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三人揃えば異世界成長促進剤~チート無し・スキル無し・魔法薄味~  作者: 森たん
第十五章 薄味→濃口魔法

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241話 ガラパゴスクラーク村


「魔法研究を止めてほしい」


 と言い放った先生。


 対する設楽ちゃんは――

 間の抜けた、間の抜けまくった声で「なんで?」と言った。


 俺も同じ気分だ。何故魔法研究を止めないといけないのか?

 予想外過ぎて、開いた口が塞がらない。


「……危険だからだ」

「危険?」

「これ以上……魔法研究をすれば危険だ」

「そ、そうなんですか?」

「そうだ」


 先生は断定する。しかし理由がわからん。


「なんで危険なんですか?」


 先生は一旦閉口し、少し考えた後で――


「刺激的過ぎる」

「し、刺激的……ですか?」

「そうだ。魔法ランプもそうだし、魔法灯もそうだ。

 爆発的に増えた。あの保守的だったクラーク村長でさえも推奨し始めた」

「あ~……それはそうかも」


 魔法ランプに関しては、クラーク村長は戸惑っていたのを覚えている。

 だけど魔法灯に関しては、まあいいんじゃないのってスタンスだった。

 その結果、クラーク村は常に明るい村となった。


「魔法製品は刺激的過ぎる。このままだとどんどん普及してしまうだろう」

「え? それがいけないんですか?」

「そうだ。このままだとクラーク村が…………壊れていく」

「壊れる? ん? よ、よくわからないんですけど」


 設楽ちゃんの顔を見てみたが、設楽ちゃんの頭上にハテナマークが……見えない。

 くそ、わかんないの俺だけかよ!


「――クラーク村は」


 先生がポツリと呟き話し始める。


「ガラパゴス諸島のようなものだ」

「ガ、ガラパゴス?」

「ガラパゴスには外敵がいなかった。だから独自の生態系が生まれた」


 何かのドキュメンタリーで見たことがある。

 ガラケーのガラもガラパゴスのガラだ。理由は……知らん。


「クラーク村は知っての通り、他の村や町と交流が殆どない。

 ドルゼ村との交流が途絶えていた時期は本当に陸の孤島だった。

 でもそれで成り立っていた。年に二回王都に買い出しに行けば成り立っていたんだ」

「そりゃあ、まあそうですね」


 クラーク村は三十年近く前に開村した村だ。

 俺たちがこの世界に来たのは三年前。あの頃は経済状態が良くなかった。

 だけど、飢えて死ぬレベルじゃなかった。


 俺たちがもしもこの世界に来なくたってなんとかなっていたと思う。


「クラーク村が陸の孤島だった理由はいくつかある。

 まず場所だ。他の町から遠い。一番近いドルゼ村からも馬車で二日はかかる。

 気軽に来れる場所じゃない。むしろそういう場所を選んだと聞いている」

「選んだ?」

「そうだ。三十年前は王都が非常に荒れていたらしい。ブライト王が失踪したからね。

 その余波でクラーク村長が住んでいた湖の町も荒れたそうだ。

 だからクラーク村長は王都から離れた場所…………王都に依存しない村を作ろうとしたらしい」

「へ、へえ」

「リーダーが酔っ払いながら話していた内容だけどね。

 成り立ちから陸の孤島で構わないスタンスだったんだよ、この村は。

 だけどこの場所は素晴らしい。土壌は豊かで水も豊富。そして災害に強い。

 この前橋が崩れたけど、あれほどの豪雨は十年以上ぶりだったそうだ。

 まあ余程のことが無い限り、殆どが完結するんだこの村で」


 ――沈黙


 村の成り立ちを聞いたが、結局何故魔法研究の禁止に繋がるかピンとこない。

 それを察してくれたのか――


「ガラパゴス島は五百年ぐらい前から人が出入りするようになったらしい。

 確か海賊が根城にして、食料としてヤギを放った。

 それぐらいならまだ良かった。大航海時代になりゾウガメは乱獲され、

 元々いなかったヤギが繁殖したりしてどんどん生態系は崩れていった」

「ゾウガメってあのデッカイ亀ですか?」

「そうだ」

「あ~なんか、絶滅の危機的なニュース見たことある気がします。

 ん~甲羅が高く売れたりするんですかね?」


 ゾウガメが乱獲された理由は知らねえなあと思っていたら――

 「食べてたのよ」と設楽ちゃんが呟く。


「た、食べた? ゾウガメを?」

「その通り。ゾウガメは捕まえやすく、食料としては長持ちする。

 航海時代にはぴったりの食料だったんだ。

 そして時代は進み、今度は観光地となった。そうすると滑走路が出来たり観光施設が造られる。

 そうすればどんどんと環境破壊が進む。ガラパゴス島は人間によって破壊されたんだ」

「ほ、ほお」


 やべえ……やっぱドキュメンタリー番組みたいだ。


「で、でもそれがクラーク村と何の関係が?」

「クラーク村が陸の孤島だった理由は、さっきも話した通りこの村だけである程度完結していたからだ。

 だがもう一つ大きな理由がある」


 設楽ちゃんの顔を見ると、少~し不服そうな顔だ。

 めんどくさそうに息を吹き出して「ゾウガメがいない」と呟く。


「その通り。クラーク村にはゾウガメがいない。

 つまり他の村の人たちが敢えて来る必要性が無いんだ。

 勿論、資源は豊富だ。だけど馬車で何日もかけて来る必要がない。

 ドルゼ村と交流があったのは、開村の段階から協力を仰いでいたかららしいしね」

「な~るほど」


「だけど……今はゾウガメがいる。ゾウガメに成り得るモノがクラーク村にはある」

「それが魔法ランプとか魔法灯だと?」

「そうだ」


 先生は断定した。


 う~む……場がピリピリしている気がするのは勘違いではないだろう。

 魔法少女と、魔法反対派が対面しているのだ。

 これは……嫌な感じだ。


「で、でも、そんなに危険な事ですかね? ランプがゾウガメってことは、

 ランプを盗りに盗賊団が現れたり?」

「可能性はある」

「ええ~?」


 ちょっと信じ難い。この世界で盗賊団?


「というよりはどう転ぶか予想できない。

 そうだな、考えられる可能性としては、設楽さんかエリッタさんの拉致」

「へ?」

「だってそうだろう? 魔法ランプの作製者と言えば設楽さんかエリッタさんを思いつく。

 魔法ランプの技術を欲しいと思う人がいれば、必ず接触してくるだろう。

 それが交渉なのか、強硬手段なのかはわからない」


 ひ、飛躍し過ぎに感じるのは俺だけなのだろうか…………。


「そ、そんな危ない事態になりますかね?」

「わからないんだよ。だけどそれだけ魔法製品は魅力的だ。

 クラーク村の人たちがハマってしまったようにね」

「で、でも、そうだ! クラーク村でしか使ってないんだから大丈夫じゃないですか?

 陸の孤島なんですし」

「それも……微妙だ。何せまたドルゼ村の人たちが来る。

 次はこちらからドルゼ村に行く予定だったと思うけど、その次はドルゼ村の人たちが来る。

 そうすればクラーク村の輝きに驚くだろう。そして技術提供を求められるのは想像がつくだろう?」

「う~む……」


 なんか不安になってきた。

 確かに噂なんてどこから漏れ出すかわからないし、

 いつの間にか王都に伝わったって不思議ではない。


 ま、魔法研究は止めるべきなんだろうか?


 自然と、俺と先生は設楽ちゃんを見た。

 先生は魔法反対、俺はどっちつかず、設楽ちゃんは魔法賛成だ。

 さて、設楽ちゃんの意見は?


「……流行って何がいけないの?」


 なるほど、そうきたか。


「私は少なくとも、魔法技術を秘匿する気は無い。

 欲しけりゃ渡せばいい。それがこの世界の成長に繋がるなら」

「だが危険だ」

「危険なのは私? エリッタ? それともクラーク村?」

「ぜ、全部だよ」


 眉間に皺がよる設楽ちゃん。疑いの眼差し。


「確かに私やエリッタが拉致される可能性はあるのかもしれないわ。

 ……あるのかしら? 『探知』魔法があるし、アッシュもいる。そんな中で拉致?

 流石に疑心暗鬼が過ぎるわ。一年二年以内にあるとは思えない」

「っ! だが! クラーク村に略奪者が来るかもしれない!」

「魔法灯は地下の魔方陣とセットだし、ただ盗まれることは無いと思うわ。

 そもそもクラーク村に誰かが来ることが悪い事なのかしら?

 もしも魔女狩りのような有無を言わさず襲ってくるような勢力が来るなら懸念すべきだけど、

 この世界にそんな勢力いないと思うし」


 先生は首を振った。


「あり得るよ。実際赤井君は襲われているじゃないか」


 設楽ちゃんはポンと手を打った。


「……なるほど。魔法協会」

「あ~……」


 確かに……俺、襲われている。

 決定的な証拠は無いものの、黒幕は魔法協会だ。


「で、でも、先生」

「なんだい」

「魔法協会の人たちがわざわざクラーク村まで来て、僕たちに危害を加えるってことですよね?

 さ、さすがにそれは心配し過ぎな気がするんですけど」

「私も…………そう思った」

「だったら」


 先生は左手で俺の発言を止めた。


「私も心配し過ぎなんじゃないかと思った。

 自分一人で考えたところで机上の空論なんじゃないかと思ったさ。

 だけど今は確信がある」


 先生は語気を強めた。そして――




「シェルナイドさんにも確認してきたからだ」


 何故、今、シェルナイドさん?

 俺は混乱の極致に陥った。

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