脱引きこもり、学園入り4
アリアは扉を開けて教室に一歩足を踏み込んだ。
「アリアちゃーん!!お兄ちゃんですよ!!」
彼女が扉を開けたのと同時に、少年がアリアに飛びついてきた。
「誰が、お前の妹だ。」
アリアはその生徒の顔の回し蹴りをくらわせる。見事に頬を小さな足が捉える。
そのまま少年は廊下に吹き飛ばされ壁に激突、リュータの足元に倒れた。
白目をむいて倒れている少年をリュータは冷たい目線で見つめる。そして、瞬時に関わってはいけない人間だと悟ったリュータは彼をいないように扱うことにした。
リュータは倒れている少年をまたいで教室に入る。教室の中では、四十人ほどの生徒が大人しく席についていた。
「今日から、このクラスに新しく生徒が加わることになった。」
アリアは、リュータに自己紹介するように言う。リュータは教卓の前に立ち、生徒を見渡した。
「名前はリュータ=クロッツ。何かの手違いでこのクラスになりました。なので、俺は術式がないと魔法を使えません。魔力も一般人と変わりません。」
それを聞いた生徒たちはざわつき始める。魔力の量が一般的な人間がこのクラスに入ってきたことに理解ができなかった。
リュータはもちらん自分が“空想の術式師”であることは秘密にしておく。もし知られるようなことがあれば、色々と面倒臭くなることは確定事項。下手をすれば命に係わることに巻き込まれるかもしれない。
「趣味はネットゲーム。特技は…えーと、課金かな。よろしくお願いします。」
パラパラと拍手がなる。リュータはアリアに指示された席に座る。一番奥の窓側の席。勉強する気のないリュータにとっては最高の席であ
る。
隣の席は桃色の髪の少女で、リュータが気になるのかチラチラと見る。あまりコミュニケーション能力の高くないリュータも自分から声をかけることはしない。
しかし、挨拶だけはしておこうと思い、会釈をしながら小さな声で「よろしく。」と言った。すると、少女は何も言わずに会釈を返した。
一方、リュータの前の席は誰もいなかった。だが、机の上には黒い鞄が置いてあった。
リュータはこの席の主が誰か予想がついた。それと同時に少し心が沈んだ。