第十六回『グレーな奴』
これまでの異界交友記:生まれてこの方コロナほどアプローチしてきたこはいなかった! おじさんタジタジ……
次の日も、また次の日も、コロナとの愛試合が続いた。この分だと、休みの日にも押しかけてきそうだ……
「あ、ありがとうございました……」
「あびがどうございま……!」
今日で何戦目なんだろう? 二十戦目を超えた辺りから、数えてない。
……この子、日を追うごとに強くなってる?
昨日、僕が使った技を、次の日には自分のモノにしているし、前は通用した戦法も、効かなくなっていたりしている……
適応能力高すぎる。
困った時はロタリアに相談してみる。
「コロナちゃんは小人族だからよ」
あっさりと答えはわかった。
小人族とは、この世界における最古の種族。総ての種族の起源とも言われているらしい。
特徴は低い身長と、適応能力。
あらゆる事柄に適応する事ができるようだ……そして、その速度が早い。
しかも、コロナは僕と同じように、別の種族の血が混じっている。
コロナ・チトニアは小人族と狂人族のハーフだった。
たしか狂人族って、関わっちゃいけない系の人達じゃなかったっけ!?
…………まぁ、既に関わってしまったからには諦めるしかないか……
問題は、小人族由来の適応力の高さだ……いつ追いつかれてもおかしくないぞ……
仕方ない……たまには修行に行くとするか。
この日の個人レッスンの後、空き時間を利用して、僕は町に繰り出していた。目的は友人に会う為。
やってきたのは、冒険者ギルドの隣にある宿屋。
その宿屋は僕の友人が経営している。
「ようミカルド。久しいな」
受付カウンターの中で、軽く手を上げて挨拶してきたのは、中肉中背で、若干白髪の混じったおっさん。彼が僕の友人『ゴール』だ。
見た目通り、ミカルドより年上だ。精神年齢の方とは大差はない。
ひょんな事で知り合い、年齢が近いからか、おっさん特有の健康の悩みや、エロトークとしているうちに、意気投合したってわけさ。
こっちの世界では、そこまで年齢の壁はないみたいだ……見た目と年齢がイコールではないからだろう。
そんな年の離れた友人にただ会いに来たというわけではない。
「ゴールさんおひさ!」
この男は、ココで宿の経営をしながらある仕事を斡旋していた。
「なんだよ『さん』付けして、気持ちワリィな。それよりいい酒が手に入ったんだよ。ほらこれ! ロベルト・ロベルトの三十年物!」
この世界には、二十歳以下の禁酒禁煙という法はない。僕自身、タバコはやってないが、酒はなかなか好きな口だ。
「それはすごく気になるが、今日は酒の話をしにきたんじゃない……」
「…………なるほどな。オ~イ、ミカルド来たからちょっと店番頼むぞ〜」
ゴールに連れられてきたのは、四畳半ほどの小部屋テーブルとソファーがある簡素な部屋。
僕の対面に座り、ゴールは何枚か書類をテーブルに雑に置いた。
「とりあえずこんなトコだ。最近は良いのがなくてなぁ。こっちに回さなくていいような物まで回ってくる始末さ」
ぼやくゴール。
彼の裏の顔は、冒険者ギルドで募集をかけられない依頼を、非公式に冒険者に斡旋する『闇依頼』の案内人だ。
公にできない魔物の討伐依頼や、内容と報酬が見合わない怪しい依頼などを、ゴールは冒険者ギルド公認で、斡旋している。
闇依頼の報酬は、ゴールが支払っている。たまに馬鹿みたいな金額の報酬などある。
一度気になり聞いてみたんだが、話によると、闇依頼を捌くとゴールが支払う額の倍以上が、ギルド側から支払われるのだそうな……こんな事を冒険者ギルドが公認でやっているんだから、闇が深い……
この闇依頼は、フリーランス。新米の冒険者でも、高ランクの依頼を受けられるし、僕みたいな冒険者じゃない奴でも受けることが出来る。
なので、僕は闇依頼をこなし、小銭稼ぎと実戦の修行の場としている。
両親には内緒だ。バレたらただじゃ済まされないぞ……フィールズは勿論、ロタリアも決め事を破るのはどんな理由があろうとも、許してくれない。
「あぁ確かに大した依頼ないなぁ。採取系オンリーか……」
「今一人でも回れそうなのはそれくらいだぜ」
☆1 幻夢茸の採取
内容:幻夢茸を四本以上採取する
報酬:500G
場所:コピットの森
人数:一人~四人
☆3 霊草の採取
内容:霊草を八つ以上採取する
報酬:ハイポーション1ダース
場所:ドロイド霊山
人数:一人~四人
☆4 幻夢茸の採取
内容:幻夢茸を四本以上採取する
報酬:30000G
場所:コピットの森
人数:一人~四人
紹介されたのはこの三件……三件中二件がキノコ採取ってキノコブーム来てるの?
星の数だけ難易度が上がる。そこはは異世界でも同じのようだ。
「気付いてると思うけど、☆4はやめとけよ。絶対怪しい……」
「だよな……採取する物、場所が一緒なのに難易度と報酬が違いすぎる……あと、ハイポーション1ダースもいらんから霊草もパス……☆1のキノコ狩りにすっかなぁ」
「まぁそれが無難だろう。どうする? すぐそこの森だから今から行くか?」
「いや、もう暗いから次の休みに行くよ」
夜は魔物も出やすいからね。一撃で殺せるとは言え無理はすまい。
次の休みまで二日間あった。
その間も、コロナからの猛烈な愛試合があった……思った通り、着実に腕を上げてきた。
しかし、あの闇依頼って修行になるかな? キノコ狩りだぜ? まぁ、やらないよりやった方が絶対に良いと、この世界に来て思い知らされた。
だって、あのデイダラぼっちに友達ができたんだからな。それもこれも、避けずにぶつかっていったからだ。
ゴールから闇依頼の詳細を聞いたが、流石☆1。なんて事なかった……これがゴールの言う『こっちに回さなくていいような物』なんだろう。
コピットの町の南西に広がる森が『コピットの森』だ。そのままだ!
野生の小動物が多く、狩りなどには持って来い。昼間に魔物が出る事は絶対にない。
こんな依頼は新米冒険者にでもやらせとけや……僕は新米ですらないんだけどな。
いいんだよ僕は! ソロで☆4クリアしたことあるんだから!
「さてチャッチャとクリアしちゃいますかな?」
こうして僕は、実に半年ぶりの闇依頼をスタートさせた!
ちなみになのだが、やはり休みの日にもコロナが押しかけてきたが、なんとかまいてきた!




