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第十七回『コピットの森にて』

これまでの異界交友記:白か黒かで言えば白!

 コピットの森は、そこまで茂った森ではない。面積としては広いのだが、下まで陽の光は届くし、森特有の薄暗い感じず、遊歩道も完備されていて危険な森ではない。

 狩りなどをする際は、遊歩道からさらに奥に行く必要があるが、特別な許可などは必要ないので、子ども達の遊び場になっている。

 凶悪な動物や魔物はまず居ないから安全である。



 そして、今回のターゲット幻夢茸(ゆめだけ)は、その怪しげな名前とは裏腹に、超合法的な一般市民がよく口にする食材だ。


 前世で言う味噌汁的なスープに入れてみたり、天ぷら的に揚げてみたりする事が多い。『香り松茸・味シメジ』と言うがこっちの世界では『香り幻夢茸。味幻夢茸』だ。


 これを乾燥させ、煎じて霊草などと一緒にすると、ポーションなどの回復薬になる。

 この世界はゲームではないので、飲めば即回復って感じはしない。感覚的にはリポDとかに近い。


 そんな幻夢茸を四本採取……正直な所、新米と言うかガキでも出来るお使いだ……

 コピットの森の全域で採ることが出来るからね……ほら、こうして森の入口付近で既に三本も採取できちゃった。

 このキノコは群生している事が多いので、一度の何本も取れる。こりゃ自宅でのお昼ごはんに間に合うんじゃないか?


 ×   ×   ×


「やっぱりキノコブーム来てるだろこれ?」


 あれからしばらく遊歩道を巡回して探しているのだが、見つからない……生えていた痕跡はあったのだが……もう少し奥に行ってみるかな?






「駄目だ……」


 遊歩道から離れ、少し分け入った場所に来てみたが、この辺りも採り尽くされてる……


 その後もラスト一本を探し求め、分け入っていった……





「全く見つからん!」


 小一時間ほど探しまわってるが、まだ見つからない……この依頼は時間指定ないから良いけどさ……


「!!」


 今気づいたが、闇依頼(これ)修行になって無くないか? この森に来てから闇朱雀(やみすざく)抜刀してないぞ。

 まだ見つかる気配もないし、適当な動物でも狩るか……


 あたりを見回すと一羽の動物を見つけた。


「あ、目が合った」


 茂みの先に居たのは、ピンク色の体毛に覆われた球体。小さいくちばしがチョコンと付いていて、長い耳のようなものが垂れ下がっている生き物。

 あぁ……実にモフりたい……ゆるふわでかわいい! 潤んだ瞳をパチパチさせたそいつは、一目散に逃げていった。

 その後ろ姿も実に愛らしい。


 あのピンク毛玉は『ペッピー』と言う生き物。星狐に出てくるウサギみたいな名前だ。


 今の奴は、前世で言うとこの野ウサギ的な動物だ。ペットなどにも適しているので、犬猫って感じかもしれん。


「あいつはダメです。可愛い過ぎます!」


 僕が探し求めているのは、こうイノシシ的な? そうそうあんな感じ!



 人ほどの大きさの獣が、沢の水を飲んでいた。四足歩行のそいつは、赤い体毛に覆われ牙はエグい事になっている。しかし、奴の肉は美味! 僕はこいつの干した肉が好きなんだ。あのジャンクな感じがたまらない。


 そろりと近づいていく、僕より若干でかいがなんとかなる! なにせ当てれば勝ちだ!


 ×   ×   ×


「フッ……余裕の好子さんだぜ」


 突進するしか能のない奴だからな。回避の練習を何度かして、トドメを刺した。回避の練習にしかならん奴だが良い汗かいた。


 その後、もう一体同じ奴を狩った。




 疲れた僕は、沢で水を飲み倒木に腰掛けていた。


「キノコも後一本……とっとと見つけて…………あった……なんだよ〜見つかる時はあっけないな〜」


 僕の腰掛けていた倒木に、一本だけ生えていた。

 採取したキノコを袋に入れ一息。


 さて、もう一体くらい狩ってから帰ろっかな? 陽も傾き始めてるし……

 次の狩りの前に沢で顔を洗う。ここの水は、超冷たいからなリフレッシュするぜ!


 ガササッ!!


「アーーッ! ……ンだよ畜生。ビビらせやがって」


 大きな音を立てて現れたのは、一匹の猿だった。


 深林猿(しんりんざる)と呼ばれる。森の奥深くで暮らす野生の猿だ。滅多にこんな場所で見る事がない迷い込んだのかな?


「あっ! こいつ!! それ僕のキノコだぞ!」


 深林猿の特徴は、手癖の悪さ……気を抜くと持ち物を取られるぞ!

 やられたー……こんな奴とここで出くわすなんて想定外。油断して袋置きっぱなしだった。そりゃあいつらに「盗って下さい」って言ってるようなもんだぜ……


 そして、もう一つの特徴が逃げ足の速さだ!


「こんのクソザルが!」


 ×   ×   ×


「はぁはぁ……やっと追い詰めたぞ。エテハムが……」


 行き止まりっぽい場所に追い込んでやった。


「さぁキノコを返しなさい」


 人と動物……言葉が通じるとは思わないが、精一杯の思いが大事だ!


「…………」

「………………」


 こいつめちゃ挑発してくるな……フッ……動画投稿で鍛えられた、煽られ耐性をナメたらアカン。僕はこの程度のことで取り乱したりはしない……


「ゼッテー殺す!」


 駆け出しながら、闇朱雀を抜き放つ!


「返せ!!」


 斬りかかっ時、深林猿はバックステップで森の中に飛び込んでいった!

 あっそっか、これゲームじゃないから先に進めない透明な壁ってないんだ……


「チィッ!」


 深林猿がいなくなった先には、石像のようなものが立っていて、僕はそれに斬りかかってしまった。


 サクン!


「え?」


 石像が切れた? 生き物絶対殺すマンのこの剣は、生き物でない物を切ることはできない。しかし、眼前にある石像は切れた……

 ゴリッと擦れる音、完全に切れてるな。


 これ大丈夫かな? お地蔵様的な何かかな? 文字が書いてあったっぽいが、風化して読めない。それに全く手入れもされていないのできっと大した物じゃないな!


 そんなことより、サルカスだ!


「……あーもうクソ! 逃げられた!」


 折角四本集めたのによ! 

 僕はむしゃくしゃしてさっきぶった切った石像を思い切り蹴り飛ばした。


 ゴリゴリと石像の上の部分が落っこちた。


「イッテー!」


 クソふんだり蹴ったりじゃないか……


 はぁ、もうこりゃ駄目だ……闇依頼失敗だ、帰ろ。特別ペナルティないし……


「……流石にこのままはヤバイかな?」


 蹴り落とした石像を、元の場所に戻そうと思い、持ち上げる。


「アッチー!!」


 切れた断面に手を触れた瞬間、指先が焼けた。鉄板でも触ったみたいな感じだ!


「なんなんだよもう!」

 もうどうでも良くなり、腰を上げると、切れてそのままの石像の上に男が立っていたのだった……



 なんだ、この男? どっから湧いて出てきた?

 男は、ダークスーツを身に纏っていた。髪は真っ黒で、エロゲの主人公よろしく、目に前髪がかかっている。その隙間から見える瞳は真紅。肌は白く、超美形だ。

 ポケットに手を突っ込み、首を鳴らしている。

 年齢は僕よりずっと上かな?


 視線が交差する……


「そこの貴様が余を解放してくれたのか?」


 はい? 一体何の話でしょう? 偉そうに……


「……」

「余を前にして黙ったままとは見上げた根性だ」

「……よくわかんないけどさぁ。あんたどっから現れたの? あと、見ず知らずの相手に貴様はないわ」


 思ったことを言ってみる。


「ほう……余の問いかけに答えず、逆に問おうと言うのか……汚らわしい獣の分際で生意気な」


 獣? あっこれ、僕が獣人族(ケムルフィン)だから悪口的な感じ? 


 若干ムッとすると、男は体を曲げ笑い出した。


「フハハハッなんだ……親愛なる姉上様の差金だったか!」


 は? 僕男だし、こんな親族いるなんて聞いてないぞ。


「そこの獣、名乗る事を許可しよう」

「……あ? まずは自分から名乗るのが礼儀ってもんだろ」

「口をわきまえろよ、下等生物が!」


 男の足元から黒い煙が立ち込めてきた。それは、あっという間に辺りに広がっていく。

 動けなかった……そして、僕の足にまとわりつく……背筋が凍る。


「まぁ親愛なる姉上様の御前だ。姉上様に免じて貴様の無礼、大目に見てやろう。先に名乗れと言っていたな? 獣風情が一端の口を利く…………余の名は『セモベンテー』闇の王にしてこの世を支配する者」


 何こいつ? 電波系? 絶対友達にしたくない系だ。


 なんて返そうかとしどろもどろしていると、黒い煙の中から三体の『魔物』が姿を表した。以前、町中で戦った狼型の魔物だ。しかし、以前のよりでかい……


「さぁ貴様の名は……」




 こ、こいつ……マジでヤバい系だ!? 原理は分からないが、こいつが魔物を召喚したんだろ?

 ヤバイ! 絶ッ対こいつヤバイッ!! 闇の王とか言ってたのも、あながちウソじゃないのかもしれないぞ……


「…………」

「…………」




 いや待てよ? 僕って『生き物絶対殺すマン』じゃん!

 名前……なんだっけ? 闇の王だっけ。

 こいつを止められるのは、僕しかいないだろ? 闇の王だかなんだか知らないが、命ある生き物に違い無いはずだ。って事は、闇朱雀(やみすざく)にかかれば『やみのおうはバラバラになった』って感じだぜ。


「アッハッハッハッ……僕の名前が知りたい? 教える必要ないだろ?」

「何?」

「だってお前はこれから死ぬんだからよ!」


 最高に悪役っぽいセリフを吐きながら抜刀し、手前に居た魔物を切り伏せる。やっぱり一撃だ!

 その流れでもう一体を斬り殺し、最後の魔物も結局一撃だった。


 そして、一人残された闇の王は、無表情だった。もっと驚いているのかと思ったら、余裕しゃくしゃくですか?

 まぁ良いや、後一振りでこれも終わりだ。少しは修行になるかと思ったけど、大したことねーな!


「闇の王さんよっ!」


 闇朱雀は土手っ腹へ一直線、闇の王は自らに迫っている死期に、微動だにすること無く立ち尽くしていた。逃げられないと悟ったか……潔い奴だ。


「取った! ………………え?」


 予定だと、今頃は腹を貫いているとこなのに……


「貴様……よもやそんな攻撃で余を殺せるとでも思っていたのか? ……闇の王も舐められたものだ」


 これは、ロタリアの時と同じだ……闇朱雀がただの棒になってしまう謎の現象……殺せなかった。


「ゲハッ」


 闇朱雀を捕まれ、地面に叩きつけられた。


「姉上様の差金と大目に見てやっていたがつけあがりおって……」


 あれ? これプッツン来てる?


 再び男の足元から煙が……それは先程のように広がらず、男の足元で一塊になっていった。


「大体貴様の事もわかった。ミカルド……余へ働いた無礼、しっかり償ってもらうぞ……」


 闇の王は名乗っても居ない僕の名前を口にした。

 そして、足元で塊になった黒い煙に乗って、浮かんでいた。


「貴様はこの近くの町に住んでいるんだな。闇の王復活だ。手始めに貴様からその町を奪い取ってやろう」 

「!!?」


 それだけ言うと、ふわふわと森を抜けて飛んでいってしまった…………

 僕は何も考えず、コピットの町へ猛ダッシュで戻っていた。

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