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三人揃えば異世界成長促進剤~チート無し・スキル無し・魔法薄味~  作者: 森たん
第十四章 異世界探偵団

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202/251

202話 さあ! 宿場町を作ろう!(嘘)

新章スタートです。


 宿場町を作る! なんて息巻いていた俺。

 クラーク村に帰ってきてから四十日経過したが……。

 未だ着手出来ていないのだ。



 といっても何もしていなかったわけではない。

 色々あったのだ。ホント色々ね。


 一番の変化は、クラーク村に新しい仲間が増えたことかな。


――――


 ナーダルさんと別れ、自然と今後の話をすることになった。


 ゼツペさんは、これまで通り各地を巡る生活に戻る予定だが、魔法協会の事も調べてみるとのことだ。


 後から遅れてきたシェルナイドさんとは、とりあえず四十日後宿場町で会う約束をした。

 王都で会えば一番簡単なんだけど、俺は(ついでに設楽ちゃんも)極力王都へ来ないほうが良いと判断された。

 狙われたら危ないしね。


 次会うときは、ケーキを持っていく予定だけど、

 会う一番の目的は、縁を切らないようにするためだ。


 スマホは勿論、電話が無いこの世界で縁を紡いでいくのは地道な行脚しかない。

 ご縁は大事なのだ。



 ――さて。


「エリッタさんはどうするの?」

「へ?」

「今後どうするのかな~と」

「お二人についていきますよ」

「……へ? クラーク村に?」

「はい」


 至極当然とばかりに胸を張るエリッタさん。

 その横で、無表情ながらソワソワ嬉しそうな設楽ちゃん。


 エリッタさんを救出することしか考えてなかった俺は、その後の事は考えてなかった。


「い、いいの? 王都は……戻れないだろうけど、実家に戻ったりとか」

「私、孤児なもんで実家とか故郷無いんですよ。ず~っと王都暮らしですよ~」

「へ、へえ……そっか。ど、どうしよう設楽ちゃん」

「別にいいんじゃない」


 素っ気なく返答しているが、完全に嬉しそうだ。

 お友達が村に越してくるのが嬉しくてしょうがないのだ。


「で、でも家とか……どうしよう」

「なんとかなるでしょ」

「そ、そうかな」


 簡単に決めていいのだろうかと、迷う俺。だが――


「そうですよ。アカイさんが私の事を『死ぬまで護ってあげる』って言ったじゃないですか。

 家ぐらいどうにかしてください」

「へ?」


 エリッタさんの発言に、俺はフリーズした。

 そんな大それたこと言ったっけ?


「へぇ~~~~」


 設楽ちゃんが、とっても冷たい瞳で睨みつけている。

 い、いやいや、俺はそこまでカッコいいこと言っていないぞ!


「え、エリッタさん。そ、そこまで言ってない」

「ん~そうでしたっけ?」

「た、確か、しっかり護ります的な事を言った気がします」

「ふ~~ん」

「へぇ~~」


 柄にも無くカッコつけた気もするが、そんな大それた発言はしていないはず!

 ――が、何を言ったか覚えていない。


「ま、まあ、クラーク村に行きましょうかね。ははは」



――――


 そんなわけでエリッタさんはクラーク村の住人になった。


 といっても、連れ帰るのも大変だった。


 宿場町からクラーク村までは歩いて十日以上かかる。

 エリッタさんは一般的な体力なので、走らせるわけにもいかない。

 だったらアッシュに乗せようと思ったが、犬恐怖症でそれも却下。

 馬車……も考えたんだが、クラーク村まで行ってくれる物好きはいない。


 結局、仕方なく、泣く泣く、俺が背中におぶりクラーク村まで走ることにした。


 だけど、あんまりスピードを上げて走ると、「無理無理無理!」とか言ってしがみつくというか、

 チョークスリーパーをかけてくるし、逆にゆっくり走るとエリッタさんはひたすら話をしてきてメンドクサイ。


 走っている中で、チョークスリーパーをかけられず、だけどお喋りモードにならない絶妙なスピードを把握した。

 背中で「うぴぎゅー!」って意味の分からない叫び声をあげながらしっかり抱き着いてくれた。

 

 まあ、そんなエリッタさんを見て、設楽ちゃんは、「ふ~ん」とか「ほぉ~」とか茶々を入れてきた。

 背負ってるこっちの身にもなれって話である。

 いつもなら三日もあれば帰れるんだけど、今回は倍の六日必要だったし。



 クラーク村に到着してからも、色々大変だった。

 何が大変って、エリッタさんが話を拡げまくるからだ。



 まずは村長に報告した。

 エリッタさんをクラーク村で住ませたいってことと、面倒は俺達で見ることを伝える。

 俺達が初めてクラーク村に来た時とは違い、クラーク村は経済的に潤っており、

 その潤ってる原因が俺達なんだから、村長も無下にはしない。

 いい顔もしないけど、悪い顔もしない。OKってことだろう。


 更にディーンさんも同席してくれたので、非常に穏便に話は完了した……はずだったんだけど。


 ディーンさんが世間話程度に「どうして王都からこの村へ?」と聞いた。

 エリッタさんは待ってましたとばかりに目を輝かせる。


「ふふふ~、それはそれは語るも恐ろしい話なんですよ!

 実は……魔法協会に捕らわれていたんです!!」


 ……あんた、のんきに「保護されてます~」って言うとったやないかい。


「三か月以上も監禁されていたんですけど、そこをアカイさん率いる凄腕部隊が助けてくれたんです!」

「まあ! すごいじゃない!」


 ディーンさんがエリッタワールドに飲み込まれてしまう。

 クラーク村長は困惑している。

 設楽ちゃんはピコの毛づくろいに夢中だ。

 俺は……愛想笑いしかできなかった。


「たくさんの見張りをなぎ倒して、私を救出してくれたんです!」

「あらあら」

「私の元にたどり着いた時には、アカイさんは無残にも斬られていました!」

「まあ!」

「それなのに、私を背負って監獄施設から脱出!」

「すごいわ!」

「途中、一人の仲間が囮となり……帰らぬ人に……!」

「まあ~……」


 完全に妄想癖ですね。

 コソコソ忍び込んで救出したのに、いつの間にかハリウッド映画のような展開に。

 殆ど嘘なんだけど、話の始まりと終わりを繋げると、事実になるというエリッタワールド。


 さっさと切り上げて色々準備したかったのだが、大輪の花が咲いた話を止める術は俺には無かった。


――――


 その後、自宅の軒先にいたヨドおばあちゃんを紹介し、更に一時間経過した。

 「面白いお嬢ちゃんじゃねえ~」と高評価をいただく。

 だけど、このままでは前に進めない。もう夕方だよ!


「さ、そろそろ我が家に行こうか」


 「は~い」と返事をした直後……何かを見つけ「あ!!」と言い走っていくエリッタさん。

 次から次へと……今度はなんだ? と思いエリッタさんが走っていく方向を見る。


 設楽ちゃんは「あ~」と言う。


「そういうことか……」


 エリッタさんはハンターチームのサブさんを見つけ走っていったのだ。


――


「さ、サブさぁ~~ん!!」

「お、落ち着いて。しかし……なんでエリッタが…………」


 エリッタさんがサブさんに抱き着いている。てか泣いている。

 困惑しているサブさんと、隣で物珍しそうに見物しているリーダー。


「う~む……隠し子か?」

「……リーダー。怒りますよ」

「ガハハ、怖い怖い」


 いつも通りの二人。

 いつも通りの無精髭だけど、やるときゃやるシマーさん。

 体育会系なハンターたちの中で、知的ポジションのサブさん。


「こんにちは」

「お~う、アカイちゃんとお嬢ちゃん」

「あ~、君たちがエリッタを連れてきたのかい?」

「ま、まあ、色々ございまして」

「ガハハ、アカイちゃんも隅に置けねえな。村に女の子連れ込むとは」

「つ、連れ込んだわけじゃないです」


 連れてきた経緯を話してもいいんだけど、このままじゃ夜になる。

 穏便に、改めて紹介する流れにせねば!


「いや~色々訳があるんですけど、また今度――」

「いやー! サブさんがいることをすっかり忘れてました! 感激です!」


 ずびびと鼻を啜り、エリッタさんが顔を整えてエリッタさんは俺の話を遮った。


 サブさんとエリッタさんは昔、魔法学校で一緒に勉強したことがあるらしい。

 よく考えたら中々の縁だよね。


「私もまさかエリッタがいると思わず焦ったよ。目の錯覚かと思った」

「いやはや~、お恥ずかしい」

「それにしてもどうして?」

「むむむ! それは話すと長いんですが……」


 そう! 話が長いんだよ! ここで断ち切る!

 俺は過去を断ち切る!!


「そ、そうなんですよ! 話すと長いんです。

 だからまた改めて……ね? エリッタさん?」

「え~~! 嫌ですよ~! もっとお話ししたいですぅ!」

「い、いや、まあそうなんだろうけど、ほら家に行きたいし……」


 「ひゅう~ひゅう~」な~んてリーダーが茶々を入れた。


「いきなり家に連れこみたいだなんて、アカイちゃん大胆だな~ガハハ」


 「え?」と言い、意味を理解し「ち、違う!」と叫ぶ。


「あ~アカイさん……やっぱり変態だったんですね」

「ガハハハハ」

「ち、違う」


 断ち切ろうとした過去。

 目指した別の世界線。

 ありうべからざる未来を目指した結果……。


「ぼ、僕は、僕達・・の家に」

「おうおう~二人の新居かよ~手が早え~」

「ち、違う!」


 「いやらしい」と呟く設楽ちゃん。

 いやいやあなた、意味わかってるでしょ!?


 事態は収拾せず、しっちゃかめっちゃかになりましたとさ。

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