2章15 アマミ 喫茶イコイ 女性店員(5)
なぜか、福山雅治さん――に似ている人――がまとめ役をすることになったみたい…。
3人組は武器を取り上げられているようだから、もう撃たれる心配はないわね。
その後、2人が店を出て行った。私はトレーにピッチャーとコップをいくつか載せて、店の奥へ行った。
「店長、お客さまたちに、お水を差し上げます」
「良く気がつくね。ありがとう。あと私はマスターだからね」
「はい、すみません。マスター」
「お水はいかがですか?」
「ありがとうございます」
「ありがとうございまーす」
「どうも」
「ふみゃ、ふみゃ」
ペコリ、と会釈。
みんな感謝してくれた。感謝されるのは気持ちがいい…。
おじいさんは水を一気に飲み干すと、もう1杯希望した。よほど喉が渇いていたのね…。
と思ったけど、水を注ぐと、テーブルの上に置いてあった入れ歯をコップに入れて、シャブシャブすすいだ。落として汚しちゃったみたいね…。
私がそこから離れると、入れ歯を大きく振って水を切り、また口にはめた。
隣に座っていた女性は水しぶきを避け、眉をひそめた。
福山雅治さんは、慣れた手つきで拳銃から弾のカートリッジを取り出し、きれいにそろえて置きなおした。それから爆弾からコードを引き抜いた。
キャッ! ちょっとびっくり。爆発するわけない…よね…。
本物の拳銃が置いてある…。映画やドラマの中でしか見たことない。
「あのぅ、私もちょっと触ってみてもいいですか?…」
「アホ! ダメに決まってるだろ」
「指で、ちょっとだけでも…」
「ダメだって言ったらダメだ! あっち行け!」
その時、奇跡が起きた…。
福山雅治さんが私の手を両手で取り、耳元で、「では小指を伸ばして…」と囁いた。そうして私が小指を伸ばすと、拳銃の星のマークに触らせた。
冷たくも熱くもない金属的な感触があった。けど、そんな感覚は一瞬で忘れてしまった。拳銃なんて、もう、どうでもいい。
記憶するべきは、耳元で囁かれたセリフと、彼の息づかい、手のぬくもり…。かすかな海の香り…。
ああ、もう、一生、耳と手は洗わない!!




