49話 醜いカタマリ
ブクマありがとうございます!
久々にゆったりした朝を迎えた。
王都へ来るまでの馬車移動は朝早かったからな。
散歩したい気分だけど、単独行動は厳禁なのでやめた。
部屋でピコと戯れつつ、朝ご飯をあげた。
そして一階に降りて朝のコーヒー。
そう、王都ではコーヒーがあった! これはかなり嬉しい収穫。
コーヒーって暖かいところでしか栽培できない気イメージなんだけど南のほうで栽培してるのかな?
村に持って帰りたいリストに加えた。
いざ飲んでみる。……マッズ。酸っぱいです。残念。
ふ~、今日はどんな一日になるんだろう。
村の物産を売りに出して、買い出しとかかな?
ん~でも、それって俺たち必要ない気が。
あ~でもストライクバードの卵の売り上げが軍資金になるしな。
あれこれ考えてるうちにみんな集まってきた。
一名除いて。
「は~、あの子ってば」
「本当に朝弱いんだねぇ」
「すんません」
サブさんも呆れ気味だ。
「ほっといて行って来いよ、俺はここで待機してるからよ!」
「え? 行かないんですか?」
「俺が行く必要ないだろ」
リーダーは椅子にふんぞり返っている。
「リーダーは二代目の事苦手ですからね」
「苦手じゃねぇよ!……嫌いなだけだ」
ほほう、リーダーが嫌いな人物なのか。ちょっと意外だ。
「まぁいい。待たせてはいけないからな」
設楽さん、リーダーを除く四名でリーホ商店に向かうことにした。
――――
受付の人に確認し、待合室のような場所に通された。
十五分ほど待つと、二名が入ってきた。
「コンコンコン、失礼します」
優秀そうな女性秘書と一緒に現れたのは、醜悪なハゲ親父だった。
ハゲでデブでネズミっぽい容姿。
人を外見で判断してはいけないが、関わりたくない人物だ。
そのニヤニヤ顔がむかつく。リーダーもニヤニヤしてるがニヤニヤでこんなに違うもんなのか。
「やぁ、クラーク久しぶりだねぇ、うへへ」
「お久しぶりです、二代目」
「は、は、おや見ない顔だねぇ」
視線は俺のほうを向いた。
はぁ、リーダーが来たくなかったわけがわかるぜ。
「初めまして、アカイと申します」
「彼は、ストライクバード捕りの名手でして、今回ご同行させていただきました」
サブさんが上手くアシストしてくれた。
「ストライクバァド! あれはいいねぇ!
見たよ見たよ、に、二十三個だっけぇ? うははすごいすごい」
「あ、ありがとうございます」
ちょ、まじでなんだよコイツ。
待てよ『二代目』って言ってたな。
確実にこいつ先代のバカ息子だろ。
視線は俺のピコ専用バッグに。
「へ、へぇ、ストライクバァド飼ってるんだね」
「ああ、そうですね」
「ふうーん、もったいないね。あ、大きくなったら買い取ってもいいよ、げぶへへ」
「……は、はぁ」
イライラしたけど、我慢した。
口角泡が汚い。醜悪過ぎる。
「うはひ、買い取り金額は、昨日のうちに出しておいたよ。
お、お、おい!」
「はい」
秘書が見積書のような紙を村長に渡した。
今回、村からの品は以下だ。
ストライクバードの卵 × 二十三
ワニの革 × 二
ホールラビットの革 × 五十三
ボア革 × 八
ホッグ革 × 十二
小麦等 × 大量
そして表示された価格は以下だ。
ストライクバードの卵 × 二十三 ⇒600万
ワニの革 × 二 ⇒11万
ホールラビットの革 × 五十三 ⇒25万
ボア革 × 八 ⇒10万
ホッグ革 × 十二 ⇒5万
小麦等 × 大量 ⇒42万
うほー! ストライクバードの卵高い!
こりゃ、村長が壊れるのもわかるわー。
嬉々としたおれとは裏腹に村長は複雑な顔をしている。
「ふぅーむ……」
「どうだいクラーク、うふふ」
「穀物の値段はどうにもならんのですか?」
「ならないよ~」
「昔の半額にもならないなんて」
え……半額?
「半額ってど~ゆ~ことですか?」
「ぶひひ。今、食糧は余っている。だから価値は暴落さ~、げひゃはは」
そーいえば王都では物価が上がってるって言ってたな。
これって、物価が上がってるんじゃなくて、買い取り額が下がってるってことなんじゃ。
「そこをなんとかならんのか。二代目」
「むぅーりぃー」
こ、このハゲネズミ。どう育てればこんなクズが育つんだ。
初めてチート能力が欲しいと思ったよ。デ〇ノート的なものが。
「まぁ、いいんだよー、嫌なら取引しなくてもさ!」
「そ、それは困る」
「だったら早く決めてよ、ほらサインだよ」
村長は、しぶしぶサインした。
「はい、おしまーい、じゃ~ね~」
クズ野郎と秘書は席を後にした。
「――!、な」
「はい、ストップ」
「ん!」
「言いたいことはあるだろうけど、ここはリーホ商店のお膝元だからね。
どこでなにを聞かれているかわからないだろう?」
「は、はい」
サブさんの制止がなければ怒り爆発していたところである。
やりきれない思いがあったが、どうすることもできないのでリーホ商店から出た。
――――
七百万円近い金額を受け取り、四人は宿屋に戻った。
設楽さんとリーダーが一階で待っていた。
「お~、おかえり、どうだった?」
「どうもこうもありませんよ! なんなんですか! あいつ!」
「ガハハ、あのバカ息子だろ? 名前はなんだったっけな」
「タルジじゃ」
「そうそう! タルジタルジ! 相変わらずブヨブヨしてたか? ガハハ」
「ブヨブヨというか、グチャグチャですよ! なんすか! あのバカにした態度!」
俺は肥えたハゲネズミを思い出して、再度憤怒した。
「はぁ、先代はいい奴だったんだがな」
村長が思い出話を話してくれた。
先代のリーホさんは非常に良くしてくれたらしい。
村の物産を一括で買い取る手法を用いて、一気に大商人にのし上がった人物だ。
一括で買取るっていうのは、それだけ莫大な資金が必要であり、通常の商人では不可能である。
だが、リーホさんは持前の行動力と多額の借金をすることで、どうにかやりくりし、一代で王都でも指折りの商人になった。
村長とは二十年弱の付き合いだということだ。
「一年前に他界しての……それ以来二代目が取り仕切っておる。
タルジも、もともとは可愛い坊主だったんだがのぉ。
リーホには商才はあっても、子育ての才能は無かったらしい」
村長は寂しそうに話を締めた。
「あ、あそこ以外で売ればいいじゃないですか!」
「なかなかそうもいかないんだよ」
「ど、どうしてですか??」
「そもそも一括で買取ってくれるところが多くない。
村の物品を一括で買取れる商店なんて数えるぐらいだろう。
だからといって、簡単にほかの商店に鞍替えするのもリスキーだ」
「な、なんで」
「商売人は横で繋がっているからね。
基本的に情報は筒抜けになってると思ったほうが良い」
「そっか」
俺も昔営業で同じような経験をしたことがある。
とある地区で不義理をしたら、地区全体から総スカンをくらってしまった。
横の繋がりってのは強いところは強いからな。
設楽さんはいつもみたいに考えていたようだが、重い口を開いた。
「――個人で売る方法は?」
「ん? 個人か……。それは店をやるってことかい?」
「そうね、露店とか、間借りして短期のお店とか」
「そうだな。露店は商業組合から許可を得れば、特定の露店市で売ることはできるかな。
店に関してはどうだろうね、店舗を借りて、販売申請をする必要があるね」
「ふ~ん、後で露店に行ってみたい」
「ふふふ、了解しました、お姫様」
設楽姫はお昼近くになったので、非常に元気そうだ。
しかし、店か。あんなハゲネズミに売るぐらいなら、自分で売ったほうが良さそうだよなぁ。
ただ、そんな簡単に行かない気もする。
販路構築ってのは骨が折れるからな。
「まぁよい、軽く飯を食ったら出発するぞ。お前たちはついてくるのか?」
「村長、この後は何する予定なんですか?」
「ここから四日間は買い出しじゃ。
なじみの店があるからの、必要品を買ってくる」
「そっか、どうしようか設楽さん」
「今日はご一緒しましょう」
「わかった」
王都二日目は買い出しに同行することにした。




