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三人揃えば異世界成長促進剤~チート無し・スキル無し・魔法薄味~  作者: 森たん
第十二章 異世界威力業務妨害

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175話 赤井グダる


 王都脱出の翌朝。

 目覚めは微妙、まさに微妙だった。


 寝起きはいいはずなのに頭が重く、寝汗というか寝脂汗とともに目覚める。

 まあ熟睡は出来なかったけど、二時間ぐらいは寝れたので御の字だろう。


 添い寝発言の設楽ちゃんはまだ寝ている。

 元気に「さあ出発だ!」なんて言う気にならない。起きるまで待つことにした。



 さて……何か食べたい。

 ナイフで干し肉を切り分けたいが、手が震えてしまう。


 でもいい方法を思いついたんだ。

 ナイフの刃を見るとだめだから、見ないでナイフを使えばいい。

 『探知』魔法を使って肉の位置を把握して、ナイフを見ずに使ってみる。

 こんな使い方……間違っても子供には見せられないな。


 まあ上手く切り分ける事ができた。流石万能『探知』魔法だ。

 少し炙って食べることにする。まあ王都産なので味はご愛敬なのだが。 


――


 設楽ちゃんが起きるのを待って出発する。

 ぶっちゃけダラダラ走って帰る。急ぎの旅でもないし、食料もアッシュとピコがいるからいくらでも手に入る。

 本気で走れば二日でクラーク村まで到着するけど、このペースなら五日ぐらいだな。

 のんびり帰ることにしよう。


 ふと目をやると右手に山が見える。犬の集落がある山だ。


 なんだろう。妙に心が圧迫される。

 ボス犬に睨まれているようなそんな感じがした。

 そんなわけないのにね。


――――


 五日目。

 なかなか寝付けない日々だけど、目を瞑ってるだけでも体力は回復する。

 魔力の多さが肉体の回復を促していると体感する。

 頭はすっきりしないけど、体はすこぶる元気だ。

 

 もっと早く帰ってこれたけど、ゆっくり帰った。

 早く帰ってもやることがないし、正直な話、先生に事情を説明するのも面倒だった。


 まあ……昼には村に到着しちゃったけどさ。


 やっと帰ってこれた安堵と説明しなきゃいけない億劫さで変な気分だ。

 いつもと変わらない村の空気。あ~このまま寝ちまいたい。


 夏休み終わりの学生のような気分だ。緩んだ日常を継続したいけど、正さないといけない時間が刻一刻と迫ってきているような強迫観念。


 とにかく家まで帰ろう。


――


「ただいま~……」


 無言。先生はいないみたいだ。少しほっとしてしまう。


「先生いないね」

「狩りか授業でしょ」

「そだね」


 家に入り、リビングへ。綺麗に片付いている。


「どうする?」

「どうって?」

「いや……」


 なんて喋ればいいか言葉に詰まる。


「先生にも説明しなきゃね」

「そうね」


 会話が難しい。設楽ちゃんはいつもと変わらない。

 ペラペラ喋る俺はどこに行ってしまったんだろう。帰ってきてくれ~。


「ちょっと休もうかな」

「そう」

「うん、なんか本調子じゃないんだよね。やっぱり」


 本調子か。自分で言って収まりのいい言葉だなと感心する。

 体調不良っていうと少し重い。だるいってのはちょっと軽すぎる。

 本調子じゃないってのは、いい感じのフィット感がある。ははは、何言ってるかわかんねえ。


「そ」


 設楽ちゃんは、そのまま部屋に行ってしまった。

 何か研究でもするんだろうか?

 そういえばノートはどうしたんだろう? 荷物の中には入ってなかった。

 嵩張るから捨てたのかな?


(まあいいや。とりあえず横になろっと……)


 実際よくわからない疲労は残っている。睡眠不足からくるものだと思う。

 お腹の中に重い空気のようなものが入ってるみたいな気分。


 先生にどう説明しようか考えながら、横たわる。

 眠れない。ただただぼーっとする。スマホでもあれば確実にゲームでもしちゃうな。


 ゴロゴロしながらただ、先生を待つ。


――


 三時間後。

 玄関ドアが開く音がした。続いてアッシュの鳴き声がする。


(お、帰ってきたかな)


 足音。そして――


「お、戻ってたんだね」


 先生の声が懐かしい。

 さて……起きないとな。説明しないとな。

 入り口に背を向けていたから、まずは寝返って、起き上がろう。


(あれ……)


 本当にしんどいな。頭が重い。顔デカいから……とか言ってる場合じゃない。

 おかしいな。息がしにくいぞ。


「フウ~」


 仰向けになり、呼吸を整える。なんだ……風邪でもひいたのか?


「赤井君?? どうしたんだ?」


 異変に気付いたのか、先生が近寄ってくる。

 心配させる気なんて無かったんだけどな。ちょっと『お疲れ気味』ぐらいに見えればよかったのに。


「ぁ、せんせ。おつかれさまで……す」

「顔が赤いぞ? 熱でもあるんじゃないのか?」

「あ……れ? そんなはずは」

「いや、確実に熱はありそうだぞ。ちょっと待ってな」


 先生は手ぬぐいを浸して、頭に置いてくれた。はは、母ちゃんかよ……。


「ちょっと寝たほうがいい。何か食べれそうかい?」

「あんまり食欲ないかも……」


 本当に調子悪くなってきた。呼吸がしにくい。

 実は肋骨が、臓器にでも刺さったんじゃないかと心配したが、そんなことは無さそうだ。


「よし、果物でも採ってくるよ。安静にしてな」


 先生は立ち上がり、設楽ちゃんの部屋へ。


「設楽さん? いるかい?」

「……あ、オカエリナサイ」

「ただいま。なんだけどちょっと果物採ってくる。赤井君が熱あるみたいなんだ」

「え??」


 部屋から出て来た設楽ちゃんは俺を見ている。


「大丈夫?」

「うん。ちょっと熱っぽいだけだよ」

「――そう」



 実は俺達三人はクラーク村で病気になったことが無い。

 怪我とか睡眠不足(主に設楽ちゃん)は結構あるんだけど、風邪は引いたことない。

 初めて病気っぽいのになったのが俺だったんで過度に心配されてしまった。


 空気の入れ替えをしてくれたり、お水や果物を持ってきてくれる。

 設楽ちゃんもリビングの机に座り、もしもの時のためにスタンバイしてくれた。


 ありがたいと思いつつ、俺はこう思っていた。


(今日は説明しなくて済みそうだな)


 今日はゆっくりしよう。明日やればいい。今後どうしたらいいかわからないし。

 眠い。疲れた。しんどい。



 きっかけが何だったのかわからない。

 ただ、王都から帰ってきた俺はゆっくりと何かに蝕まれていくのだった。

新作アップしました。

そちらも良かったら宜しくお願いします。

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