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2章13 G 殺し屋(8)

「少々、よろしいでしょうか?」


 俺が、依頼人が持ってきてくれた水に口をつけていた時、つい立の向こう側から声が聞こえた。


「はい、私はJMIで渉外係長をしております、クロスギと申します」


 ブフォッ!!


 俺は口に含んでいた水を吹き出してしまった。目の前の依頼人は、水がかからないように、咄嗟にメニューを広げてガードした。


「す、すみません!! 申し訳ありません! 水かかりませんでしたか?」

「あ、大丈夫です」


「本当にすみませんでした」


 俺は必死になって誤った。カバンからハンカチ――その時、グロックがチラッと見えた――を取り出した。それからハンカチで彼を拭こうとしたが、濡れているのはメニューとテーブル、そして床くらいだった。彼は何でもないように許してくれた。あるいは感情を顔と言葉に表さなかっただけかもしれないが、彼が逆上しなかったことに、ほっとした。


 それにしてもJMIの渉外係長だと! 何でそんな大物がここに来ているんだ!?


 渉外係長は、一般の会社のヒラ社員より1つ上、という感じの役職ではない。内閣に例えるなら外務大臣クラスの大幹部であり、権限で言えばそれ以上だ。


 …と、Kから聞いたことがある。


 彼は確か…10時少し前に、この依頼人と瓜二つの男と2人で入って来た…。依頼人がJMIの人間なら、あの瓜二つの男もそうだろう。


 なぜだ? 俺たちの交渉の監視か? いや、彼ほどの地位の人物がそんな雑事をするはずがない。


 なぜ、この一般人が入れる喫茶店に2人で来ている? 機密の打ち合わせなら、JMIの会議室ででもすればいい。2人席に向かい合って座っていた、と言うことは、ここで他の誰かと約束がある、と言うわけでもないだろう。


 ただ、仕事の合間に休んでいただけか? 10時前からもう休憩か?…。んな、わけない。


 強盗犯がこの店に来るのが分かっていた? この3人組は初めからJMIの仲間だったのか?…。


「あらためまして、クロスギです」

「ウメダだ。あとコイツらがマツとタケ」


 …その可能性はない…。彼らは、自己紹介し合い、握手している。


 分からない。彼らがこの場にいた理由…、それは不明だ。が、このクロスギは依頼人より地位が高いことは間違いないだろう。


 もし彼が、俺は今回のネズミを始末する仕事には役不足だがJMIの役に立つ、と考えてくれるのなら、俺に生きるチャンスはある。彼らから逃げる必要もなくなるし、戦う必要もなくなる。


 やっと見えて来た光明…。あ、いや、今まで何度か見えてきたが、すぐに消えてしまった光…。


 また見えてきた…。


 彼、クロスギに全面的に協力するのだ。


 しかし、彼からの評価が高すぎると、またネズミの仕事を依頼されるかもしれない。


 だから、ほどほどに…、非常に熱意があり、協力的なんだけど、能力的にはそれほど期待出来ない…感じに協力しよう。


 これしかない。


 しかし、さっきのように依頼人に止められることはないか?…。…考えてもしかたない。


 俺は立ち上がって言った。


「私にも協力させてください」


 俺は依頼人を、チラッと見た。制止するつもりはなさそうだ。


 よし! いける。


「コマキと言います。車のキーはここにあります。案内も問題ありません。あとは車まで無事に到達できるように、経路上の安全性を確保することですが…」


「そうですね。偵察が必要ですね」


 クロスギは俺を見て頷いて言った。


 よっしゃー!


 俺は心の中でガッツポーズを決めた。


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