第十三回『事件の終わり』
これまでの異界交友記:ミカルドはのろわれてしまった!
目の前には、黒髪ロングのロリが居た。
床に着かんばかりのロングヘア。
お召し物は『フリフリ☆ ロリロリ♪』のブラックなドレス。ゴスロリって感じが一番近い。惜しむらくは褐色じゃないってとこだ……雪のように白かった。
僕の目の前で腕を組んでいて、真紅の瞳で見下している……下さっている。
そのタイツに包まれた細いおみ足で、思い切り踏んでもらいたい!
『バカ、エッチ、ヘンタイ』と、罵られたい!
首とか絞めてもらいたい!
「縞パンだ」
僕がつぶやくと、ニヤッと笑って僕を見下して下さった。
「ありがとうございます!」
僕は、感謝の言葉を叫びながら飛び起きた。
目の前には見慣れた風景。先ほどの激萌え幼女はどこ行った?
「どんな起き方なの? 今のって?」
「へ?」
隣にいたアマールは、リンゴっぽい果物を食べながら、いつものジト目で僕を見ていた。
どうやら、僕は夢を見ていたようだ……やれやれ、性欲溜まっちゃってる系男子かよ。
理想的な幼女を、夢にまで見るだなん……て…………Oh……パンツはアウトみたいだ……
確か、ロタリアとの個人レッスン中だった気がしたんだが……
「あの、僕どうしてここに?」
「あなた木刀持った瞬間にいきなり倒れたのよ」
「え?」
「えって、驚いたのはこっちよ。本当に持った瞬間にそのまま前のめり。何も覚えてない?」
全く記憶が無い。持ったのまでは記憶しているんだけど。
なんの前触れもなかった……なんだこれ?
「う~ん……わかんない。とりあえず、お風呂入ってくる」
「それがいいわ。汗すごいし、なんか臭いもの」
「ハハハ……」
乾いた笑いしか出ねーよ……
布団をめくると、僕の隣にミルキーファンタジア改め、闇朱雀が置いてあった。
……なんでこんな所に?
「お風呂上がったらでいいんだけど。今日のパトロールはどうする? 私は行くけど」
「もうそんな時間なの?」
「うん」
ホントだ。外は薄暗くなっている……僕どうしちゃったんだろう?
「……行けるよ。体調は良いみたいだし」
今宵も二人で、パトロールデートと洒落込むぜ!
しかし、アマールとの甘いパトロール生活は、そう長くは続かなかった。
この数日後、二人の人物の逮捕により、今回の魔物事件は終結を迎えたのだった……
ベッカー・シャムロッテ
ハイネス・シャムロッテ
逮捕されたのは、この二人だ。捕まったのはアマールの両親であった。
二人は、生物研究の第一人者で、この町にある研究所の代表だった。
研究していたのは『人造の魔物』……人が、意のままに操る事の出来る魔物を生み出す研究をしていた。
軍事利用が目的だったみたい。
まぁ、そんなことは正直どうでも良いのだ。問題はアマール。
彼女は、両親がそんなことをしているとなんて、知らなかったらしい……
人知れず町を守っていた少女は一転、罪者の子供になってしまった。
アマールの両親逮捕から一ヶ月が経った。
噂とは、捻じ曲げられるのが世の常で、己の正義感で魔物と戦ったアマールは『両親が制御できず逃がした魔物の後処理をしていた』と、根も葉もない事を言われる始末だった……
僕は、とにかく元気づける為、時間がある時は彼女の家に足を運んだ。
彼女の家の扉には、心無い言葉が多数書き込まれていた……
ドア越しに声をかけても、応える様子はなかった。けど、僕は声をかけ続けた。落書きだって、来る日も来る日も消し続けた……石だって投げられたさ。
そして、今日はアマールがコピットを離れる日。
彼女は、親戚が住んでいると言う町に引っ越していくことになった。
「あのアマールさん……」
「何?」
彼女の金と赤の瞳には、生気が感じられず、少しげっそりもしている。
「手紙書きたいからさ、落ち着いたら連絡下さい」
「うん」
「……手紙より遊び行った方が良いかな?」
「うん」
う~ん、他になんて声をかけたら良いんだろう? 経験値なさすぎてわかんないぞ。
嫌な沈黙が続く……
「ほら、肝心なこと言わなきゃだぞ」
「え?」
フィールズが、ヒソヒソとアドバイスをくれた。
……肝心なこと?
「何を、ボッとしてるんだ? 告白のチャンスじゃないか」
ハハッなるほどな!
女の子が弱っている時はチャンスだって、ギルドメンバーにアドバイスした事あったっけ? あれは漫画からの知識で実体験じゃない……偉そうな奴だったな。カボス・ド・レントは……
「ア、アマールサン!」
声が上ずった……恥ずい。
心臓が爆発しそうだ……愛の告白なんて、生まれてこの方三十二年、した事なんてないぞ……罪の告白はした事あるけど。
「……」
「……」
なんて続ければいいんだよ! あーもう! 頭のなかがぐるぐるしてるヤバイヤバイ!
混乱状態に陥っていると、ポンとフィールズに背中を押された。
たったそれだけの事だったが、何故かスッと、冷静になれて、勇気も湧いてきた……父は偉大だ……年下だがな。
「コホン……アマールさん……初めは可哀想だからって気持ちが強かったけど……お話したり、魔物と戦ったりしてるうちに……その……君の事が好きになりました。正直、別の町にも行ってほしくない。なんだったらうちに来てもらっても良いと思ってます……」
アマールは一瞬目を丸くしたが、すぐにジト目へ戻った。
「……」
「…………ミカは、しょっちゅうニヤニヤしてるし、すぐに下着見ようとしてくるし、キモチワルイ……今だって、いきなり『好き』とか、何なの?」
終わった……
アマールは、迎えに来ていた親戚の人に手を引かれ、荷物を積んだ馬車に向かっていった。
「アマールさん! あの…………お元気で……」
視線が交差する。
「さん付けで呼んで来るのも、キモチワル」
ボソッとつぶやいたのだろうが、獣人族は耳が良いので、聞き逃さない。
……僕、嫌われてたのかな? でも『ミカ』と、読んでくれていたし……クソ! 女心なんて分かるかよ!!
去りゆく馬車を眺めていると、頭を撫でられた。
「よく頑張ったな」
フィールズのその言葉を聞いた途端、涙が溢れそうになった。
……こんな思いするのなら…………デイダラぼっちのが良かった……イヤ、駄目だ。駄目だ! 僕はこの世界で友達百人作って、勇者になるって決めたじゃないか……
まだその計画も始まったばかりだろ! こんな所で挫けるな……しかし……
「ミカ、こう言う時は泣いてもいいんだ」
今は、フィールズの腕の中で泣くしかできなかった……リア充は常にこんな感じなのかよ。
畜生……
《アマール視点》
どうして、私はいつもこうなのだろう……
ミカに好きだと言われ、嬉しいのに、あんな憎まれ口を叩くのか……自分を殺してしまいたい。これでは、完全にミカに嫌われてしまう。
確かに、ニヤついてる時とか私のスカートの中を覗こうとしてくる辺りは、ちょっと嫌だけど……
ミカはこの一ヶ月、後ろ指さされたり、石を投げられていた私に、今までと変わらず……むしろ、今までよりしつこく私に接してくれた……それは、とても嬉しかった……とっても。
だから、私もミカの事が好きだ。
こんな無愛想で、犯罪者の子供の私を『好きだ』と言ってくれた、ミカが好きだ。
でも、どうやってこの感情を表に出していいかわからない。
それは、私がまだ子供だからなのだろうか?
たまにミカは、年下とは思えない事を言ったりする。普段は、あんな子供じみているのに……
アマール・シャムロッテは、ミカルド・クリリアンテイルに相応しいのだろうか?
わからない……けど、今の私では相応しい自信がない。
『連絡欲しい』と言っていたが、するのはよそう。
きっと、今のやり取りで嫌われてしまった……もう少し大人になって、素直になれたら会いに行こう。そして、今度は私から好きだと伝えるんだ!
きっと、あの調子だと凄腕の剣士か、あわよくば勇者にだって本当になれる……
あぁ、ミカ……大人になったミカに早く会いたい……ミカ、ミカ、ミカッ!
私の中にミカがほしい……
「アマールちゃん? 大丈夫かい?」
「え! う、うん大丈夫です。おばさん」
今晩は、右手が恋人になってくれそうだ……




