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三人揃えば異世界成長促進剤~チート無し・スキル無し・魔法薄味~  作者: 森たん
第二章 第二節 ラビット

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19話 迫る影


 村長との交渉も完了したので、ヨドさん宅へ向かう。


「ばあちゃん」

「おや、どうしたんだい」

「狩りに行ってきて、いろいろ持ってきたから見てほしいんだ」

「ほほ、いいぞお入り」


 そういえば初めて入るな。ヨドさんの家はちょっと雰囲気が違うんだよな。

 入ると、色々な匂いがしてくる。美味そうな匂いもあれば、よくわからないものも。


「茶出すから座って待ってな」

「ありがとうございます」


 座ってる間に家の中を見回してみた。

 色々な草花が干してある。ツボもいっぱいあるし、禍々しい雰囲気の瓶がある。

 まさに魔女の家って感じだ。


「んじゃ、出してみな」

 

 設楽さんがそそくさと机に並べる。

 あ、そうだ。


「そういえばホールラビットを捕まえたんだ」

「む、ホールラビットか」

「結構な量を捕まえて、肉を明日受け取るんだけど、どう使えばいいかわかる?」

「焼いて食えばなかなか美味い、プレーンラビットより肉質がいいんじゃ。

 骨付きの部分なんてかなり美味いぞ。」


おお、明日が楽しみだ。


「保存……」

「あぁそうだね、ちなみに保存できますか?」

「干し肉か燻製にすればできるじゃろうが、そんなに肉があるのか?」

「えぇ、一五匹ほど」

「一五!? ど、どうすりゃそんなに捕まるんじゃ!?」


 先生の顔を見て


「教えてもいいですかね?」

「いいんじゃないか?」


 『探知』魔法と、穴に水を入れれば出てくることを伝えた。

 もっと準備すればコンスタントに捕まえれるだろうことも伝えた。


「ふ~~む、そんな方法があったのか。よし、わしに肉を預けてくれれば干し肉を作ってやるぞ。」

「いいんですか?」

「よいよい、ついでに美味いラビット料理でも作ってやろう。

 ホールラビットなんて何年振りかね、楽しみだよ」

「こちらこそ楽しみです!」


 さすが頼りになるぜ、ヨドばあちゃん。


「あとは採取したものですね」

「――まぁこんなもんじゃろうな」


 軽く説明してもらったが全体的に良く採れるものだったみたいだ。

 赤い木の実はレッドベリー、青い木の実はブルーベリー。

 そのまま食べたり、調理にも使うポピュラーなものだと。


 ウサギ同様、レア植物でもあればと思ったが、強欲か。

 ウサギにそれだけ価値があったことで儲けものだ。

 草に関しては、虫よけ、干すとお茶になる葉っぱ、食べれる山菜などに分類してもらった。


「それじゃぁ、今日はこの辺で」

「明日はラビット持っておいで」

「わかりました、あぁそういえば初日にもらったサンドイッチ、すごい美味しかったです。

 キャベツ漬けは王都でも人気らしいですね」

「……ふん、あんなもん普通じゃ」


そういってドアを閉めてしまった。


 ありゃ? ご機嫌損ねてしまったかな。

 気が難しいってのは本当らしいな。

 その日は村をぐるっと回ってから家に帰った。


 途中でアイシャさんに会ったので、ウサギ肉は明日持っていくことを伝えた。

 忘れてたので、バケツを返す話をしたんだけど、「やるよ」って言われちゃった。

 優しさが目に染みるぜこんちくしょー。



 家に着いたので、明日からの行動予定と今後のプランに関して話し合いをすることにした。

 

「はぁ、干し肉も飽きてきましたね」

「そうか? 結構好きだなこれ、いいツマミになる」

「モギュモギュ」


 設楽さんは黙々と食う。小動物みたい。


「ツマミか~、先生はお酒好きなんですか?」

「うむ! 好きだな」

「へぇ~、設楽さんは?」

「嫌い」

「赤井君はどうなんだい?」

「飲めますけど、実はそんなに好きってわけでもないんですよねぇ」


 仕事柄付き合いで飲みにはよく行った。でも強くもないし、量も飲めないんだよな。

 なにせ、死因はアルコールですし。

 でも、この世界のお酒には興味があるな!


「そういえばこっちのお酒も気になりますよね~」

「うむ! 実はこっそり楽しみにしてるんだ」

「お酒かぁ~、どんなお酒があるんでしょうねぇ。

 ありそうなのは、エール酒とか果実酒でしょうか」

「芋とか焼酎とかどうかな~、ワインもいいなぁ~」


 先生、すげぇ幸せそうな顔してるよ。

 強い酒が好きなんだな。


「本当に好きなんですね、酒」

「ははは、実はほぼ毎日晩酌してた」

「――ダメ教師」

「し、設楽さん、ひどいな。教師ってのはストレス溜まるんだぞ~」


 設楽さんは干し肉を食べ終わったようで、お酒トークにも飽きてきているようだ。


「まぁ、お酒のことはおいおい探しましょう。

 明日はどうしましょうか。肉の受け取りに行かないといけないですけど、狩りは明後日からにしますか?」

「それでいいんじゃないかな」

「いいわ」


 予定も決まったので、そろそろ解散かな。


「それじゃ、特になにもなければこれで。しかし明日は楽しみですねぇ」

「ん?」

「ヨドさんのウサギ料理。干し肉と木の実以外のものが食えると思うと待ちきれないっす」

「あぁ~確かに」


 まだ見ぬウサギ料理を妄想して、幸せな眠りについた。


―――


「ほれ」

「こりゃ……ホールラビットじゃねぇか。何匹いやがるんだ?」

「一五匹だ」

「どうしたんだこりゃぁ」

「西側から来たやつらが捕まえたらしい」


 男はニヤリと笑う。


「そいつはスゲェな、へへへ。ちょっと探ってくるか」


 酒臭い男は目を光らせていた。


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