彼女と僕らはセカンド
「彼女と僕らは」の続きのお話です。
僕は未だにあの時の大きな地震のことが、心のどこかに引っかかったままだ。
それなのに、あの場に一緒に居たまゆりもタケシも、結局成仏できなかったしおりまで、そんなことはどうでもいいといった様子。
あれだけの地震にも関わらず、僕の部屋以外はほとんど無傷だったし、成り行きであれよあれよとまゆりの家に居候できる運びになって嬉しいけれど、やっぱりどこか不自然というのか、しおりの仕業ではないかという疑惑でいっぱいなのだった。
本当はみんな薄っすら僕と同じことを思ったに違いないのだけれど、それをあえて口に出そうとはしないのだった。
なので、正直なところ、僕ら以外のそういうのに詳しい神様みたいな人にでも、ガツンと「あれはしおりの仕業だよ。」とはっきり言ってもらえたら、どんなにすっきりするだろうと僕は思うのだった。
「…きゃははははは…あっ、ねぇねぇ、まゆりちゃん、このさ、写真の女の子達って友達?」
僕一人がもやもやしている間に、まゆりの部屋に当然のようにいるしおりが棚の上の写真立てを指差してそう聞いた。
本当ならば、ここは、アパートの屋根と天井が崩れてあの部屋に住めなくなっちゃった僕が、まゆりと付き合い始めたこの僕だけがまゆりと共にいられる空間だというのに…。
何故なんだ?
何故、こんなにも当たり前のように、昔からずっと一緒だったかのようにしおりもいるのか、僕には意味がわからなかった。
「あっ!ああ、この子達ってさぁ、学校でまゆりちゃんと一緒にいる子だよねぇ、仲良しなんでしょ?」
テーブルの上のスナック菓子をぽりぽりしながら、やっぱりこの部屋にいるのが当然とばかりのタケシが会話に交じってきた。
あっ!そうだ。
こいつもいたんだ。
僕はにこにこしながら、スナック菓子をぽりぽりやってるタケシに改めて気づいた。
別に僕の中でタケシの存在が薄いって訳じゃない。
大学に入ってから知り合った、気の置けない大事な大事な友達だ。
やむを得ずしおりのことで巻き込んでしまったのは、本当に申し訳ないと思っているさ。
バイトも一緒にやってるし、学校でもつるんでいるのはタケシだよ。
ああ、確かにあの妙な地震の前、まゆりとの海水浴から楽しいまま部屋に戻って来たタイミングでやってきたタケシに一瞬、「えっ?何っ?こいつ、来てんの?」って思ったことは確かだけどね。
確かだけれど、かなり後になってからあの日スマホに何度も何度も何度も何度も、タケシからのメールや電話が入ってたのを知ったけど…。
まゆりとの時間があまりにも楽しすぎたから、僕はタケシから連絡が入ってることなんてまるでわからなかったのだけどね。
正直「これから二人でいいところだってのによぉ~!」なんて、ムカついたりもしたさ。
だけど、折角持ってきてくれたメロンは台無しになっちゃって、タケシには本当になんかごめんって感じだけどさ。
だけど…なんでいるの?
何、普通にまゆりの家で俺らと一緒に飯食って、その後帰らないでここにいるの?
なんで?
なんでなの?タケシちゃん?
僕の気持ちなんて、この場に居る誰も気にしてくれなかった。
だからって訳でもないけど、僕は黙ってタケシと同じスナック菓子をぽりぽり口に運びいれ、それをがーっと冷たいコーラで流し込んだのだった。
「ああ、そうなの、みんなね、高校時代からの友達なんだぁ~…えへへへへへ。」
まゆりは相変わらず可愛い仕草で、本当に嬉しそうに説明してくれた。
「へぇ~、そうなんだぁ~…」
しおりの頷きにすかさずタケシが割って入った。
「そうそう、確かさ、みんなまゆりちゃんと似た名前だったよねぇ…」
タケシは本当に物知りだ。
「そうなの…左の端の子がぁ、木村まゆちゃんであだ名がまゆでぇ、その隣のふっくらしてる子が稲垣まゆみちゃんであだ名がみ~ちゃん、それでね、その隣が中居まゆこちゃんであだ名がこ~ちゃんでね、その隣は私でぇ、えへへへへ、私のこっち側の隣が香取まゆらちゃんであだ名がら~ちゃんでぇ、こっちの端の子がぁ、草薙まゆかちゃんであだ名がか~ちゃんなのですぅ~…」
照れながら説明し終えると、まゆりはりんごジュースを一口飲んだ。
「えっ?何っ?みんな、名前にまゆってつくの?」
驚いて尋ねると、まゆりは普通に「うん、そうなんだよぉ~…偶然集まっちゃったみたいなんだけど…」と答えてくれた。
しおりもタケシも「ふ~ん」程度の驚きなのに対し、僕の驚きったら外国人並のジェスチャー混じりだった。
それにしても、木村まゆはメガネで痩せ過ぎだし、稲垣まゆみはふっくらってのかそれは明らかにデブだろう?
そんでもって、中居まゆこは天然パーマのたらこ唇だし、香取まゆらは俺よりも背がでっかいんじゃないだろうか?
バスケかバレーボールでもやってたんだろうか?
最後の草薙まゆかは…真っ直ぐな黒髪の長い髪に眉毛が隠れるほどの横一直線の真っ直ぐな前髪に、色白な肌に大きな瞳。
これはまゆりとは違うタイプの美少女だなぁ。
僕は草薙まゆかは、きっと巫女さんの格好が似合うだろうと思った。
それにしても、こいつらいつまでここにいるつもりなんだろう?
ほんのりと冷たい風に乗って、鈴虫の声が薄っすら聞こえている夜、僕は盛り上がる3人をよそに窓の外に見えている黄色っぽい満月をぼんやりと眺めた。
「…もうそろそろ、夏も終わりなのかなぁ…」
柄にもないことを呟くと、すぐさまこいつらに聞かれなかっただろうかと挙動不審になったのだった。
最後まで読んでくださって本当にありがとうございました。




