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彼女と僕らは DH

「彼女と僕らは」の続きです。

まだ続きますので、どうぞよろしくお願い致します。

「なんかさぁ…しおりちゃん、ずっとにたにたしちゃって…なんかあったの?成仏できそうとか?」

毎度の「成仏作戦会議」と称したまゆりの部屋での集まりに、話の中心人物の姿はなかった。

代わりと言ってはなんだが、まゆかが「お泊りセット」を持参して来ていた。

タケシの発言にまゆりとまゆかは一瞬顔を見合わせると、ほぼ同時に言葉を発した。

「あっ…どうぞどうぞ…」

譲り合いの結果、まゆかが説明することになった。

「あ、じゃあ…ごめんね、りんちゃん…で、そだ…しおりちゃんなんだけどね…ケインの教会でね、なんか自分と同じくらいの年頃の男の子の幽霊と仲良くなったんだって…え~とね…確かさ…え~と…」

たどたどしいまゆかの話に、まゆりが助け舟を出した。

「そうそう、ケインの亡くなったお兄さんでシェインさんって人と仲良くなったんだって…私達は会ってないからどんな人かわかんないんだけどね…」

まゆりの言葉に今度はまゆかが続けた。

「ケインにちょっと似てる感じで、すんごくかっこいいって言ってた…そんで、しおりちゃん、いっつも他の幽霊さん達に出くわしてるけど、話しかけてきた人初めてだって…他の人は自分のことで精一杯なのか、どよ~んとしてるから、こっちに気づかない人ばっかりだけど…シェインさんは笑顔で話しかけてくれて、嬉しいってはしゃいでた…」

「そうそう、すごかったねぇ…ずっとテンション高くてさ…帰りの車の中でずっと一人で喋ってたね…」

「うん、一緒に帰ってきたけど、シェインさんの余韻に浸りたいのか、ちょっと本堂にいるねぇ…って、にやにや行っちゃったの。」

まゆりとまゆかの話に、僕もタケシも「ふ~ん」としか今は答えられなかった。

生きている4人は一旦誰も喋らなくなると、それぞれテーブルに出ているおやつに手を出したり、飲み物を口にしたりした。

そこにいる全員の食べたり飲んだりする音だけの中、みんなそれぞれしおりのことを考えていた。

ふと甘い物が食べたいなと思ったまゆりは、出すのを忘れていた教会で売っていた手作りクッキーをバッグから取り出すと、おやつの皿の端っこにザラッと出すと、みなに食べるように促した。

「どうぞぉ…これね、ケインの教会で売ってたの…味、何種類かあったんだけど、とりあえずプレーン買ったの…今度行った時はチョコか抹茶か、チーズかチョコチップにしようかなって…」

「わぁ、美味しそう…じゃ、遠慮なくいただきま~す。」

それまでの議題は置いといて、まずはみなクッキーを口に運んだ。

「あ、美味しい~!まゆたんのママさんのも美味しいけど、これはこれで違う美味しさだねぇ。」

「ホント、美味いねぇ…これ、いくらだったぁ?」

タケシは饅頭に続き、値段を聞いてきた。

「あ、え~とね…税込み300円だったの…それで、こんだけ入ってるからいいでしょ?ミセス順子とウォーレン牧師が二人で毎朝作ってるんだって…パンも売ってるらしいけど、今回はもう売り切れちゃってた…近所の人に人気あるから、すぐ売り切れちゃうんだって…もう二人ともお年だから、朝一回だけの作業で無理しないで作れる分しか作らないんだって…他にも仕事あるみたいだし…だけど、月に一度の教会のバザーの時は、日曜学校に来てる人が手伝いに来てくれるんだって…だから、いっぱい作るって…」

「そうそう、なんかバザーの写真飾ってたけど、楽しそうだったぁ…今度さ、みんなで行ってみたいねぇ…食べ物もいっぱい出るし、手作り品もあるんだって…ミセス順子がね、よかったらいらしてねって…」

まゆかが興奮しながら説明の続きをしてくれた。

「今度のバザーはね…確か…さ来週じゃなかったっけ?…確かさ来週の土日だったはず…」

まゆかのぼんやりした記憶を確実なものにするかのように、まゆりはクッキーと一緒にいただいたチラシを出して見た。

「そうそう…さ来週の土日でね…え~とね…午前10時から午後2時までだって…焼きそばとか焼き鳥とか…後ね、豚汁にね、おにぎりでしょ…それと、ウォーレン牧師の石釜ピザとミセス順子の特製ケーキ?も出るみたい…ボランティアの方が作ったパッチワークの小物とかぬいぐるみでしょ、寄贈品の石鹸とかも売ってるって…それにね、合唱の方達のライブとかあって、ゴスペルなんか歌ったりするんだって…あ~、行ってみた~い!うふふふふ…」

まゆりの嬉しそうな笑顔に、僕はさ来週のバイト前に一緒に行きたいと思ったのだった。


「それもいいけど、しおりちゃんのことどうしようかねぇ…」

タケシが話題を元に戻すと、僕らはクッキーを口の中でもごもごやりながら考え込んだ。

「…ん~…もしかして…しおりさん、そのシェインって人のこと好きになっちゃってたりして…」

僕の発言にタケシもまゆりもまゆかも、「うんうん。」と激しく頷いた。

「そんな感じそんな感じ…私、すんごくよくわかるの…だって、その、私も同じ気持ち知ってるってのか、今、そうだから…」

まゆりはそこまで言いかけると、ちらりと僕の方を見て顔を赤くした。

「あ、そだ…あのさぁ、広沢君さ、りんちゃんとちゃんと付き合ってるんだよね!ちゃんと告白したんだよね!」

思い出したかのようにまゆかは語気を荒くしながら、僕に詰め寄ってきた。

「…ん、あ、うん…この間、ちゃんとまゆたんに告白しました…んで…だっ、大丈夫なはず…です…」

「はぁ?はずぅ?広沢君、そこはさ、はっきり断言してよ!あたしさ、りんちゃんからまだちゃんとお付き合いしてくれって言われてないって聞いてたから、腹立って腹立ってさぁ…広沢君に会ったら絶対に言ってやろうと思ってさぁ…」

「まぁまぁまぁまぁ…まゆかちゃん、落ち着いて、落ち着いて…ねっ、ねっ…まぁまぁ…なぁ、浩樹さぁ、ちゃんと告白したんだよなっ!なっ!そうなんだよなっ!」

鼻息荒いまゆかと治め役のタケシと照れて両手で顔を隠しているまゆりの視線を一身に浴びながら、僕は大きく言い放った。

「…じゃあ、ここで、もう一度きちんと言うよ!言わせて!俺は!まゆりちゃんが大好きだぁ~!だから、ちゃんと正式に彼女になって下さい!お願いしますっ!」

みんなの前で改めて大きく告白すると、僕の心拍数は尋常ではなくなってきたのだった。

タケシとまゆかの強い視線が僕から照れきっているまゆりに移ると、「…あの…はい…こちらこそ…よろしくお…願い…しますっ!って、この間も言われたのに…」とまゆりは頑張って返すと、すぐさま「きゃああああ~!恥ずかし~~~~!」とベッドに置いてある可愛い薄ピンクの羊のぬいぐるみで顔を隠した。

「ひゅ~う!」

タケシとまゆかのそれは置いといて、僕はやっぱりまゆりが好きだと思った。


それからしおりはあまり僕らと行動を共にしなくなってきた。

僕とタケシとまゆりとまゆかで、成仏させてあげようとあれこれ作戦を考えては提案するも、「また今度でいいかなぁ。」なんて返してくることもしばしば。

「え~!しおりさん、滝に行ってみないのぉ~?なんでぇ~?あそこなら、成仏できそうじゃない?駄目?まゆたんが運転して連れてってくれるって言ってんのに?」

「あっ、ごめんなさい、みんな…明日はちょっとシェインと一緒に出かける約束になってて…」

「え~!どこにぃ~?」

「…あ、あの…アメリカ…なんだけど…」

「はぁ?アメリカぁ?」

「あ、うん…ほら、ケインが行ってるから…だから、シェインとちょっと様子見に行ってみようかって…ごめんね、折角、誘ってくれたのに申し訳ない…」

「ふ~ん…そうなんだぁ…」

しおりがやっと寺の本堂に戻って来た夜、風呂上りの僕とタケシとまゆりでしおりを次の日バイトが休みということで滝に誘ってみたのだが、どうやらそういう理由があるそうであっさり断られてしまった。

僕らはそんなしおりの態度の変わりように、少しの戸惑いと若干の苛立ちを覚えていた。

「…あのさぁ…こんなこと言うのもなんだけどさぁ…しおりちゃん、本気で成仏する気あんの?…ここんとこ、しょっちゅういないけど…もしかさ、成仏するつもりないんだったらさ、俺らも、協力すんのやめるよ?いい?…俺らもさ、そろそろ学校始まるし、勉強もバイトも色々あるから、案外忙しいんだよね…」

「…ごめんね…なんか…ごめんなさい…そうだよね…みんなも忙しいよね…」

タケシの少し強い言い方に、しおりは浮かれすぎていたことに気づいたようだった。

「まぁまぁ…タケシも落ち着いてさ…ねぇ、しおりさん…あのさ、俺ね、タケシが言うのもそうなんだけど…その前にさ…そのシェインって人さ…ちゃんと俺らにも紹介してもらえないかなぁ…こうやってさ、縁あって集まった仲間なんだからさぁ…それぐらいはいいでしょ?ねっ?…駄目かなぁ?俺、なんか変なこと言ってない?…よねぇ…多分、みんなもシェインって人をちゃんと紹介してもらったら、納得ってのかさ…何?なんて言うの?こういうの?…まぁ、つまりは会わせてって感じかなぁ…」

僕は僕なりの考えをそのまま伝えた。

まゆりもタケシも僕の意見と同じようだった。

「…そ、そうだね…シェインをちゃんとみんなに紹介しなくちゃいけないよねぇ…あたしの成仏に協力してくれてるまゆかちゃんにも…きちんと…そうだね…そうじゃないと、みんなに悪いものねぇ…ごめんね、なんか…明日…明日、シェインに会うから、みんなと会ってくれるように聞いてみるね…ごめんね、ちょっとだけ待っててもらえる?…ホントごめんなさい…」

深々と頭を下げるしおりの姿に、僕は複雑な気持ちで見つめるしかなかった。


まだ学校も始まらず、バイトも休みでみんなで「滝に行こう!」とほぼ決まっていた為、急にキャンセルになると途端に何をしたらいいのか途惑ってしまっていた。

それは僕だけじゃなく、タケシもまゆりもそしてまゆかも同じらしかった。

「…あのさ…俺、バイト代入ったからさ、まゆたん、その…ケインの教会ってところに連れてってもらってもいいかなぁ?…草薙さんもタケシもいることだし…まぁ、しおりさんとそのシェインって人はいないけど…俺も、まゆたん達の話聞いたら、ちょっと行ってみたいなって思って…どうだろう?いい?」

しおりを成仏させてあげようと滝に出向く予定がキャンセルになったのを聞いてなかったまゆかは、朝早くからまゆりの家に来てくれていたのだった。

「…うん、そだね…私は運転だから、全然大丈夫なの…タケシ君とかーちゃんは?どうする?」

「あたしは賛成!だって、あそこすんごく素敵なんだもん!」

「あ、俺も賛成!二人がそんなにいいっていうんなら、ちょっと行って見たいなぁ…俺も、バイト代出たから、今日は俺らが全部おごるよ!まゆりちゃんのガソリン代も浩樹と俺で出すし、帰りは俺、運転代わるし…」

集まった全員の気持ちが固まったので、早速出発したのだった。


しおりは仲良くなったシェインと一緒に、アメリカにいるケインの元まで飛んで行った。

すっかり現地になじんで楽しく牧師として活動しているケインの笑顔を見届けると、日本に戻る途中、ハワイの人があまりいないビーチで一旦休憩することにした。

水平線の向こうに沈んでいく綺麗な太陽を眺めながら、二人は椰子の木陰に腰掛けた。

「はぁ…ケイン、楽しそうだったねぇ…良かった…しおり、一緒に来てくれて本当にありがとう…」

シェインは爽やかな笑顔で隣に座るしおりを見た。

「…あ、ううん…こちらこそ…連れてきてくれてありがとう…」

真っ直ぐに沈んでいく太陽を眺めているしおりは、どこか寂しげだった。

「どしたの?しおり…疲れちゃった?」

「あ、ううん…あたし、幽霊だから、疲れはないよ…大丈夫…ありがと、シェイン…」

「ん…なんか、元気ないね…」

「そう?」

「うん…どこか寂しそう…」

「…そんなこと…ないと…思うよ…あたしはあたしでいっつもこんな感じだよ…」

「いや、違う…君と会ってから、まだ間もないけど…なんか…こう…上手く言えないけど…辛いことでもあった?それとも、僕といるの、嫌?」

「ううん、全然全然…むしろシェインと知り合えてすんごく嬉しいの…ただ…」

「ただ?」

「なんて言うか…これまで、生きてる仲間と一緒に過ごしてたから…」

「…」

「…それで、前にも話したけど、浩樹君って子の部屋で恩返しってなって、そんで成仏できたらって…仲良くなったみんながね、あたしの為に一生懸命やってくれてて、すんごくありがたいの…でね、あたしが食べたいなぁって、食べ物の味とかこの体じゃわかんないからって、まゆりちゃんなんか憑依までさせてくれて…だけど…憑依してる時に浩樹君とまゆりちゃんがキスして…あたしもキスの感触を…なんか知っちゃって…なんて言うのか…少しギクシャクしちゃったんだけど、まゆりちゃんとはちゃんと仲直りできたんだけどね…でも、もう、前みたいにみんなと同じもの食べたいって思っても、まゆりちゃんが憑依してって言ってくれても…なんか…もう…それはできないし…なんかしちゃいけないって思って…そしたらね…なんで、あたし、死んでんだろ?って…」

「…そうなんだぁ…そっかぁ…」

「…そうなの…そしたら、仲良くしてるけどあたしはみんなとは違うんだって…わかってんのに、改めて気づかされたって感じで…そしたらね、もう、みんなと一緒にいちゃいけないような気がしてたの…やっぱり、生きてる人達と死んでる自分は一緒にいられないってのか…上手く言えないけど…そんな時だったから…シェインに声かけてもらって、すんごくね、すんごく嬉しかったの…」

「そっかぁ…」

「嬉しい気持ちはそうなんだけど…だけど、そしたら、大好きなみんなと離れた方がいいのかなぁって思い始めてきちゃってるの…あたしと同じあなたといるのが、心地いいってのか、すんごくね、気持ちが楽ってのか…なんかそんな感じだから…」

「…ああ、しおりの言ってる気持ち…僕も何となくわかるなぁ…僕は今まで君みたいな幽霊に会ったことなかったから…ほら、他の幽霊達って、自分のことで精一杯って感じで、声かけにくいってのか、かけたくない感じだけど…しおりは生きてる友達と仲良さそうにしてるの見たからさ…だから、声かけたんだ…それに、僕のタイプだったからさ…」

シェインの最後の言葉に、しおりは沈んでた気持ちが一気に上向きに変わり始めた。

「えっ?なんて?」

「あ、だから…生きてる人と…」

「違う!違う!あたしに声かけた理由…最後に言ってた言葉!」

「ん?…え~と…僕のタイプ?ってとこ?」

首を傾げて自分の顔色を伺うようなシェインを、しおりはバシッと叩いて続けた。

「そう!やっだぁ~!え~!…シェインったら…そんな…え~?え~?…うふふふふ…やだぁ~ん…あはははは…やっだぁ~…そんな…うふふふふ…」

「僕のタイプ」なんて言われたのが生きてる時も、死んでる今でも初めてだったしおりの照れの激しさに、シェインは少し、いやかなり戸惑ってしまった。

「そうだよぉ~…しおり、すんごく可愛いから、僕は付き合いたいなって思ってるんだけど…」

「えっ?」

「しおり…僕の彼女になってくれませんか?」

真剣な眼差しで真剣に見つめてくるシェインの綺麗なエメラルドグリーンの瞳に、しおりは吸い込まれそうになった。

「…あ…はい…ってか、あのね…逆にあたしなんかでいいの?…もっと…あの…もっとね…可愛い…」

しおりがそこまで言いかけると、不意にシェインの唇が言葉を塞いだ。

まゆりに憑依して経験したキスとは違う、同じ幽霊同士の熱いキスに、しおりは体がとろけるかと思った。

閉じた目をゆっくり開けると同時に、シェインの唇が離れるとしおりはうっとりとしたままだった。

「…しおり…これから、ずっと一緒にいてくれる?」

「はい…」

返事をしてから再び唇と重ねると、そのまま白い砂の上に二人とも倒れこんだ。

生暖かいハワイの潮風に揺れる椰子の木の下で、しおりは本当に心を許せる相手ができたと感じた。

そして、生きている浩樹達にシェインをきちんと紹介したいと強く思ったのだった。

最後まで読んでくださって本当にありがとうございました。

これからもどうぞよろしくお願い致します。

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