 ケンジ 芸術学部2年(6)

「待ってください!」


 オレは勇気を出して立ち上がった。すると、強盗犯っぽい3人組はふり返って、こっちを見た。


「なんだ!? 文句でもあるのか?」


リーダーっぽい人が凄んで言った。


「文句はありません」

「じゃあ何だ!」


「スミマセン…。あ、宜しければ、コーヒーでも飲みながら、いかがですか?」


 彼らは、これからコーヒーを飲むところだった。邪魔したところだから悪いよね。


 オレも、もう1杯飲もうと思っていたところ、店を出て、また戻って来たばかりだ。何か注文した方がいい…かな?


「アニキ、飲みながら聞きましょう!」

「来い」


 オレは立ち上がり、2人と一緒にカウンター前まで行った。


「かーっ、冷たくて、うまい!」

「カフェオレ最高だね!」


 手下らしい2人は、ゴクゴク美味しそうにコーヒーを飲んでいる。オレも飲みたくなってきた…。


「で、何だ」

「実は…」


「実は、何だ?」

「あ、その前に、おねーさん、オレにもアイスカフェラテください」


「なんだと!」

「す、すみません」


「実は…、あの車を持っている社長さんって、今すごく体調が悪いんですよ」

「知ったことか!」


「さっき帰ろうとしたら歩けなかったんで、座って休んでいるところだったんです」

「だから?…」


「車の場所まで案内しようとしても、途中で倒れちゃうかもしれません」

「そいつは困るな…」


「倒れたら、目立って、警察も集まってくるかも…」

「マズいな…」


「すみません、440円ですぅ」


「え? 何が?」


 店員のおねーさんが話に入ってきた。


「アイスカフェラテ、440円です…」


「すみません…、先にお会計していいですか?」

「くそ! 早く払って来い!」


 えーと、小銭、小銭…。 げっ! 390円しかない。 アイスコーヒーに替えちゃだめかな…。


 うわっ! もう作り始めてる!


 あと50円足りない…。


「すみません…」

「何だ!」


「ご、50円貸してもらえませんか? あの…、必ず返しますから」

「なんで、俺がお前に50円貸さないといけないんだよ!」


 リーダーは怒鳴った。


「ですよね! じゃあ、ちょっと電話してもいいですか? 兄貴が近くにいると思いますから、お金持って来てもらいます」


「くそ! 手短にしろよ!」


 オレは携帯を取り出してケンイチに電話をかけた。


 トゥルルルルー、トゥルルルルー…


「アニキ…、コイツに電話させていいんですか?…」

「うおっ、そうだ、待て! 待て! 電話はすぐ切れ!」


「ええっ、でも…」

「いいから、早く切れ! 金なら貸してやるから!」


「あ、はい、ありがとうございます」


 プチッ。オレは呼び出し中だった電話を切って、ポケットにしまった。


「50円でいいんだな」

「ええ、そうです」


「ほら、ちゃんと返せよ」

「すいません。ありがとうございます」


「アニキの金なんだから、絶対に返せよ! ネコババはダメだぞ!」

「はい、分かりました。」


「はい、アイスカフェラテ、お待ちどうさま」


 ちょうど、出来上がったようだ。


「ありがとうございます」


 やったー、来た、来た。…ゴクゴク…ああ、やっぱりこのコーヒーは香りがいいなぁ。酸味もマイルドで…、少しミルクのコクと甘みがあって…。何より冷たい…。


「ケンジ!」


 ブハッ!


 急に後ろからケンイチが現われて声をかけてきたので、驚いてカフェラテを噴き出してしまった。手下の2人は、かからないように、ピョンと後ろにジャンプした。


 あー、もったいない!


 鼻の奥がツーンと痛い。


「ケンイチ! びっくりした。何でここにいる!?」

「ん、オレ、ここで打ち合わせしてたんだよ」


 3人組が目を白黒させている。「コイツ2人に増えた!?…」


 オレはケンイチに訊いた。


「ちょうどいいや。50円持ってない?」

「ああ、あるよ。ひょっとして、この状況で、その電話だったのかよ? ほらっ」


「お、サンキュー」


 オレはケンイチからもらった50円をリーダーに渡した。


「先ほどは50円貸してくれてありがとうございました。これ、お返しします」

「おお…、コイツは?」


「あ、これはオレの兄貴です」

「そっくりだな。どっから入ってきた?」


「オレ初めからここにいましたよ」

「そ、そうか…。まあ、いい…。で、お前、車の話はどうした」


 オレはグラスを口から離した。


「えっ、ああスミマセン。忘れてました。何でしたっけ?」

「テメエ! ぶっ殺されてえのか!?」


「ヒャア! スミマセン! スミマセン! えーと、えーと、そうそう、…車の場所まで案内しようとしても、途中で倒れちゃうかもしれないんですよ」

「それは聞いたな…」


「それで、倒れたら、目立って、警察も集まってくるかもしれません…」

「それも聞いたな…」


「だから、オレが代わりに場所、案内します」

「場所、知ってるのか?」


「知りません」

「知らないのかよ!!」


「でも、あの人から場所をちゃんと聞きますよ」

「そうか…」


「アニキ、それなら俺たちがアイツから場所を聞いて、行ってもいいんじゃないですか? コイツが案内しなくても…」

「うむ…」


「でも、アニキ」

「何だ、タケ」


「もし、アイツの言った場所に車がなかったらどうするんです?」


「嘘つきは泥棒の始まりだぞ。嘘はつかないだろう」


 マツと呼ばれている子分が口を挟んだ。


「分からないぞ。嘘の場所を言って、店を出た隙に警察に通報するかもしれない」


「つまり、人質を取って、一緒に連れて行けばいい、ってことだ。もし嘘を言ったり、通報したりしたら人質を殺す、と脅しておけばいい…。お前、それで代わりに案内するって言ったんだな」


「あ、いや、スミマセン。そこまで考えていませんでした…。人質になるのはいやだから、発言を撤回させてください」

「バカヤロー! 男なら自分の発言に責任を持て!」


「えー、でも、殺されるかもしれないんですよね…」

「大丈夫だ。車があったら殺さないから」


「警察がいたら、オレに銃を向けて盾にするつもりなんですよね…」

「大丈夫だって。警察がいなかったら、車の前で解放してあげるから」


「オレ…怖いよ」

「安心しろ。ほら、建前として、形式的に連れていくだけだから…」


「でも、オレまだ、かわいい女の子と付き合ったことないのに…」

「うるせー! そーゆうのは、お前だけじゃないんだ! ガタガタ言ってるとぶっ殺すぞ!」


「あのー、すみません…」


 おねーさんが声をかけてきた。


「はい?」


「彼女…、いないんですか?…」


 かわいいおねーさんが上目づかいに俺の目をのぞき込んでいる。


「は、はい…、…自慢じゃありませんが…」


「おい! お前ら、今はそれどころじゃねぇっ! 後にしろ! 来い!」


 いい所なのに、リーダーはオレを社長さんがいる奥の席に連れて行こうとした。


その時、


「待ってください!」


 そばで見ていた、ケンイチが言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ