表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/31

3章10 G 殺し屋(10)

 刑事たちは、電気屋とマスターと話すと、大人しく帰って行った。


 本当に帰ったのか?…、それとも、応援を呼びに行ったのか?…。


 しかし、一般人をこの場に残したまま2人とも店を出るだろうか?…。銀行強盗犯に人質を取らせ、立てこもる準備を十分させてしまうことになる。


 彼らの間で何が起きたのか…。俺はその説明を待った。


 電気屋とマスターは俺たちの前に来た。


「皆さまに、打ち明けることがあります…」


 マスターは口を開き、皆がマスターに注目した。


「今まで隠していて、申し訳ありませんでした…」


 マスターの言葉が濁る…。


「どうした? オヤジ、早く言え」

「マスター、打ち明けていいですよ」


 ウメダやクロスギが促がす。


「はい…、実は…、今、この場に…、Gが隠れ潜んでいます…」


 フガッツ!!!


 俺は、びっくりして鼻を鳴らしてしまったが、その時、爺さんが声を荒げた。


「わしは逃げも隠れもせん!」


 入れ歯が外れて口から飛び出たが、爺さんは落ちる前にパシッと空中でそれを掴んだ。


「ハハハッ、爺さんのことじゃねえよ」

「誤解させてすみません…」


 ウメダとマスターが言った。


 そうだ、誰が爺さんのことを言うか。


「じゃあ、何だ! わし以外おらんじゃろ」


 爺さんは周りを見る。


「えー、アレです。黒くて、いつもコソコソ隠れているアレです…」

「ああ?」


 マスターは言う。


「ご老人、ほら、ゴ、で始まる4文字のアレです」


 クロスギが助け船を出すと、爺さんは「あ、あーっ」とにやけた。


 俺はGと言われて、一瞬、自分かと思ったが…、「ゴで始まる4文字」とは?…。


 …。


 …ゴルゴ13か!!


 俺は今、黒い服装だ。そして殺し屋だ。密かに尊敬しているのが、ゴルゴ13、だから自分の通称をGとした…。誰にも言ってない秘密だ…。


 彼らは遠回しにGは俺だと言っている?…。


 マスターやクロスギはJMIの人間だから俺の正体を知っててもいい。


 だが、ウメダと爺さんは何だ! どういうことだ。


 そもそも、どうして、俺が話題に上る!? どうして、脈絡もなく話がそうなる!?


 今、皆は刑事が帰ったことの説明を求めているんじゃないのか!?


「オヤジ、そんなこと隠してたって俺は気にしないぜ。お前もそうだよなぁ」


 ウメダは、彼の目の前の女性店員を見た。


「いえ、わ、私は…前から、知ってはいましたから…」


 ウッ!


 俺が、ここに来ているのは、あんなバイトのような女の子も知ってたってことか!?


 いや、そんなはずはない。そんなはずはないが…、今朝から今までのことを思い起こすと、自信が持てない…。


 マスターは話を続けた。


「そして…、彼は、電気の配線工事に来たのではありません…。…Gを退治しに来たのです…。皆さま…、黙っていて、申し訳ありませんでした」


 ち、ちょっと待って…、俺を退治?


 と言うか、申し訳ないのは、黙っていたこと?…。


 クロスギが言う。


「マスター、事情はお察しします。そこまで深刻に考えなくてもいいと思いますよ」


 俺にとっては、十分、深刻です…。


「そうだ。どの店でも抱えている問題だじょ…」


 爺さん、話も、入れ歯もかみ合ってないよ…。


 マツが叫ぶ。


「この際、みんなでGを見つけて殺しましょう!」


 何てことを言うんだ! お前は黙ってろ!


「マツ、俺たちにそんな時間はない。ヤツにはホウ酸団子でも食わせとけばいいんだ」


 絶対に食うか! アホ!


「皆さん、どうぞお気遣いなく、専門の私が責任をもって駆除しますので…」


 電気屋は言った。いや、電気屋じゃないんだった…。じゃあ、何だ? 彼もプロの殺し屋か? そうは見えないが…、でも、なぜ、ここで公言する?


 俺の依頼人は、隠れ潜んでいるGを駆除する、と言われて、何で平然としている?


 俺に仕事を依頼する予定だったんじゃないのか?


 と言うか、依頼人とおそらく係長のクロスギにとっては、隠れ潜んでいるも何も、この俺がGだと分かり切ったことじゃないのか!?


 落ち着け! 考えろ! この状況は何だ?


 …どんな組織も一枚岩じゃない…。それにしても、幹部の目の前で意思疎通が出来ていなさ過ぎる…。


 …。


 初めから、俺を始末するのが目的だった!?…。


 仕事の依頼は、俺をここにおびき寄せるため?…。


 いや、そんな回りくどいことするはずがない…。俺を殺す機会なんて、この喫茶店に入ってからいくらでもあったはずだ。


 彼らは、俺から取り上げた武器をまた俺に返し、さらに銀行強盗犯の拳銃と爆弾を俺に管理させている。


 俺を殺すのが目的ならそんな行動は絶対に取らない…。


 そうだ…。落ち着け。大丈夫だ。状況を整理しよう。


 ここには俺の他、JMIの渉外係長のクロスギ、そして依頼人、喫茶店のマスター、女性店員、Gを駆除すると言った人物がいる。


 これまでの状況を考えると、おそらく、この5人がJMIの関係者だろう。そして、俺がGであると認識しているのは、依頼人、それから役職的にクロスギの2人…。残りの3人は、マスターは「Gが隠れ潜んでいる」と言っていたので、俺、Gが誰なのか知らない。


 銀行強盗犯の内、2人、ウメダとマツ、それから、一般客の女性と、爺さんの2人がいる。


 ウメダとマツは、金を持って逃げるだけだ。彼らにとっては、Gが誰であるか、いてもいなくても、殺っても殺らなくても、どうでもいい問題だろう。


 女性は、今はトイレに行っているが、JMIとの関係性は今のところ見えない。


 が、爺さんの言った「どの店でも抱えている問題」とは何だ? 


「皆さま、お騒がせして申し訳ありませんでした」

「では、私は作業に戻っても…」


 マスターと電気屋の男が言うと、ウメダは「ああ、行け」と言った。電気屋はバッグを持って、厨房へ行った。


 それと入れ違いに、トイレから女性が戻ってきて、俺に声をかけて来た。


「どうなりましたか?」


 俺が聞きたいよ…。


 と思ったが、彼女がトイレに行っている間に起きたことを説明した。


「えっ! やだ! ゴキブリがいるの!」

「えっ、ゴキブリ?」


 彼女は身震いして、ゴキブリと言い、俺は訊き返した。


「え、Gってゴキブリのことじゃないの?…」

「あ…、ああっ、そうそう、ゴキブリだよ。そうゴキブリ、ゴキブリ以外に何かある?」


 俺はあたふたしてしまった。


 だからマスターがゴキブリという単語を聞くたびに、耳と目線をピクつかせているのに気づかなかった。


 さっき爺さんに「誰が爺さんのことを言うか」とか、「話が噛み合ってない」とか思ったが、自分も同じじゃないか!


 人の振り見て我が振り直せ、だな…。恥ずかしい…。穴があったら入りたい…。まったく、俺は自意識過剰のどうしようもないヤツだ。


「それで、何で、刑事さん帰ったのですか?」


 女性が訊いた。そうそう、俺もそれが知りたかったんだよ。


「おっ、知りてえか。くくっ、笑っちゃうぜ。あの刑事ども、さっきヤツの害虫駆除のバッグの中身だけ見たんだ。俺たちのバッグの中は見ないでよお…」


 女性が興味深そうに聞いた後、ウメダにこう言った。


「あ、あの、私もバッグの中…、見てもいいですか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ