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3章2 マスター 喫茶イコイ(6)

「お忙しいところ失礼します。私たち谷田世警察署のものですが…、ちょっとよろしいですか?」


 警察か。いつもは頼もしく、事件がある時はありがたいのだけど…。


 今は…。


 どうする? 彼らに分からないように、この状況を警察に伝えるか…。


 それとも、誤魔化すか…。


 どちらが良い?…。


 彼らは、もうすぐ車をこの店に持ってくる。そうしたら3人組はこの店を出て行く。


 もし、銀行強盗がこの場にいると露見し、彼らが逆上して銃撃戦にでもなったら…、爆弾が爆発したら…どうなる…。


 そう、私が考えていると、クロスギ様が言った。


「マスター。構いませんよ。電気工事の作業と、打ち合わせは進めておきますので、応対をどうぞ」


 そうだ…。私たちとお客様の命が第一だ。3人組は、もうすぐ出て行く。私は警官に小走りで近づいた。


「はい、何でしょう?」


 2人の警官は手帳を開いてバッジを見せた。ひとりは50代の温和そうな男、もうひとりは20代の目つきの鋭い男の刑事である。


「ええ、実はですね、この商店街で銀行強盗がありまして…」

「銀行強盗ですか…」


「ええ、現在犯人は逃走中です」

「逃走中…」


「ええ、被疑者は3人、いずれも30代男性です。お心当たりはありませんか?」


 話している警官は私を見つめ、もうひとりは店の中、他の人を見回している。


「えー、すみません。早朝からずっと店内で仕事だったもので…」

「で? 心当たりないのですね?」


「はい…」

「分かりました。ありがとうございます」


 フウ…。誤魔化せたかな?


「では、他の方にもお話を伺わせてください。入ってよろしいですね?」


 うっ! 駄目だとは言えない。おかしいと思われてしまう。しかし…誰かがボロを出す可能性が…だがしかし…。


「も、もちろんです」


 私は、ドアの脇に退くと、刑事たちは店に入ってきた。


 話している間に、マツは奥に移動していた。


「ところで、今日は休みですか?」


 歩きながら、若い方の刑事が訊いてきた。


「い、いえ、朝は営業していたのですが、今は作業と打ち合わせのため、閉店中です」

「そうですか」


 客席の奥、皆が集まっている所まで来ると、中年の刑事は同じことを訊いた。


「皆さん。この商店街で銀行強盗がありました。犯人は30代男性が3人です。お心当たりはありませんか?」


 刑事たちの目が光る。


「私はありません」

「私も…」


 クロスギ様とコマキ様が口火を切った。すると他の者も続いて同じように言った。タイジさんも冷や汗を流しながら否定した。


「そうですか…。ご主人、念のため犯人が隠れていないか店内を見させてもらってよろしいですか?」

「ええ、どうぞ…」


 若い刑事はカウンター内や、厨房を確認しに行った。中年の刑事は広い店内をフラフラ歩いている。


「こちらはいません」

「そうか…」


 若い刑事が戻って来て、中年刑事がこちらを見回した。


「皆さん、ご協力ありがとうございました…」


 ほっ…と、ため息がもれる。これで帰ってくれるだろう。


「お忙しいところ、すみませんでした。…ところで…、何の打ち合わせだったのですか?」


 えっ、何の…、何のって?


 誰が答える?


 私はひとりひとり顔を見ていった。


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