2章5 クロスギ JMI渉外係長(5)
G――ケンイチさん――と詳しい打ち合わせをしようとした時、後ろから騒がしい音が聞こえてきた。振り向くと、3人の男たちが店に入ってきたようだ。子分らしき2人の男たちが、窓やドアを施錠し、ブラインドを下ろした。
3人はそれぞれ大きなボストンバッグを持っている。拳銃を持っていること、逃げて隠れようとしているところ、先ほど出入口のドアが開いたときに、パトカーのサイレン音が聞こえたところなどから考えて、銀行強盗でもしたのだろう。
バッグは見たところ重さは5キロから10キロほどだ。もしすべて1万円札であれば、1億5千万から3億円か…。もし銀行員が被害を抑えるため、千円札の束を詰めていれば、その10分の1…。
金を奪って銀行を出たまでは良かったが、逃走に失敗し、ひとまずここに潜伏するつもりか…。
厄介だな…。
彼らがいるだけでも、われわれの打ち合わせに支障が出てしまう。
その上、誰かが通報し、ここに警察が集まって来て騒ぎが大きくなったら、さらに面倒なことになる。
奴らは、客を奥の席にまとめるつもりか…。この状態では打ち合わせを続けるのは難しい。
それにしても、彼らは店内の客が持つ携帯やパソコンを取り上げないのか?…。
…携帯でこっそり通報されたらどうするつもりだ…。
…彼らには、誰も警察に通報しないうちに、速やかにここから逃げてもらわねばならない。
ここは、彼らに陰ながら協力するか…。
「クロスギさん、何か大変なことになってきましたね」
Gが声をかけてきた。
「そうですね…」
「どうしましょう?」
「彼らに大人しく協力した方が良さそうですね」
「ええ」
Gなら、彼らなど一瞬で始末できるのだろうが、やはり、彼も私と同じように考えているのだろう。
そのうち、彼らのリーダーらしきものが、やってきた。
「オイ、お前たちの中で車を持っているヤツはいるか?」
なるほど…、逃走用の車を失って、ここまで走って逃げてきたというわけか。この喫茶店近くに車を停めている客がいれば助かるのだが…。
1番端の客のひとりが、車を持っていると、声が聞こえてきた。
これで彼らは大人しく店を出て行ってくれる。私たちも、警察の事情聴取を受けないように、場所を変え、打ち合わせの続きをしなければ…、そう考えていた時…、
「待ってください!」
若い男の声が、つい立の向こうから、聞こえてきた。




