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三人揃えば異世界成長促進剤~チート無し・スキル無し・魔法薄味~  作者: 森たん
第二章 異世界に来てから 第一節 初日

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11話  一万円の存在価値

ルビ使うのに四苦八苦。


「西側に空き家がある。そこを使いなさい」

「ありがとうございます」

「後のことはディーンに聞いてくれ」

「わかりました」


 ここまでくれば安心だ。後は情報収集がしたいし

 ディーンさんにいろいろ聞いてみよう。


「ディーン!」


 ディーンさんが台所からやってきた。


「はいはい」

「西側のあの家を貸すことになった、案内してやれ」

「え? わかりました」


 あきらかに戸惑った顔をした。

 なんだろう、幽霊屋敷かしら、それとも事故物件か?


 村長はさっさと部屋から出ていこうとした。


「ありがとうございました」


 一瞥したがそのまま行ってしまった。


「愛想がなくてすいませんねぇ」

「いえいえ、家も借りれてありがたいです」

「さてさて、家に向かいますか?」

「あ~よかったら、村のことを聞きたいんですけど。

 ルールとか。もしかすると私達の村と常識が違うかもしれませんし」


 ディーンさんは納得したみたいだ。手をポンと叩いた。


「じゃぁお茶でも出しますね」

「ありがとうございます」


 ディーンさんが台所に向かった。


「ふぅ」

「お疲れ様」

「あぁ、はい」

「いやぁ、どうなることかと思ったよ」

「ミックが気楽に的なことを言ってたので油断してました」

「赤井君の交渉力はすごいな、営業マンだったんだよね?」

「そうですね、やっと存在感だせました。このままだと、落ちこぼれ魔法使いポジになるとこでした」

「いやいや」


 実際ここまで賑やか担当だったしなぁ。

 設楽さんはもちろんだけど、金子先生だって頭は俺なんかより優れている。(なにせ先生だし)

 できることはやりたいじゃん。役に立ちたいし。


「まぁ、今から情報収集になるので必要事項は聞いていきましょう。

 設楽さんも聞きたいことあれば聞いてね」

「……うん」


 ちょっと落ち込んでるかな?まぁ無理もないか。


 ミックの人選ってのは、理にかなってるのかもしれないな。

 頭脳面では設楽さんはかなり頼りになるけど、コミュ力は残念極まりない。

 俺は頭脳へっぽこだけど、コミュ力だけはそこそこ自信がある。

 お、力を合わせて系っぽい。いいじゃんいいじゃん。


「お待たせしました、どうぞ」

「ありがとうございます」


 初、異世界の飲み物だ。

 なんか、優しいお茶だな。そういやなんも食ってないし胃が温まるぜ。


「それじゃぁ軽く自己紹介させていただいて……」


 三人の紹介と、『治癒』魔法が使えることを話した。

 魔法なんてほとんど見たことがないとのことで驚いている。

 他の二つの魔法は言わなくていいか、聞かれてないし。


 唯一、万人に広まっている魔法があることも教えてもらった。

 『発光』(ライティング)は、すべての人が使えるとのことだ。

 まぁ文字通り光らせる魔法だね。

 ただ、他の魔法はほとんど知らないらしく、王都に行けば使える人もいるとのことだ。


 ディーンさんも自己紹介してくれた。

 村ではクラーク村長のサポートとして働いているらしい。

 

 一点常識の違いがあった。

 雰囲気からして、ディーンさんと村長が夫婦なのは間違いないのだが、結婚はしていないとのことだ。

 不倫? 親の反対? とかではなく、「結婚制度」自体が存在してないのである。


「結婚? てなんですか?」

「え~っと……」

 

 説明を試みてみたのだが、まったく伝わらなかった。

 結婚制度を知らない人に説明するってすげぇ難しいんだなぁ……。

 ※話すと長いので番外編で


「結婚の説明で長くなっちゃいましたが、本題の質問いいですか?」

「えぇ、どうぞどうぞ」


 回り道したけれど仲良くなれたぜ。

 ただ、時間も結構経っちまったな。そろそろ二時ぐらいか?


「時間も時間なんで重要そうなことを重点的に」

「そうね、またいつでも聞きに来てくれればいいわ」


「まず、買い物がしたいんですがお店はありますか?」

「あと、お金が使えるのか」

 

 設楽さんが補足してくれた。あぁ、なるほどそれも大事だな。


「お買いものねぇ、半年に一回村長が必要品を仕入れに行くわ」

「え?」


 詳しく聞くとこんな感じだ。

 ①集まりを開き、各家で必要な物品を確認

 ②半年に一度、村の物産品を王都まで売りに行く

 ③売上で必要品を購入する


「じゃ、村に店は……」

「無いわね」


 確か、王都までは一か月とか言っていたな…。


「王都までは一か月と聞いたんですが……」

「歩くとそんなもんかしらね、馬車なら五日ね。

 まぁ、よっぽどの理由がないと馬車は貸してもらえないわ」


 馬車は借りれない、むしろ運転できない。

 歩くのはも無理。そもそも道わからないし。


「この村でお金の使い道ってありますか?」

「ないわね。半年に一度の買い出しのタイミングぐらいかしら」


 ディーンさんは心配してフォローしてくれた。


「一応村長の備蓄もあるし、村人と物々交換でもすれば、

 欲しいものは手に入るんじゃないかしら」

「掲示板もあるし、~求ムとか張っておけばいいんじゃない?」


「わかりました、またこの件は相談させてください」

「次の買い出し……」


 あ、そっか。


「あぁ次の買い出しはいつなんですか?」

「五十日後ね」

「まぁ……近からず遠からずだな!」


ミックの一万円は役立たずだった。


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