3章12 ウメダ 銀行強盗(8)
「車、来ないな」
タケともう1人が車を取りに外へ出て、どのくらいが経った? 20分以上経ってるんじゃないか?
駐車場までは歩いて2分くらいと言っていた。5分もしないで帰って来ると思ったが…。逃げたとか、警察に駆け込んだ可能性はないよな…。警察に身柄を拘束されているとか?…。
「確かに、遅いですね。少し外を見て来ていいですか?」
クロスギが言ったので、俺は「頼む」と言った。
彼が動こうとすると、あの長澤まさみ似の女性客が、
「私も付いて行っていいですか?」
と言った。続いて、
「ずるい! それなら私も!」
と店員の娘も言い出した。
くそっ!
コイツ、クロスギ…、もてるのか!?
クロスギは困った顔をした。連れて行こうとしないのはいいが、何かムカつく…。
ちょっとは、ありがたく喜べ!
俺なんか、キャバクラ以外の店でもてたことないんだぞ!
「すみません…、すぐに戻るのでここで待っていてもらえませんか?」
クロスギは言う。
ムスメの方は、マスターに睨まれ、大人しく引き下がったが、女性客は涙目で言った。
「お願いします…。心細いです。逃げませんし、邪魔もしませんから…。近くにいるだけもだめですか…」
チキショー! 俺もいっぺん言われてみてー!
クロスギは俺を見た…。
何で、俺を見る…。
俺が「ダメだ!」って言えば、俺が嫌なヤツみたいじゃないか。
…。
そうだ…、「行っていい」って言えば、クロスギは困り、俺は嫌なヤツにならなくてすむ…。
そうするか…。
「あ、あー、行ってもいいぞ。ただし、すぐに戻って来いよ」
女性客は顔をほころばせた。クロスギは呆れた顔をして俺を見ている。
へっ! どうだ。
彼はテーブルの上の携帯を取り、「では」と言って店を出た。女性は自分のバッグを肩に掛けてクロスギについて行った。
…。
落ち着いた音色のピアノ曲だけが静かに聞こえる
クロスギがいなくなって不安になってきたのか?…。
バカヤロー。俺はゲイじゃない、そんなわけあるか。
ヤツら、自分が安全になったからって警察に通報なんてしないよな…。
タケだってちゃんと車を持って来るかどうか…。
そう、その心配だ。
きっと大丈夫だ! 戻ってくる!
オレは金が詰まったバッグの積んであるテーブルに腰かけ、拳銃をなでた。
その時、
ガンガンガン! ガンガン!
非常口を外から叩く大きな音が店中に響いた。




