134話 コーヒーは世界を救う
これにて8章完結です。
昨日の深夜に総合評価が1111でした。ゾロ目っていいですね。
次は7777を……。遠いなあ。
都会の喧騒を離れ、村に向けて走り出した。
村までタイムアタックしようかとも考えていたけどやめることにした。
不自由をかけたアッシュとピコを遊ばせてやるために。
とにかくアッシュは走った。見えなくなるほど遠くまで行ったり、いつの間にか色々狩ってくる。
ちなみに犬用バッグは装備させてるものの荷物は入れていない。荷物運びは俺の役目だ。
しかし飯には困らないな。嬉しそうに持ってくる獲物を少しいただくだけでお腹いっぱいです。
流石に口元血まみれのアッシュを、一般人に見せるわけにいかず宿場町やウィンダーブルに向かう道は使わないことにした。
見つかったら、「恐怖! 街道の人食い犬!」とか新聞に載ってしまいそうだ。
ピコはピコでストレスが溜まっていたみたいだ。
アッシュと違い、連れまわしていたものの露店は人が多いからね。特にピコは人の目をかなり引いてしまう。
なにせ日に日に美しくなってるからね。そして大きい。鷹ぐらいあるんじゃないだろうか。
昔はあんなに小さかったのにねえ。お父さん嬉しいよ。
ただ、爪も鋭くなっちゃって、俺の服の左側はボロボロだ。麻袋をグルグル巻いて対応してるけど服のアップグレードも必要だね。
昔王都でみたストライクバードは肩に乗っていたなあ。」
ピコはアッシュほど食べないので、そこまで狩りをしない。
でも、指示されるのは好きみたいなので何度か鳥を狙わせた。
しかしまあ、いとも簡単に追撃してしまう。
はるか上空に飛翔して獲物に急降下していく様子は、さながらビーム兵器みたいだ。
青空を一本の光が切り裂く様は綺麗だ。
獲物にヒットする瞬間、「チュドーン」って言うのがマイブームになった。
一人っ子なもんで効果音つけるのが好きなんです。一人っ子関係ないかな?
てか……帰ってるだけなのに獲物だらけになっちゃうので一旦ピコ狩りをやめた。
ドルゼ村に寄ったんだけど、ドルゼ村からクラーク村の区間で狩りを解禁して獲物を大量にゲットした。
持って帰るのもそうだけど、処理もめんどくさいんだもん。
フッチーさんが「マジかよ……」って言うぐらい野鳥を狩ってお土産にしましたとさ。
ーー
ドルゼ村に寄る前にウィンダーブル近くまで行き、そこから北上した。
理由はもっと速く王都に行けるルートを探すためだ。
クラーク村とドルゼ村の間には川があり橋が架かっているのは一か所だけだ。
ドルゼ村に行く場合は問題ないが王都に行く際は大分大回りになる。要は斜めにズバッと行けないか確認したわけだ。
結論から言うといい場所は見つからなかった。川はどれだけ細くても十メートル以上あり流石に飛び越えれない。
アッシュならイケるかもしれないけど、俺は確実に無理だ。
荷物を運ぶことも考えると……橋が必要だなあ。ちょっと残念。
ーー
ドルゼ村に寄って、いつも通り砂糖大根、バター、卵が欲しい事を伝えると快くくれた。
ありがたいんだけど、なぜか村人総出で渡そうとしてくるので持てる分だけと断った。
雰囲気が超絶ウェルカムムードだったので話を聞いてみると、ホットケーキのアカイとして有名になっていた。
……てかホットケーキブームが凄くて驚いた。
普通のホットケーキを教えただけなのに、改良を重ねたのであろう。オシャレカフェで出てきそうな高さ十センチはあろうホットケーキを作っていた。
食べてみたけど材料が一流だからね、くっそ美味いよ。
キャラメルソースも美味いのなんの。家庭によって甘目、苦め、乳脂肪分多めと特色がある。
「少し塩を入れると美味い」とかツウな発言まで飛び出した。
そんなこんなで小麦は底を尽きかけているらしい。なんて村だ!!
予定をかなり繰り上げてクラーク村に来ることが決まったってさ。
ペッガ村長には「すまんが、小麦のこと伝えておいてくれ」と伝言を預かった。
……ずっと鎖国状態だったくせに、調子のいい村長だ。逆か。鎖国してたから反動でオープンになっちゃったのかも。
ドルゼ村の共同調理場で奥様達からホットケーキをご馳走になった時ーー
「アタシ達もホットケーキの免許皆伝かしら」
「まあ、奥さんったら」
「「「あははは!」」」
なーんて言われちゃったから、対抗心を燃やして「ホットケーキに合う本当の飲み物を教えてあげますよ、三日後ここに来てください」って言ってコーヒーを作ってあげた。
「三日後」は言ってないけどさ。
少しミルクを入れたほろ苦いコーヒー。ホットケーキに合わない訳がない。
ドルゼ村に新しいブーム、コーヒーが広まるのは自明の理ってやつだ。
こうして大量のケーキの材料手に入れ、コーヒーの伝道師アカイとしてドルゼ村で更に有名になった。
今後はコーヒーを定期的に持ってこないといけないなこりゃ。
コーヒーだけは、ドルゼ村もクラーク村も採れないしね。
そんな感じで最後はアッシュに荷物持ちを手伝ってもらっちゃったけど、結構平和な王都からの帰り道でしたとさ。
第八章 完
ーーーー
赤井が王都に向かってから、設楽は新しい研究を始めた。
冷蔵庫に関してはほぼ思い通りの動作を実現することが出来るようになった。
『衝破』魔法をアレンジすれば、空気を混ぜることも容易なので冷蔵室も作ることは可能だ。
「自動化までこぎつけたかったけど、まあいいわ」
おびただしい量の冷蔵庫に関してのページをめくり、次のテーマのページへ。
タイトルは「魔力の保存」だ。
設楽はどうにか魔力を保管できないか考えていた。
何かに保管できれば「マナポーション」が作れるかもしれないし、保管したマナを使って魔方陣を起動させる、「魔法電池」も作れるかもしれないと考えていた。
それと理由がもう一つ。
「バカイのくせにMP増えるなんて……」
設楽が喉から手が出るほど欲していた最大MPの増加を、赤井はよくわからないうち実現し、しかもかなりの量が増えていたことに苛立っていた。
しかし赤井金子両名から、MP増加の原因である可能性が高い「仮死」は禁止されている。
よって設楽は別の切り口からMP増加ができないかアプローチすることにした。それが「魔力の保存」だ。
(さて……こんな粒子みたいなものを保存できるのかしら?)
設楽は右手で作り上げた、土星をモチーフにした光る魔法の球を眺める。
都合のいいことに冷蔵庫の実験で使った箱が、設楽の部屋にはたくさんある。
「バカイに出来て、私にできないわけないでしょ」
魔女はニヤリと笑い、実験に手を染めた。
ーーーー
赤井が帰ってくる前日の設楽の一言。
「もう!! なんでよ!!」
叫び声と何かが壊れた音を部屋の外で聞いていた金子の呟き。
「ふう~、若いなあ~」
結論、早くコーヒーが必要。
読んでいただきありがうございます!




