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彼女と僕らは 逆転さよなら満塁ホームラン!

「彼女と僕らは」の続きで、これでお話も終わります。

僕が知っている「暗がりバカンス」のケインは、写真でしか見たことないけど、いつもどぎついメークを施した派手な印象の人だけど、目の前でにこにこしているケインの死んだ兄のシェインは、よくよく見るとケインに似ていなくもないけれどとても穏やかそう人に見えた。

「あ、初めまして…え~とですね…僕は広沢浩樹です…しおりさんから聞いてると思うけど…こっちが武田タケシで、この子が僕の彼女で倉沢まゆりちゃん、こっちの子が草薙まゆかさんです。」

「どうも、お噂はしおりから聞いていました…みなさんに会えて僕は嬉しいです。」

これ以上ないような爽やかな笑顔で僕らと順番に握手してくるシェインが、しおりさんのことを「しおり」と呼び捨てにしてたことで、二人の緊密さが何となくわかった気がした。

「…いやぁ…こんな風に知り合えるなんて…なんか不思議な気がします。」

僕は痒くもない後頭部を掻きながら、今の素直な感想を述べた。

「いやぁ、ホントホント…僕ら全員がこうして仲良くなったのは、全部しおりちゃんが繋いだ縁だから…なんかねぇ…嬉しいよねぇ…ところで…さっきまで、俺らシェインさんのご両親の教会にお邪魔してたんですよぉ~!…お昼にいっぱいご馳走になっちゃって…素敵なご夫婦ですよねぇ…」

タケシが続けた話が、どこかゴマすりのような、社交辞令のような感じでよそよそしさも滲み出てた。

「あ、それよりさ…シェインさんは、いくつなの?」

まゆかがずばりと尋ねた。

「ああ、年齢?ですか?…死んだのが高校3年の時だから、18歳だったかな?…確かそうです…しおりと同じ歳…生きてたら、もう結構なおじさんだけど…あははははは。」

「そうなんだぁ…良かったよね、しおりちゃん…同年代ってなんかいいよね…って、俺、何言いたいんだろ…あははははは。」

タケシは少し緊張しているみたいだった。

「あのね…ここんとこ、最近、よく二人で出かけてるでしょ?…もしかして…付き合ってるの?」

もじもじしながらもまゆりは、僕らが聞きたい核心部分を突いてきた。

「えっ?あっ…あのっ…え~とっ…」

不意な質問に戸惑うしおりを横目に、爽やかなシェインは笑顔のまま答えてくれた。

「うん、そう!…僕ら、ずっと一緒にいようねって、ハワイで誓いあったんだ…」

「きゃあ!素敵っ!」

まゆりは悲鳴のような高い声を出して、何故か顔を赤らめた。

しおりはシェインの言葉にただ照れながら黙って頷いているだけだった。

「へぇ、そうなの?良かったじゃない!しおりちゃん!なぁ、浩樹!なぁ、まゆかちゃんとまゆりちゃんもさぁ…」

タケシはみなに同意を求めた。

けれども、僕は何だか素直に祝福してあげられなかった。

「…じゃあさ…しおりさん…もう、まゆたん家のお寺の本堂には来ないってこと?…シェインの教会で暮らすってこと?」

少しだけふくれっ面で、そのまま聞いた。

「…あっ…そっ…それは…」

困ったような哀しい表情を浮かべたしおりは、僕の質問にはなかなか答えられなかった。

「待って、浩樹…しおりはね、君達と一緒に過ごせて、とても楽しかったって…だけど、みんなは生きてる、自分だけ死んだ人間…そんなの最初からわかってたけど、この頃、とても苦しくなってたんだって…君、まゆりに告白してすぐキスしただろ?」

シェインがそこまで言いかけると、両耳を塞いでいたしおりが涙顔で止めに入ってきた。

「…やめっ…シェイン…」

「あの時、君は知らなかったかもしれないけど…」

「やめて…やめて…シェイン…お願い…それだけは…言わないで…」

「まゆりの中に…」

「やめてぇ~!」

「しおりが憑依してたん…」

「駄目ぇ~!」

しおりの叫び声と共に、一瞬周りがぐらぐらと揺れた。

「…う…嘘だろ…そんな…そんな…じゃあ…まゆたん…知ってた…えっ?…ちょっと待って…ちょっと待って…何?言ってんの?何?何?わかんない…わかんないよぉ~!なぁ、タケシ…わかるか?今の?なぁ…なぁ…タケシってばよぉ~!」

タケシに詰め寄ると、タケシは苦い表情のまま顔を背けてしまった。

「…えっ?嘘?…えっ?えっ?まゆたん?…まゆたん…じゃあ…」

しゃがみこんで泣き出してしまったまゆりの傍に、まゆかが寄り添うようにまたしゃがんでいた。

しおりはシェインの胸で泣いていた。

僕は、自分だけが知らなかった事実を知らされたショックと、まゆりとしおりを傷つけてしまったことに激しい自己嫌悪に陥った。

「ごめんっ!みんな…みんな、知ってて普通にしてくれてたんだね…ごめん…ホント…ごめんなさい…俺、鈍感すぎで…ホント…申し訳ありませんでしたっ!まゆたん、そしてしおりさん…本当にごめんなさい…」

事情をすっかり飲み込んだ僕は、その場にガバッと土下座した。

砂利と湿った土の上におでこをつけ、今できる精一杯の態度をみんなに示したつもりだった。

僕はこのことをどう償ったらいいのか、土下座しながら必死に考えていた。

「いいって、もう顔上げなって!ほらっ…もう、みんな、そのことはさ、いいから…」

タケシが僕の腕を引き上げながら、へなへなになった僕をその場に立たせてくれた。

「まゆりちゃんもしおりちゃんも…もう…いいでしょ?…だって、こいつ知らなかったんだからさ…ねっ…許してあげてよ…ねっ…俺からもお願いします…」

そう言うとタケシは僕の横で丁寧にお辞儀してくれた。

タケシに倣って僕も再び頭を下げると、まゆりとしおりから優しい声で「もういいって…」と許してもらえた。

「ホント、ごめん…マジで…ごめんね、まゆたん…しおりさん…」

「ううん、もうよして…浩樹君。」

「うん、ヒロ君、私ね、もうしおりさんと仲直りってのか、ちゃんとしたんだぁ…やっぱり友達だから…」

「…そうなの…でもね、あのことがきっかけってのか…あったから…何となく、みんなといるの申し訳ないなぁって思ってて…」

しおりの言葉にまゆりが反応した。

「あ、やっぱり…しおりさん、あれから美味しいもの食べる時、私に憑依しなくなったから…やっぱ、気にしてんだろうなぁって…」

「そっか…やっぱ、まゆりちゃん、わかってたかぁ…そうなんだよねぇ…で、そんな時に二人に教会に連れてってもらって…こんな素敵な男の人と出逢えて…それでね、みんなとも一緒にいたいけど…みんなは生きてて忙しそうだし…だからって訳じゃないけど…シェインはあたしの気持ちすんごくわかってくれて…一緒にいると、みんなとは違う…なんて説明したらいいか…わかんないんだけど…安心できる感じ?…なの…」

涙の痕が残る顔でしおりは自分が考えていた気持ちを、みんなに伝えられて満足そうだった。

「そだ、さっきさ、シェインさん、しおりちゃんとずっと一緒にいようねって誓ったって言ってたけど…それってさ、結婚するってこと?」

まゆかは僕らが疑問に思ってたことをすんなり聞いてくれた。

まゆかの実家の神社の境内には、僕らしかいなかったので多少の大声でも全然構わなかった。

「はい!そうですね!」

シェインは相変わらず爽やかなハンサムだった。

「きゃっ!」

しおりとまゆりが同時に照れて顔を隠した。

僕はまゆりが何をしても可愛いなぁと思った。

「しおりさん、お嫁さん…」

小さな声でまゆりが呟くと、それに反応したしおりは更に照れた。

「じゃあ…さ…俺らで二人の結婚式やってあげようよ!」

タケシの提案に、生きている僕らは賛成した。

「え~、でもどうやって?」

しおりの素朴な疑問に、一同一瞬声を失った。

「…まぁ、それはさ…これからみんなでゆっくり考えようや!なっ!」

「…じゃ、ちょっと待っててくれる?あたし、お泊りセット持ってくるから…」

そう言ってまゆかは家に戻って行った。

「わかったぁ~!俺ら、駐車場で待ってるからぁ~!」

「りょうか~い!」

後ろを振り向かず手を振るまゆかを、みんなで見送ったのだった。


「…わぁ~…まゆかの神社も素敵で気持ちよかったけど、ここも素敵だねぇ…しおり。」

シェインはしおりの棲家となっているまゆりの実家の寺の本堂に来ると、両手を広げて感動していた。

「そうなの!ここも、まゆかちゃんとこも、シェインの教会もね…全部、パーッとなるでしょ?ねっ?」

好きになった人に自分の住んでいる場所などを教えられた喜びでいっぱいのしおりは、今日はいつもよりも何だか光っているようだった。

「ねぇ、こっちに集まってくれる?」

まゆかの号令でみんな本堂のお釈迦様の前に座った。

「しおりちゃんとシェインの結婚式なんだけどね…しおりちゃんさ、服はそうやっていっつも自分で好きなのに換えられるんでしょ?」

「あ、そうそう…自分で着たいなぁって思ったら、換えれるよぉ…だって、いっつも同じ服じゃ嫌だもの…いくら汚れないからって…ねぇ…シェインもそうだよねぇ…」

「僕もそうです…同じ服ばかりじゃ気分も上がらないから…日本の制服は、それはそれで一日中ずっと着てる訳じゃないから、別にいいんですけど…僕らみたいに死んじゃってる人間からしたら…ねぇ…」

目の前でやりとりされている会話に、僕は改めて「ほ~。」と思ってしまった。

自分は毎日風呂に入って、洗った綺麗な物を身につけているけれど、幽霊のしおりとシェインがどうしてるかなんて、考えもしなかったからだ。

「じゃあ…しおりさん、ウエディングドレスとか、着物とか…自由に着替えられるの?」

人差し指を顎に当てながら、興味津々といった様子でまゆりが乗り出して聞いてきた。

「あ、うん…今、すぐだって着替えられるよ…見てて!」

そう言うなりしおりはプカーッと立ったままその場に浮かぶと、憑依する時のようにひゅるひゅるっと回ったかと思った瞬間、もうドレス姿になっていたのだった。

「わぁ~、素敵ぃ~!」とまゆり。

「へぇ~、いいねぇ~!」とまゆか。

「はぁ~、便利だねぇ~…」とタケシが短い感想を述べた。

「どう?かなぁ?」

自信なさげにしおりが尋ねてきた。

「え~、すんごく似合うよぉ~!ねぇ、シェイン…って、あれっ?」

シェインの方を向いた時、丁度シェインはしおりの様にひゅるひゅるっと回っている最中だった。

「あっ、わぁ…シェイン…似合うねぇ…」

僕はしみじみ感想を述べた。

ハーフの綺麗な顔のシェインは、やっぱりタキシードが似合っていた。

しおりの隣に立ったシェインは、軽く肘を曲げた。

そこに少し照れたしおりが腕を通すと、二人は新郎新婦そのまんまだった。

ただ、場所が寺の本堂だけど…。

「しおりさん、シェインさん…すんごく素敵!私も…いつかそういうの着てみたいなぁ…」

まゆりは照れながら僕の方を見てきた。

僕はまだそんな先のことまで考えていなかったので、ちょっぴり困ってしまった。

だけど、可愛いまゆりがこんな綺麗なウエディングドレスを着たらと想像してみると、自然と顔が緩んだ。

「何、デレデレ想像してんだよっ!」

タケシに軽く小突かれると、僕はハッと我に帰った。

それにしても、どうしてタケシは僕が今まゆりのウエディング姿を想像してたことがわかったのか、不思議だった。

だが、その後、まゆりとまゆかと、しおりとシェインにも同じようなことを言われたので、思考が漏れてたんだと急に恥ずかしくなった。


「…で、式はどうしたい?」

まゆかは改めてしおり達に尋ねた。

「…あ、僕は…実家で挙げたい…できれば、父と母に立ち会ってもらいたいけど…」

「ん~…そっかぁ…」

まゆかは眉間に皺を寄せた。

「…気持ちはわかるんだけどさぁ…牧師さん達は見えないんでしょ?…だったら、どうやって…」

腕組みをした僕の後に、まゆりがちょっぴり遠慮気味に続けた。

「…あのっ…あのね…あの…しおりさんが私に憑依してぇ…シェインさんが浩樹くんに憑依したらどうかなぁ?…それだと、いけると思うんだけど…あ、でも…嫌か…自分達の名前言ってくれる訳じゃないものね…」

まゆりは僕との擬似結婚式も兼ねてやりたいと考えたようだった。

僕はまゆりの意見がいいと思った。

「えっ?いいの?憑依して?…あたしはまゆりちゃんの案に賛成!」

思いがけないしおりの意見に、僕らは少し驚いた。

「僕も…賛成…ただ…名前を読み上げるところだけ…やっぱり自分の名前にしてもらえればいいんだけど…難しいよねぇ。」

憑依している生きた人間の名前になるだろうから、ウォーレン牧師はやはりまゆりと僕の名前を言うことになるんだろうと思った。

名乗ってしまっているのに、今更死んだ息子の名前を言うのには抵抗があるに決まっている。

「あのさぁ…じゃあさ…憑依するのはしたまんまで、その前に牧師夫妻にちゃんと訳を説明してみたらどうかな?あの人達だったら、きちんと説明したらさ、絶対にわかってくれると思うんだよね…駄目かなぁ?やってみる価値はあると思うんだけど…どうだろ?」

タケシの大胆な計画に、僕らは賭けてみようと思った。


教会のバザーの日、僕らは朝早くシェインの教会に向った。

到着した教会はバザーの手伝いの方が大勢で、とても賑やかだった。

「あの…ウォーレン牧師とミセス順子をお願いします…大事な用があって…すいません…忙しいさなかに…」

生きている僕ら4人と見えていない2人は、緊張の面持ちで教会のベンチで待った。

しばらくするとエプロンをつけたままの夫妻が急いでやってきてくれた。

「すみません…急に呼び出してしまって…」

「今日はバザーに来てくださって本当にありがとうね…あら?どうしたの?そんな顔で…」

この間とは打って変わって真剣な表情の僕らに、ミセス順子は驚いた様子だった。

「…実は…」

僕から始まり、詰まるとタケシやまゆりやまゆかが代わりに話を続けてくれた。

あまりの突飛な説明とお願いに、牧師夫妻は戸惑った顔を見せた。

だが、僕らの必死な説明と彼らには見えていないけれど、今ここに死んだ息子のシェインが一緒にいると伝えると、夫妻の表情が少しだけ和らいだ。

「…ホントに?ホントに今ここにあの子がいるのね?…そう…そうなの…シェイン…」

ミセス順子はつけているエプロンで涙を拭った。

もっとちゃんと信じてもらいたいと思ったので、僕はシェインにウォーレン牧師に憑依するように指示を出した。

「いいですか?今からシェインが牧師に憑依しますんで…お願いします。」

ひゅるひゅるひゅるひゅる。

ウォーレン牧師は耳から入り込んでくる初めての感覚に、こそばゆさを感じたのだった。

だが、次の瞬間、脳の中でシェインが話かけると、牧師の目から自然と涙がこぼれ落ちた。

「…ああ、シェイン…シェインなんだね?…順子…今、私の頭の中でシェインが話しかけてくれているよ…こんな、こんな嬉しいことがあるなんて…わかった。わかったよ、シェイン…君はしおりさんという娘さんと結婚式を挙げたいんだね…いいよ…君の願いなら…父さんは何だってできることをしてあげるよ…」

…ありがとう、父さん…

ウォーレン牧師の脳内でそれだけ言うと、シェインはしゅるしゅると出てきたのだった。

「順子…不思議な感覚だったよ…そして、ちゃんと、ちゃんとシェインはここにいた…」

ウォーレン牧師は泣いているミセス順子の手を取ると、少ししゃがんで自分の頭を触らせた。

「今日はバザーだけど…沢山の人がきっと祝福してくれるでしょう。」

しおりとシェインの憑依結婚式がすぐにでも行われる運びとなったのだった。


バザーが始まる前、手伝いの人々もみんな教会に集まってもらうと、いよいよ結婚式が始まったのだった。

参列している人々はドレスも何も着ていない花嫁と、普段着のままの花婿を不振な眼差しで見つめていた。

だが、式が始まるとそんなのはどうでもよくなり、皆、若い二人を温かい目で見守ってくれたのだった。

しおりが憑依したまゆりは、ミセス順子から庭で丹精こめて育てた可愛い花で作られた小さなブーケを受け取った。

そして、ベール代わりの綺麗なレースの大き目のハンカチを頭に乗せると、シェインが憑依している浩樹と腕を組んだ。

式は粛々と滞りなく進んでいった。

いよいよそれぞれの愛を誓う場面で、ウォーレン牧師は浩樹をシェインと呼び、まゆりとしおりと呼んでくれた。

「誓います。」

憑依しているしおりも憑依されてるまゆりも、そしてシェインと浩樹の4人はそれぞれのパートナーに愛を誓ったのだった。

誓いのキスの場面で、まゆりとしおりはあの時のことが過ぎったけれど、脳内でお互い「今度はちゃんとしたやつだから。」と確認しあうと、安心してシェインと浩樹のキスを待った。

最前列に陣取っていたタケシとまゆかは、固唾を呑んで式の進行を見守っているうち、いつの間にかがっちりと手を繋いでいたのだった。

指輪の交換ではバザーに出ている手作りのビーズの指輪を用いた。

まゆりはキラキラ光るピンクの指輪が浩樹の手からはめてもらえると、感激して泣いてしまった。

ひゅ~!と誰かが口笛を吹いた。

「おめでとう!」

式が終わった途端、オルガンをスタンバイしていたミセス順子が演奏を始めた。

それに合わせて、そこにいる参列者全員立ち上がると、賛美歌を合唱した。

歌を歌っている途中で、憑依をといたしおりとシェインは、僕らに笑顔で軽く会釈をするとふわぁっと新婚旅行に行ってしまったのだった。

…ありがとう、みんな…

「良かったね…あの二人…」

まゆりは僕の隣でそう言った。

「そだね…でも…今度はさ…いつになるかわかんないけど…ちゃんと綺麗なの着てやろうね…」

「えっ?」

「式」

合唱の歌声に負けた僕の声が何て言ってたか、まゆりは気になって仕方がなかった。

それでも繋いだ左手の薬指に、たった今浩樹にはめてもらった指輪が見えると、にやにやが収まらないのだった。


急な結婚式の盛り上がりのまま、バザーが始まった。

僕らはウォーレン牧師とミセス順子の手伝いを一生懸命した。

手伝いの方々や集まったお客さんとも仲良くなり、楽しい時間を目いっぱい過ごせたのだった。


それからしおりとシェインに会うこともなくなっていた。

「…なんかさ、寂しいねぇ…」

しおりがいなくなってもまだ、「成仏大作戦」のメンバーはいつものようにまゆりの部屋に集合していた。

「…そう…じゃさ…付き合ってあげようか?」

しんみりしていたタケシにまゆかが何気なくそう言った。

「えっ!ホント?何で?いいの?俺で…」

嬉しさと戸惑いでいっぱいのタケシは、まゆかの傍にそそそと来た。

「…うん…いい…」

「えっ!ホントに?わ~い!…あ、でもなんで?」

「…うん…なんか…」

そこまで言いかけてまゆかは考え込んだ。

「えっ?何?何?教えて!」

「…ん~…わかんない!」

「なんだ、それぇ~!」

タケシとまゆかがじゃれあっているのを見届けると、僕はそっと部屋から出た。

そして、渡り廊下の戸を開けた場所に腰掛けると、まゆりも後ろからついて来ていた。

「あれ?まゆたん…」

「ついて来ちゃった…」

可愛く照れるまゆりの顔が満月に照らされて余計に綺麗に見えた。

「あの二人…良かったね。」

「…ん?しおりさんとシェイン?」

「もそうだけど…タケシ君とかーちゃん。」

「ああ…そだね…」

「うん…良かった…そだ、あのね…家のパパがね、最近あの子見ないねって…しおりさんのことみたい。」

「えっ?お父さん…しおりさんのこと知ってたの?」

「えっ!うん…とっくに…ヒロ君が家に引越してきた時からだったかな?ずっと知ってたよ…パパも、ママも…」

「ええっ!パパさんもママさんも見えてたの?しおりさん?」

「うん…長年こういうお仕事してるし…それでね、同じ年頃だし、みんなで仲良くしてるから静観してたんだって…」

「へぇ…そうだったんだぁ…」

「あ…そう言えば…しおりさん、折角ウエディングドレスにも着替えられたのに、式の時は残念だったね…」

「あ、でも、憑依してない時は二人ともきちんと着てたじゃない!まぁ、写真は撮れなかったけど…」

「うん…あのね、しおりさんとシェインさんね…教会で結婚式したけど…ホントはさ、私…家のお寺でもやってもらいたかったなぁって…仏前結婚式。」

まゆりがしみじみ語ると、不意に上空から聞き覚えのある声が聞こえた。

「やるよぉ~!まゆりちゃんのお寺でもまゆかちゃんの神社でも!」

僕らが見上げた先に月明かりを背に手を繋いで飛んでくるしおりとシェインの姿があった。

「ただいまぁ~!まゆりちゃん!浩樹君!」

そういうなりまゆりに抱きついてきたしおりは、にっかにかの笑顔で元気いっぱいだった。

シェインも何故か僕に抱きつこうとしたので、僕は両手でガードして阻止したのだった。

「浩樹、冷たい…」

「あっ、ごめん、ごめん…それより…どしたの?二人とも…」

うな垂れるシェインの薄く見えてる肩を叩くと、僕はすぐさま話題を変えた。

「ああ、帰ってきたの!」

「えっ?」

しおりの短い答えにまゆりは驚いた。

「…あのね…みんなとこれまでみたいには一緒にいる訳じゃないんだけどね…だからって、ずっと離れたまんまって訳でもないのよ…こうやって、たまに戻って来て、みんなの顔見て、色んな旅の話とかお互いの近況報告とかしてね…そういうので行こうって、シェインと話し合ったの。ね~!」

しおりは嬉しそうにシェインに同意を求めた。

「…そっか…良かった…そういうのがいいね…うん…そうだね。」

僕らの関係は少しづつ形を変えながらも続いていく。

僕はそういうのがいいなと思った。

見上げた夜空に浮かんで見えるまぁるいお月様も、「いいね」と言ってくれている気がした。

最後まで読んでくださって本当に本当にありがとうございました。

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