第四回『休日の過ごし方』
これまでの異界交友記:イジメカッコワルイ!
彼女の名前は『アマール・シャムロッテ』。獣人族の女の子。メスとは呼ばない。
身体はあまり強くないのだが、ご両親の強い勧めでうちの道場に通っている。
実家は特別な家庭ではなく、下流と中流階級の間くらいと……
年齢は四歳。僕の二個上で、中学生ほどの見た目だ! 中学生ほどの見た目だ!!
中学生ほどの見た目の獣っ娘で、高圧的……内角寄り、僕のストライクゾーンにガッツリ入っている。
いじめの事だが、確かに以前からあの四人にされていたようだ。
あんなに高圧的なのに何故やり返さないのだろう? 一対四じゃ分が悪いか……
ん~なんとかしてアマールルートに入りたいのだが……
ちなみに、いじめの事はロタリアが知っていた。「子供同士のことに口は出さない」と言う事で、放置しているらしい。放任主義だね~僕も放任主義にしてもらいたいよ。
こうも、個人レッスン→道場での稽古→個人レッスンとなると、流石に身がもたない。こちとら三十二歳のおっさんよ? とは言うものの、二歳の体は元気そのもので、毎日そつなくこなしていく。
この世界で四歳と言うと、学校に通っていてもおかしくない年齢だ。僕も来年から通うことになるらしい……らしいのだ。
まだ不確定で、両親の間でどうするかまだ決まっていない。寝る間際、二人で言い争いしてるのを聞いた。詳しい内容は聞いていない。だって言い争いの最中、急にニャンニャンし始めたからな。ドアを蹴っ飛ばして自室に戻った。ケッ、弾けて混ざりやがれ、ボケ! 『僕は悪く無い』
× × ×
数日後、例の四人がまたアマールに絡もうとしていたが、僕が彼らを見つめていたら、何もせずに帰っていった。
まぁ、中指を立てられたりして、世界のフィンガー『くたばりやがれ』をくらったが。
フッ……人気者は辛いね。
アマールと、目が合う。彼女はペッコリ頭を下げ行ってしまった。礼儀正しい。
「アマールさん!」
「何よ……」
「少しお話しませんか?」
「嫌よ。と言うか、あなた私の名前調べたのね。キモチワル」
ハウッ……!
「自分が名乗らないなんてキモチワル過ぎるわ」
あの四人にはしたのだが、アマールにはしていなかったな。名乗りもしない奴が、自分の名前知ってたら、そりゃ気持ち悪いよな。
「それはすみませんでした。僕はミカルド・クリリアンテイル。以後お見知り置きを」
「知ってるわよ。この道場の息子でしょ」
うわっ、ソレはあまりにも酷くないですか?
その後、何故いじめられていたのか聞こうとしたのだが、何も聞き出すことはできず、彼女の背中を見つめることしかできなかった。
あの時、なんで四人がアマールに絡んでいたのか……よく思い返せ……
そうだ、魔物がなんとかと、言っていた。
剣と魔銃のファンタジー世界だ。魔物の一体や二体、ひいては魔王だって居てもおかしくはない!
しかし、町中に魔物が出てくるのは確かに変だ。
RPGなどではまずありえない。どんなバグだよ。デバッカー仕事しろ。僕なら運営に、罵詈雑言をしたたメール!
けど、アマールがウソを付くような人とは思えない……絡みが少ないので確信はないが、あの性格から推察するに嘘って事はないだろう。
「魔物、いたもん!」と、涙目で言っていたのだろう。あの子の涙目なんて想像できないが……
それはそうと、町中に魔物が出たってかぁ……実を言うと、僕はこの町の事を詳しく知らない。
ロタリアの買い物の手伝いで、食材を買いに行く時だけ町へ出る。なので、商店と家の導線くらいしか知らない。
この世界での生活は、そのほとんどを剣術の稽古に当てられている。
数日に一回ある休日には、疲労のおかげでグッタリ。ダラダラしてから、勉強に時間を割いている。
おまけに友達と呼べる存在も居ないので、町に出掛ける事がなかった。
よし、次の休日に町へ出掛けてみるか!
次の休みまでの数日も、頑張ってアマールにアクションをかけたが、なかなか反応は薄いのだった。
今日は休日、鳥籠の掃除はしない! 飼ってないからね。
鳥籠の掃除をして、母親との電話で小言を聞き、テレビを見て寝るのが、一般的社会人の休日の過ごし方だ。
休日の前日は、大体過酷な稽古をつけられる。なので、グッタリしているのだ。昨日も激しかったなぁ。
あぁ、節々が痛いし、筋肉痛が……シップとかバンテリン欲しいわぁ。
などと無い物ねだりしても仕方がないので、身体に鞭打ち準備を開始。
ロタリアから少しのお小遣いをもらい、家を出る。
貰ったのは50G。日本円にすると、五百円って所だろう。1G=十円だ。
二歳児の小遣いにしちゃあ多いかな?
正直、社会人やってた感覚で言うと「こんなんじゃ何もできないよ」って感じだ。しかし、アリアハンの王様も、50Gしかくれない! いやいや、ゲームと一緒にしちゃイカン。
× × ×
意気揚々と町中を練り歩く。
見るものすべてが新鮮だ。この世界を勉強する為に、色んな本を読んではいたが……いやはや、百聞は一見にしかずって感じだな。
露店で販売していた『お好み焼き』のような食べ物を、購入。
40Gもしたが「20Gしかないよーおじちゃーん」って言ったらまけてくれた。チョロいぜ!
出来立てを、ハフハフと食べながら歩いていく。
日本では、見たことのない建造物ばかりだ。前世で言う、欧州辺りの町並みに似ている(行ったことないんだけどね)。
町には、様々な種族があふれていた。僕のような獣人族はもちろん、人間族、天使族、小人族など、かなりの種族が入り乱れている。
この世界では、種族がかなり細分化されているらしい。家にあった本に書いてあったが、必要ないので覚えていない。
どこの町も、このように多種族が所狭しと生活しているらしい。いつの日か他の町も見てみたい。一部例外はあるようだが……それはまた別のお話だ。
僕の住む街の名前は『コピット』と、言う。
碁盤の目状になっていて、居住区、施設区、管理区と区別されている。
居住区は、文字通り。
施設区は、商店や冒険者ギルドなどの、特別な施設がある区で、我がクリリアンテイル家は道場なので、施設区だ。
管理区は、町を管理する施設が揃っている。役場みたいなものが集まった区画だ。そこまで広くはない。
どこの町もこの三パターンで構成されている。
大都市などにあるお城などは、管理区に分類されるようだ。
僕は今、居住区を歩いている。宛もなく歩いているわけじゃないぜ。アマールの家へ向かっている。
住所など、うちの『門下生帳簿』を見れば一発だ!
これがバレたら、また「キモチワル」って言って頂けるのであろう……イヤイヤイヤ……
言われる為にやったのではない。
彼女の行動範囲が知りたいのだ。なんか、ストーカーっぽいけど、そうじゃあない。
この町は、そんなに小さい町じゃない。ガキが行ける範囲なんて、決まってる。ましてや、彼女は身体が丈夫じゃないしな。自ずと行動範囲は限られる。
家の周りを重点的に探せば、魔物の手がかりだってあるはずだ。
フィールズとロタリアに、魔物の事を聞いてみたが「町中では出ないよ」と言っていた。しかし、僕はアマールの言っていた事を信じたいんだ。
アマールの家に着いた。
一軒家ではなく、アパートと言った雰囲気。彼女はここの三階……洗濯物が干してあった。
「さて、辺りを探ってみますかな!」
干してあるパンツが降臨される事を期待しつつ、僕は調査を始めるのであった。




