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2章4 G 殺し屋(6)

 俺は1回店を出たが依頼人に連れられて、また元の席に戻ってきた。彼は俺を奥の席に座らせると、俺のカバンをテーブルの上に置いた。カバンには護身用のグロックが入っている。


 使いたければ、自由に使えと言うことか…。


 突然、彼が身体をひねって後ろを向いた。次の瞬間、3人組の男たちが店にあわてて入ってきた。


 ちょっと危うい感じだ…。逃げるか…。


 いや、彼らのなわばりから簡単に逃げられるわけない…。


 3人組は手分けして店の窓と扉の鍵をかけ、ブラインドを下ろした。店内を外部から隔離したいようだ。


「お前ら! 死にたくなかったら余計なことはするなよ! 動くんじゃねぇ! お前だ! ジジイ! 新聞たたんで帰ろうとしてるんじゃねえ! おい、オヤジも! 電話から手を放せ! へそが2つになるぞ!」


 男が拳銃をちらつかせた。子分らしき2人も同じ物をズボンのベルトに挟んでいる。


 あれは…、トカレフか…。54式?…。これは暴発しやすいから、ズボンに入れていると、自分のタマを打っちまうぞ…。


 …いや、よく見ると、安全装置が付けられている。スライドのギザギザが斜めになっているから213式拳銃か。


 中国製、輸出向けに作られたトカレフ。9mmパラベラム弾を使用できるから欧米でも汎用性が高い。ヤツらは暴力団関係者かもしれないな…。


 それにしても、コイツらはバカか? よりによってJMIのなわばりに銃を持って飛び込んで来るなんて…、死にたいのか?


 今、ヤツらは水を飲んでいる…。どうもここに用があるわけでもなさそうだし、逃走中で隠れたいだけかもしれない。


「オイ、お前たちの中で車を持っているヤツはいるか?」


 ヤツらのひとりが尋ねてきた。


 車が必要か…。俺は近くのコインパーキングにレンタカーを置いてある。万が一の逃走用だ。だからヤツらに渡すわけがないが…。


 …待てよ…、ヤツらと一緒に逃げられないか?…。自然に、違和感なく…、例えば、俺が人質になって…。何しろまったく自慢じゃないが、俺は人質になるのは慣れているのだ。


 俺が車を持っていると伝える…。すると停めてある場所を案内しなければならない。銃を持った男が3人と俺、この場から一緒に店を出て逃げられるだろうか?…。


 いけるか?…。


 そもそも、JMIは、なぜヤツらの侵入を許して好き勝手にさせているのだ? 何か動けない理由でもあるのか?


 もしかして俺が思っているほど、ここに彼らの戦力は集まってないのかもしれない。銃を持った敵が3人では、ここで全員を始末し損なうか、JMIの被害が大きくなる可能性があるのか…。


 あるいは、ここで騒ぎを大きくしたくないと考えている…か。


 彼らが大きなカバンを持って走って逃げてきたことを考えれば、強盗でもしたのだろう。今頃、警察が捜査をして包囲網を展開しているに違いない。


 ここに強盗犯がいると知って警察が集まれば、後でこの喫茶店は封鎖され、その後、現場検証が行われるだろう…。


 外部の強盗事件が関与しているとなれば、JMIでも揉み消すのは難しくなる。


 警察に見られたくないもの、知られたくないものがここにある可能性がある。彼らは警察沙汰になることを避けたいと考えているだろう。もしそうなれば、全力で証拠の隠滅をはかることも考えられる。全員を始末し、あの強盗犯にすべての罪を被せてしまうかもしれない。


 つまり、この店の状況が警察に知れることは、俺にとってもまずい。


 となれば…俺のこれからの方針は1つ。


 警察に知られることなく、ヤツらと一緒に店を出て逃走することだ。


 JMIの彼らは、俺を逃がすつもりはない。しかし、今ここで銃を持った3人とことを構え、警察沙汰になることは絶対に避けたいだろう。


 おそらく俺は追跡されるが、ここに留まるよりも逃げ延びらせる可能性は高い…。うまく撒いて隠れればいい。


 よし! それで行こう!


「車は、持っています」


「何! お前、持っているのか…」


「ど、どこにある?」

「近くのコインパーキングに停めてあります。案内しましょうか?」


「よし、頼む」


 …これでひとまず店を出られる。


 大丈夫か?… 依頼人が、俺が店を出るのを許すか…。大丈夫。きっと大丈夫だ…。


「アニキー、コーヒー出来ましたよー」

「おー、飲んだら店を出るぞ!」


 ヤツらが向こうに行こうとした時、目の前に座っていた彼が、突然立ち上がった。


「待ってください!」


 えっ…。


 何をするつもり…、


 かな?…。


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